22-5 ネコ戦士、王国の厳しい面を知る
村にいる時と同じ夜明け頃に目覚めると、カールさんも目を覚ましていて
「おはよう、モモちゃん」
「おはようにゃ」
と挨拶をしてからそれぞれ着替えて仕度をしたけど、ベリー村よりちょっと寒かったので、私はカールさんに上着を着てもらった。
「やっぱり王都はベリー村より寒いにゃあ」
「そうだね。だいぶ北だからね」
と話しながら食堂に行くと、ちょうど朝ご飯の準備が終わった所で、王様も席に着いていた。
「おはよう、モモ、カール。良く眠れたか?」
王様がにこやかに話しかけてきたので、
「おはようにゃ。良く眠れたけど、ちょっと寒いにゃ」
「おはようございます。王都は寒いですね」
と二人で挨拶を返した。
「うむ。今朝は少し冷えるな。今夜も寒いようなら、暖炉に火を入れさせよう」
と王様が言ってくれて、私たちは三人で朝ご飯を食べ始めた。
「そういえば、ルネはどうしてるにゃ?第一王子とお嫁さんも元気にゃ?」
と聞いてみると、
「ルネはもう店を開けるために城下におりているよ。レオたちはまだ寝ているようだが」
と王様は笑った。
おじいさんが亡くなって、八百屋を継ぐと言っていたルネ。
ホントに頑張ってるんだなぁ…と考えていると、
「本日は王都の西を見てくるが良いよ。焼き物の工場などはまだ見たことがないであろう」
と王様が言った。
焼き物の工場なんて、私の世界ではテレビでしか見たことがなかったので、
「楽しみにゃ!」
私がそう言うと、王様は満足げにうなずいて微笑んだ。
朝ご飯を食べた後王宮を出ると、もうギルド長が昨日の馬車を準備していて、
「ネコ戦士殿、カール殿、本日は王都西を案内いたす」
と言ったので
「おはようにゃ。今日もよろしくにゃ!」
「おはようございます。よろしくお願いします」
と二人で頭を下げた。
「…すっかり良い夫婦となったのだな…」
ギルド長がなぜか涙ぐんだ。
やっぱりお父さん気分みたいだ…
昨日はノアとエリンが馬車をひいてくれたけど、今日はノアとガイだ。
”今日も知らないとこに行けるんだね!”
ノアがうれしそうに言ったので、
「そうにゃ。一緒に色んなとこに行こうって約束したもんにゃあ」
ノアが以前言ってたことを思い出して私がそう言ったら、
”我々は遊びに行くのではないのだ”
渋い声でガイがノアに向かってそう言ってたしなめた。
”ええー?”
ノアが不満そうにぶーたれたので、私は笑った。
前日とは逆の、城下街から西に向かう道に入ると、そちらも東と同じく下町の住宅街みたいな感じだった。
そういえば東の下町も西の下町も、あんまりヒトがいない。
「下町には家はいっぱいあるのに、ヒトはあんまりいないのにゃあ。みんな、どこにいるのにゃ?」
ギルド長にそう尋ねると、
「王都の人間の半数近くは東西の工場などで働き、残りは城下街や下町の町工場などで働いている。子供らは学校に行っているし、ケガや病気などで働けなくなった者や高齢者、幼子を抱えた母親などは家にいるのだ」
とギルド長は答えてくれた。
ニートとか引きこもりとかいないのかな…と思いつつ、
「留守の家が多いなら、泥棒とかいるんじゃないのにゃ?」
とさらに聞いてみると、
「昼間は一定数の傭兵が街を警邏しているのだ。夜に何かあれば当直の傭兵がすぐに向かう。何より、この国の刑罰は重いので、犯罪者などいないも同然なのだ」
ギルド長はそう言った。
「刑罰が重いって…そんなに重いのにゃ?」
驚く私に、ギルド長は
「例えば…たいして価値のないものを盗んだ者でさえ、王宮の地下牢で長期間暮らさねばならない。税金の無駄使いになるため、食べ物もほとんど与えられぬ。この国において犯罪者は、虫けら同然の扱いを受けるのだ」
と淡々と答えた。
「…そりゃ誰も悪いことしないにゃよ…」
優しいこの国の裏側を見た気がして、私はちょっと怖くなったけど、刑の重さで犯罪者がいなくなるなら、それはそれでいいのかなーとも思った。
この世界…この国の税制とかも納得いくレベルだし、ティド村の復興とか防壁作りとか、大切な所には民から集められた税金がきちんと使われている。
王宮は広いけど大昔のままって感じだし、王様たちもぜいたくな暮らしをしてるわけじゃなく、私たちと同じような物を食べてる。
働けるヒトはみんな元気に働いて税金を納めて、日々をそれなりのレベルで送ってるんだから…
「やっぱりこの国はいい国にゃあ」
私がつぶやくように言うと、
「うむ。陛下が民のことを常に気にかけて下さっているおかげである。民がつつがなく日々を送れるよう、貧困にあえぐことなどなきよう、陛下は見守って下さっているのだ」
ギルド長は、誇らしげにそう言った。
「さあ、焼き物の工場に着いたぞ」
ギルド長はそう言って、結構大きめの建物の前に馬車を停めた。
「いらっしゃいませ、ネコ戦士様、ご夫君様」
工場長らしいヒトが挨拶してくれたので、
「お邪魔しますにゃ!」
「よろしくお願いします」
私たちも挨拶を返して、工場長に導かれるまま建物に入った。
工場内のあちこちには作業台があって、みんな木の型みたいなのに粘土を押し込んでいた。
「なるほど、これで同じものがたくさん作れるのか」
カールさんが感心したように言ったら、工場長が
「型で作った器は、この液に漬けてから、窯で焼きます」
と説明して、桶に入った白い液体に器を漬けて見せてくれた。
窯は、薪を入れて焼くタイプで、テレビで見たことがあるようなやつだったけど、私は
「すごいにゃ~」
と言っといた。
想像通り過ぎてちょっと残念…とは、思っても言えなかった。
このところ気温高めの日もあるので、夜寝る時、ネコはベッドに上がって来ずに床で寝てることも増えました。でも朝目覚めると、大体私の股の間にくっついて寝てます。夜半から明け方が一番寒いので、ネコ的には床で寝てると寒くなるんでしょうね~。




