22-7 ネコ戦士、前村長を思い出す
王都の西側を見学したついでに、気になってたことを色々聞けて、私は満足しまくっていた。
「帰りは別の道を通る」
ギルド長がそう言って、行きの道より南の道を東に向かい、城下街の中央通りに戻ることになった。
その道を通っていると、なんか小さな町工場みたいな建物が並んでたので、
「あのあたりは何を作ってるのにゃ?」
と私はギルド長に聞いてみた。
するとギルド長は
「あのあたりでは牛の皮を使って靴を作ったり、牛の脂を使ってランプ用の油や石鹸などを作っているのだ…見てみるか?」
と言った。
靴作りも見たいけど、牛の脂から色々作るのってどうやってるんだろう?
「油の工場見てみたいにゃ。カールさんも見たいにゃろ?」
カールさんにそう言うと、
「うん、俺も見てみたいな。ギルド長さん、お願いします」
カールさんも同意してくれたので、ギルド長は道に馬車を停めて、牛の脂を使っているという工場に入って行った。
「見学しても良いそうだ」
ギルド長が振り返ってそう言ったので、私たちは馬車を降りて工場に入った。
「これはっ…ネコ戦士様…とご夫君様、このような町工場にようこそおいでくださいました」
工場長っぽいヒトが頭を下げたので
「お仕事中お邪魔しますにゃ。ちょっと見学させてくださいにゃ!」
「よろしくお願いします」
私たちは頭を下げた。
見ると、フライパンみたいなやつの上で小さく刻んだ牛の脂を焼いていた。
「牛の脂は熱し過ぎるとせっかくの脂が抽出しきれませんので、弱火で少しずつ熱し、最後に網で濾してからカスを取り除くのです」
…家での焼き肉の前の牛脂がやたら残るのって、熱し過ぎだったんだ…
「抽出した牛脂は少しずつ冷やし固め、主にランプ用の燃料にしますが、花の汁を混ぜて牛の骨の灰と混ぜれば石鹸に、花の汁のみを多めに混ぜると、手や足に塗る油になります」
工場長の説明に、私は思い出した。
「去年雑貨屋さんで手に塗るやつ、お土産に買ったにゃ!あれ、ここで作ってたのにゃ?」
と言うと、工場長は驚いた顔をしてから
「ありがとうございます。使い心地などはいかがでしょうか?」
と笑って尋ねてきた。
「ツラーオやモールの解体をした後に石鹸で手を洗ってからあれをつけると、ほんの少しで良く伸びて、手荒れもなくなりました」
カールさんが驚いたような顔でそう言った。
「すごいにゃ…この工場は小さいけど、みんなの毎日の生活に役立つものばかり作ってるのにゃ!」
こんな小さな…ケンさんの工房を少し大きくしたようなとこで、こんなにいろんなものを作ってるなんて。
「ありがとにゃ!これからも頑張って下さいにゃ!」
と言ったら工場長が
「ありがとうございます。ですが…牛の脂には限りがあるのです。月一回ほど牧場から仕入れるのですが、もっとあれば…と」
困ったように言ったので、
「じゃあモールの脂はどうにゃろ?ベリー村では時々私がモールを倒すけど、モールの脂はそのままランプに使ったりしてるのにゃ。いっぱいあるから、時々脂身だけ食べたりもしてるんにゃけど」
私はそう言ってみた。
そしたらカールさんが
「モールの脂が採れたら、仕入れてもらえますか?」
と工場長に言った。
工場長は
「それは、願ってもない…!お願い致します!」
と喜んでくれた。
前村長が、王都に戻ろうとするギルド長に、ツラーオの焼き肉を詰めたツラーオのバッグを渡した時のことを思い出して、カールさんも村長らしくなったなぁ…と、私はちょっと笑いそうになった。
油の工場から出て、また馬車に乗ると、カールさんが
「モモちゃん、さっき笑ってただろ?思い出し笑いかい?」
と私に聞いてきた。
良く見てるなぁ…と思いつつ、
「カールさん、モールの脂の取り引きを持ちかけたにゃろ?あれ見て、前の村長さんのこと思い出したのにゃ」
私は笑って答えた。
「…じいさんの…?」
カールさんが首をかしげたので、
「私がツラーオを初めて倒した頃にゃ。王都に戻ろうとしてたギルド長さんに、ケンさんが作ったツラーオのバッグにジンさんが焼いたツラーオの串焼きを詰めたやつを、前の村長さんが渡したにゃろ?」
と言うと、カールさんは少し考えてから
「…ああ!そうだったなぁ…で?なんでそれで笑ったんだい?」
と不思議そうに言った。
「カールさんも、前の村長さんみたいになったにゃあって、村長さんらしくなったにゃあって思ったのにゃ」
と私が笑うと、びっくりした顔をしてから
「そうかあ…じいさんみたいになってきたなら…うれしい…かな?」
とカールさんも笑った。
すると、ツラーオセットを押し付けられた時のことを思い出したのか、ちょっと渋い顔でギルド長が
「うむ。前村長は商魂たくましい御仁であったな」
と言ったので、私たちは笑った。
馬車は西からの道を抜けて、城下街の中央通りに入った。
「カールさん、お土産にお菓子でも買おうって言ってたにゃろ?今買うにゃ?」
カールさんにそう言うと、
「そうだな。明日は早く発つし、今買うのが良さそうだなぁ」
カールさんはうなずいた。
ギルド長がパン屋さんの前で馬車を停めてくれたので、日持ちのしそうなクッキーを人数分買って外に出ると、
「モモさん!カールさん!」
と私たちを呼ぶ声がした。
パン屋さんの隣が八百屋さんで、その店頭からルネが元気に声をかけてきてくれた。
「ルネ、頑張ってるのにゃ?!」
「はい!頑張っていますよ!ティド村が復興したら、うちでも魚を扱おうと思ってるんです!」
えっ?!
「仕入関係の業者さんが魚を売ってくれるんですが、まだ少ないので早い者勝ちなのです。でも、ティド村が復興すれば、今より沢山魚が獲れるようになるでしょう?そうしたら、ティド村から直接魚を仕入れて売るつもりなのです」
「野菜も魚も売るのにゃ?!」
驚く私に、ルネは
「はい!家具の工場に頼んで氷室を作ってもらうので、それに入れれば魚も長持ちするでしょう?頑張りますよ!」
とにこにこと笑いかけた。
カールさんといい、ルネといい…
「みんな、たくましいにゃあ…」
つぶやくように言って、私は笑った。
ネコの目はあまり良く見えないらしいですが、窓の外にへばりついてるヤモリとかは良く見えるようで、ヤモリがいるとネコはベッドの上で立ちあがって必死に前脚を伸ばします。窓の外だから捕まえられないんですがwネコのそんなところもかわいいなぁと思って見ています。




