23-2 ネコ戦士、卵を預かる
「凍竜さんのじゃなかったら、誰の卵なのにゃ?」
と聞いてみると、
”恐らくだが、雷竜の卵ではないかと思う”
フリーザードラゴンはそう答えた。
えっ?!
「サンダードラゴンの…雷竜の卵にゃ?!」
そういえば、サンダードラゴンも狂ってたって言ってたっけ…
「じゃ雷竜は自分が狂い死ぬ前に、卵を遺してたってことにゃ?!」
”恐らくは…だ。雷竜がいたであろう西の地に、ひっそりと遺されていたのでな。竜の卵は孵るまでにかなりの時間がかかる”
「にゃるほどにゃ…」
私があごに右前脚を当てて考え込んでいると、
”そこでだ。そなたにその卵を預かってもらえぬかと思うてな”
フリーザードラゴンがとんでもないことを言ってきた。
「にゃっ?!同じ竜族の凍竜さんが見守ればいいにゃろ?!」
と慌てる私に、フリーザードラゴンは
”そうしたいのはやまやまだが、雷竜は寒さに弱いのだ。我がそばにいては孵る卵も孵らぬ”
そう言った。
そして
”卵を抱えて温めたりしなくとも良いのだ。この大陸の中では最も温暖と言えるこの村で卵を見守ってやってほしいのだ”
とフリーザードラゴンは続けた。
ええ…?
「雷竜って、雷を飛ばしまくるやつにゃろ?そんなのが村で生まれたら、みんなが困るにゃよ!」
サンダードラゴンとの戦いを思い出して私がそう言うと、
”そうならぬよう、そなたが雷竜を導いてやってほしいのだ”
フリーザードラゴンはそう答えた。
「…あんな竜、教育できるとは思えないにゃよ…」
私がため息をつくと、フリーザードラゴンは
”そなたが倒した雷竜は、水竜と同じく孤独に生きてきた。それゆえ言葉も通じぬただの乱暴者になったと言える。今の水竜はどうだ?今の水竜はそなたらと話すことによって、我に近い存在となってきたであろう?ならば雷竜も同様に育てられるのではないか?生まれた頃からそなたと共に過ごせば、良い子に育つかもしれぬぞ?”
つらつらとそう言ってきた。
そんなこと言われても、サンダードラゴンにはいいイメージはないし、もし言葉を教える前に放雷したりして、村のみんなが危ない目に遭ったりしたら…
「…もし生まれた雷竜のせいで村のみんなが迷惑したり危ない目に遭ったりしたら、私は雷竜を捨てるにゃよ」
私はフリーザードラゴンをにらみつけた。
フリーザードラゴンが目を見開いて
”…そなたがそのようなことを申すとは…驚いたな”
と言ったので、
「私はこの村のみんなが一番大切なのにゃ。凍竜さんもにゃよ。だけど雷竜はそうじゃないにゃ。前に、凍竜さんも言ったにゃろ?私にとって何が一番大切なのか考えろってにゃ。私の中での大切の順番は、もう決まってるのにゃ」
私がそう言うと、フリーザードラゴンは笑った。
”うむ…それで良い。それで良いので、いったん卵を預かってはくれぬか?”
「…わかったにゃ」
こうして私は、サンダードラゴンの卵を預かることになった。
そうなると、大陸の西の方にあるというサンダードラゴンの卵を、どうやってここまで運んでくるかが問題だ。
私がノアに乗ってって、抱っこひもに卵を入れて運んでくる?
もし運んでる最中に卵が孵って、その時に雷でも放出されたら、ノアが危ない。
私は、サンダードラゴンとの戦いの最中に、雷に打たれて倒れたギルド長とガイのことを思い出した。
だったら、ノアに小さな荷車を引いてもらって、それに卵を乗せて運ぶ?
…いやいや、それも危ない気がする。
”モモよ、何を考えている?”
フリーザードラゴンが尋ねてきたので、
「雷竜の卵をどうやって運んでくるかを考えてるのにゃ。ノアに乗ってって卵を持ち帰るのは、ノアが危ないからダメにゃ。そしたらもう、卵を運んでくる方法はないのにゃ」
と私は答えた。
”ふむ…我が運べればそれが一番良いのだが、我が運ぶのは難しいであろう。途中うっかり手を滑らせれば、卵は空高くから落下し、割れることになるであろう”
「凍竜さんが手に持って運んでる最中に卵が孵って、雷を放出されたりしたら、凍竜さんが危ないから、それもダメにゃ」
”ううむ…ならば如何いたす?”
フリーザードラゴンとふたりで悩んでいると、バーサさんがずっと話を聞いていたらしくて、
「雷竜…?サンダードラゴン?の卵をここに運んできたいのかい?」
と声をかけてきたので、ノアで運ぶ危険性と、フリーザードラゴンが手に持って運ぶ危険性について説明した。
するとバーサさんがぽんっと手を打って、
「抱っこひもみたいな、ひものついた袋を作って、それに入れて凍竜さんが運ぶってのはどうだい?すごく長いひもをつけてさ」
と言った。
「それなら凍竜さんも危なくない…かにゃ?」
バーサさんの案をフリーザードラゴンに伝えると、
”ふむ…それならば、もし空路で卵が孵ったとしても我に影響はないかもしれぬ”
フリーザードラゴンもうなずいたので、ケンさんに皮で袋を作ってもらうことになった。
「その卵ってのはどのぐらいの大きさなんだ?」
ケンさんに聞かれたので、フリーザードラゴンに尋ねると、
”モモの頭ほどの大きさだ”
と答えた。
「オオツラーオの腹の皮はまだ余ってるから、それで作ってみるか」
ケンさんはそう言って、早速持ち手の長い袋を作ってみてくれた。
そしてケンさんが
「こんなもんか?」
と袋を私の顔の横に並べて見せると、フリーザードラゴンは
”うむ、良かろう”
とうなずいて、袋を手に持って飛び立って行った。
そうしてしばらくして、袋を手に持ったフリーザードラゴンが戻ってきて、広場に降り立った。
フリーザードラゴンは卵の入った袋をそっと地面に降ろし、
”では、頼むぞ”
と言って、また雲の上に飛んで行ってしまった。
…丸投げじゃん…
暑くなってきたので、もうネコは私と一緒に寝てくれません。夜の間あちこち移動して、涼しい所で寝ては部屋に戻ってご飯を食べて水を飲んで…という感じです。淋しいけど、暑い時にネコにくっつかれると私も暑いので、仕方ないですね…




