21-1 ネコ戦士、漁師の育成を考える
それからも私は二日に一回は東の海岸に行って、アクアドラゴンに見守られながら魚を獲った。
私ひとりで魚の入った網を持って防壁を越えられるように、エドさんが網を入れるトロ箱みたいな箱を作ってくれた。
魚の入った網はその箱に入れ、私はそれを頭の上に乗せて防壁を越えて、ノアが引いてくれる小さな荷車に箱ごと載せて村まで持って帰るようになった。
獲った魚の一部は村のみんなで食べて、その他は業者さんに買ってもらう…という日々の中、私には新しい、大きな発見があった。
それは、アクアドラゴンの言語能力の成長だ。
初めて言葉を交わした時にはカタコトのようだったアクアドラゴンの語彙は、私と話すうちに少しずつ増えて、かなり普通に話せるようになってきた。
「水竜さん、どんどんお話がうまくなるにゃあ」
と言うと、
”我は、ずっと独りだった。だから、誰かと話すこと、なかった”
アクアドラゴンはそう言った。
モンスターの神様は、四頭のドラゴンを同じように祝福したけど、神様と対等になれるように頑張ったフリーザードラゴンだけが、突出した存在になった。
他の三頭…ファイアドラゴンとサンダードラゴンとアクアドラゴンは、フリーザードラゴン同様それぞれの飛ばされた地で孤独に生きてきて…フリーザードラゴンみたいな努力をしなかった結果、言語能力が発達しなかった…ってことだろう。
現にアクアドラゴンは、私と話すたびにどんどん語彙が増えて、表情も豊かになってきた。
大昔にアクアドラゴンがこの東の海岸に上陸したのは、海から見たティド村のヒトやネコたちをうらやましいと思ったからかもしれない。
仲良くしたかったのに、その相手を死なせてしまったアクアドラゴンの気持ちを考えると、私は悲しい…やるせない気持ちになった。
これからは私が…私たちがアクアドラゴンと仲良く暮らしていこう。
アクアドラゴンが孤独にならないように。
アクアドラゴンが、二度と同じ過ちをおかさないように。
私は、固く心に誓った。
季節は初秋から本格的な秋になり、クロとネネの仔ネコたちは立派に育ってきたけど、私の世界のネコたちとは違い、育って来ても親子や兄弟でケンカをするようなことはなかった。
もしかしたら、クロが四人のネコ戦士たちの子孫だから、普通のネコとは違うのかもしれない。
それでも…いくら仲が良くても、兄弟姉妹でつがいになるのは良くないかも…
そう思った私は、仔ネコたちをロナ村のネコたちとお見合いさせることを考え付いた。
ネネをお嫁さんにもらったように、ロナ村で相手を見つけられたら…と思ったけど、いっぺんに仔ネコたちを連れていくのは難しい。
何回かに分けて行かないと…と思ったら、時間が足りない。
二日に一回の漁は続けたいし…と悩んだ末に、私は思いついた。
漁師を育てよう。
ベリー村の若い男性となると、カールさんとライさんとジェイドさんだけど、三人がその気になってくれるかどうか、そしてそんな時間があるかどうか。
私は、カールさんたちに聞いてみることにした。
「今は私が魚を捕まえてきてるけど、私、仔ネコたちのお見合いもさせたいのにゃ。誰か私の代わりに漁をしてくれないかにゃ?」
と言ってみると、カールさんたちは考え込んだ。
そりゃそうか。
カールさんは村長だし、ライさんとジェイドさんは今、ケンさんちの改築で忙しい。
うーん…と考え込んでいると、
「傭兵の誰かに頼んじゃどうだい?ベリー村で雇うって形で日当を出すとか、王様から日当を出してもらうとか。傭兵なら馬に乗ってくるから、荷運びもしてもらえるだろ?」
とカールさんが言った。
そうだ。
カールさんたちに漁に行ってもらうなら、ノアに乗って行ってもらわなきゃいけない。
そしたら私はこの村から動けなくなるから、仔ネコたちのお見合いのためにロナ村に行くことができなくなる。
「名案にゃ!国民みんなの元気と長生きのためにゃから、王様にお金出してもらって、傭兵に来てもらうのが一番良さそうにゃ!」
私が同意すると、カールさんはすぐに紙とペンとインクを持って来て私に手渡しながら
「はい、モモちゃん。モモちゃんが手紙を書けば、王様はすぐに何とかしてくれるだろ?」
と言って笑った。
私も笑って筆記用具を受け取って、
「そうするにゃ!お父さんみたいな王様へ…にゃ!」
と手紙を書き始めた。
「…カールのやつ、王様の使い方覚えやがったな…」
ジンさんがつぶやくように言ったので、私は吹き出した。
私は傭兵の派遣要請と共に、アクアドラゴンがティド村を滅ぼしてしまったことの真実と、アクアドラゴンは本当は優しく賢く、いつも私の漁を手伝ってくれるということも、手紙に書いて送った。
するとすぐに王様から返事が来て、傭兵を派遣してくれること、ケラーさんや傭兵たちに、アクアドラゴンのことを伝えたことなどが書かれていた。
これで傭兵たちも安心して来られるだろう…とほっとした二日後、四人の傭兵がやってきた。
みんな若くて元気そうなので、イカダの操縦の仕方もすぐに覚えてくれるだろう。
というわけで、四人にはベリー村を拠点にしてもらい、村長宅で寝起きしてもらうことになった。
「じゃ早速漁に行ってみるにゃ?」
私はノアに乗せてもらい、傭兵たちもそれぞれ馬に乗って、東の海岸に向かった。
防壁を越えて浜に降りると、アクアドラゴンがすぐ近くの海面に浮いていたので、傭兵たちは一瞬びくっとしたけど、
「水竜さん、このヒト族にも魚を捕まえさせたいのにゃ!手伝ってあげてくれるにゃ?」
と私がアクアドラゴンに話しかけるのを見て、安心したような顔になった。
”いつも通り、流されないようにすればいい?”
アクアドラゴンがそう言ってくれたので、
「そうにゃ。このヒト族は初めてイカダに乗るから、流されないようにしてあげてほしいのにゃ」
と返すと
”わかった”
とアクアドラゴンはうなずいた。
さあ、漁師の育成開始だ!!
第21章開始です~。夜電灯を消した後、ネコがトイレに入ることが多いんですが、音だけで大か小かがわかります。大だとめちゃめちゃ砂をかいた後、トイレの底まで前脚でかいてから、ネコは用を足します。そこまでやらなくても…と思いますが、ネコ的にはそうしないと気が済まないんでしょうね…




