22-6 ネコ戦士、最大の疑問の答えを得る
焼き物工場をひと通り見て、私たちは次に向かった。
次は家具を作る工場だったけど、ベリー村では大工のエドさんが家具も作るので、こちらも目新しい感じはなかった。
それでもカールさんは
「へぇ、注文されたものを特別に作ることもあるんですね」
とかって感心しながら見てたので、カールさんが喜んでるならまあいいか…と、私もうろうろ見て回った。
すると大きな工場の西の隅っこあたりに、見たことがあるような作業場があった。
観光地だか社会科見学だかで見た記憶が…
「…紙作ってるのにゃ?!」
私が思わず大声を上げると、作業場のヒトたちがこっちを見た。
「え、ええ、そうです。木材のクズなどを集めて水にさらして繊維を集め、紙を作っているのです」
と言うので、私は走り寄って紙漉きの水槽を見た。
私の世界で見た手漉きの紙より細かい繊維が浮いていて、それを木の枠ですくっている。
「これらは、ええと…このぐらいの大きさに切り、穴をあけて糸で綴り、細長い紙の背表紙をつけ、帳面にするのです」
職人さんは両手を少し広げて、A4かB5ぐらいの大きさを示した。
目を輝かせて紙を見ている私に、
「ペンの軸もここで作っておりますよ。ペンの先は城下街の鍛冶師が、インクは城下街の東の下町の工場で、石をすりつぶして作っていると聞いております」
と職人さんが説明してくれた。
ケラーさんやカールさんが使ってる…私もたまに使うノートやペンやインクがどこで作られているのかを知って、私は感動した。
「全部、職人さんたちの手作りなのにゃあ…!!」
ほうっとため息をつく私を見て、少し緊張していたようだった職人さんは、ほほえんで
「はい、皆頑張っておりますよ」
と言った。
…インクは鉱物顔料だったんだ…そりゃ古文書、長持ちするよね…と私は舌を巻いた。
家具工場を出て北に行くと、前日に行った養鶏場と同じぐらいの養鶏場があって、やっぱり卵のカラの相談をされたので、東の牧場から牛の骨を分けてもらうことをおすすめした。
…けど、東の養鶏場もこの養鶏場も、王都の城下街からはかなり遠い。
「ここからだと城下街は遠いにゃろ?食べ物とかは毎日買いに行けるにゃ?」
ちょっと気になったことを尋ねてみると、
「毎日城下街に卵を売りに行くので、その時に買い物はしていますよ」
と養鶏場の主人は答えた。
あっ、それもそうか!とは思ったけど、
「それにしても遠いのにゃ。東の養鶏場も北の端だったし、ニワトリたちも寒いんじゃないかにゃ?」
と聞いてみたら、
「私たちの先祖は、ニワトリのフンの匂いが人々にとって不快であろうと、この地を選んだのです。ニワトリ小屋には風よけもつけておりますし、何より、他者を思いやってこの地を選んだ先祖のことを、私たちは誇りに思っています」
主人はそう言ってほほえんだ。
「…ご先祖様は、すごいヒトだったんだにゃあ…」
私はちょっと感動した。
ニワトリのフンは、確かに臭い。
でも、その匂いで他人を不快にさせたくないって思って、こんなへんぴな土地を選んだって…すごいいいヒトだ。
「私、卵大好きにゃ。この国のヒトたちもきっと卵大好きだから、お仕事頑張って、みんなに卵を届けてくださいにゃ!」
と私が言うと、主人はにっこり笑って
「ありがとうございます。今後も民に卵を届け続けられるよう頑張ります。ベリー村に連れて行ってもらったニワトリたちも頑張っているようですから」
と言った。
あのニワトリたち、ここから来たのかー!!
「ありがとにゃ!ニワトリたち、大事にしてるにゃ!!」
「ありがとうございます!!おかげでみんな卵を食べられるようになりました!」
私はカールさんと一緒に頭を下げて、主人にお礼を言った。
「ではそろそろ戻ろう」
ギルド長がそう言ったので、私たちは馬車に乗り込んだ。
オープンカーみたいな馬車じゃ少し寒いからって、カールさんに上着を着せといて正解だった。
「カールさん、寒くないにゃ?」
「大丈夫だよ。上着を着てきて良かったよ。ありがとう」
と私たちが話していると、
「うむ。夫婦仲睦まじく、良いことだ」
ギルド長が馬の上からそう言ってきた。
屋根のない馬車だから、ギルド長ともちゃんと話ができるので、私はずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
「この国では塩とか砂糖とか、どうやって入手してるにゃ?鉄とかの金属もどこから採ってるのにゃ?」
「塩や砂糖か。王都とバツ村を結ぶ街道を東に入った小さな入り江には塩田があり、塩はそこから得ている」
ふむふむ、塩は大体予想通りか。
「バツ村の南には山地があるが、その南のふもとには砂糖の原料となる地下茎を持つ植物があり、砂糖を作るための作業場もそこにある」
へーっ、砂糖はサトウキビじゃなくてイモっぽいやつなんだ。
「その山地には鉄や銅などの巨大な鉱脈があり、金属はそこから掘り出し、そこにも鋳鉄などを行う作業場がある。貨幣の鋳造は王宮で行われているぞ」
ベリー村じゃ鉄の入った石ころ集めて、ケンさんがそれで装備作ってくれたけど、鉱脈もあるんだ…
ってか、王族が彫金技術を身に着けるのって…王族がお金を作ってるってこと?!
「塩も砂糖も金属もすべて国が管理し、決まった額で王都の店などに卸しているのだ」
「そうなのにゃ…塩とか砂糖とか金属を作るとこにも、専門の職人さんがいるのにゃ?」
と聞くと、
「それらは全て我ら傭兵団の仕事だ」
とギルド長は答えた。
…は?!
「そっそんな色んなこと、傭兵団がやってるのにゃ?!」
びっくりなんてもんじゃない!!
「何を驚くことがある?」
ギルド長は不思議そうに問い返してきたけど…
「防壁作りとか、今はティド村の復興とか色々忙しいにゃろ?!」
マジでないわ。
傭兵団って、ブラックすぎない?!
「塩や砂糖、金属に関しては消費量なども鑑み、陛下より命ぜられた時のみ、我々は動くのだ。一年のうちのわずかな日数で作業を行うので、何ら問題はない」
こともなげにギルド長が言うので、
「…傭兵団って…ホントはすごいんだな…」
以前、傭兵なんて役立たずだってバーサさんが言ってたことを思い出したように、カールさんがつぶやいた。
「む?本当は、とは?」
ギルド長が細かいとこに突っ込んできたので、
「い、いえ!本当に、です!!」
カールさんは慌てて訂正した。
私もちょっと、傭兵たちをなめてた気がする。
「ギルド長さんたちはすごいのにゃあ…」
私は心から、ギルド長に賞賛の言葉を贈った。
毎朝、私がベッドから起き上がるとネコも一緒に起きてベッドから飛び降りますが、ネコはご飯を食べて水を飲むと、大体またベッドに戻って寝始めます。その後いつ階下に降りてくるかは、その日のネコの気分次第です。ネコって自由w




