20-7 ネコ戦士、イカダに乗る
翌朝結構早く、またギルド長がやって来た。
「ネコ戦士殿、網を持って参った!」
相変わらず挨拶なしの用件ストレートなギルド長に、私は思わず笑ってしまった。
「いかがいたした?」
ギルド長がすました顔で言うので、
「ギルド長さんがベリー村に来るのが懐かしくてうれしいのにゃ」
と私は言った。
するとギルド長もなんか懐かしそうに
「うむ…北の防壁作りに行っていたので、しばらくほとんどベリー村には来られなかったな…」
としみじみと言った。
そして馬に着けた大きなカバンから投網を取り出して、
「ネコ戦士殿の希望通りだと職人は申していたが、一応確かめてみてくれ」
とギルド長は言った。
投網を受け取ってみると、見た目よりやや重かった。
錘が金属だから、こんなもんかな~と思いつつ、私は広場に行って網を地面に広げてみた。
私の希望通り、持ち手から網の端…錘のついてるとこまでの長さは大体10メートルぐらい。
網本体の大きさは、縦5メートルぐらいで直径10メートルぐらい。
「ちょっと投げてみるから、こっちに来ないでにゃ~」
とみんなに言ってから、私は広場で投網を投げてみることにした。
畳んだ投網本体を両前脚で抱えて、持ち手を右前脚で持って投げると、結構うまく網は広がって落ちた…けど。
「柱にくくりつけるなら、これじゃひもが短いにゃ…」
私の設計ミスだけど、素人の設計だし仕方ないか…と、私はちょっとがっかりした。
そしたらケンさんが
「じゃあモールの皮を三つ編みにしたやつを持ち手に足すか」
と言ってくれた。
「いい考えにゃ!ケンさんお願いにゃ!」
畑は違っても、さすが職人さん、対応が早い。
ケンさんは倉庫からモールの皮を持って来てナイフで細く切って、器用に三つ編みにした。
「こんなもんでどうだい?」
とケンさんは長さ3メートルぐらいの皮の紐を私に差し出した。
「これなら網を柱にくくりつけられそうにゃ!ありがとにゃ!」
お礼を言うと、ケンさんは網の持ち手に皮の紐を結びつけて、
「これならほどけたりしねぇから安心しな。あと、柱に結び付けてもほどけねぇ結び方を教えといてやるから、覚えな」
と言って、どんな結び方で紐を柱にくくりつければいいかを教えてくれた。
「ありがとにゃ!あとはこれを持ってって柱にくくりつけて、海に出てみないとにゃ」
私がそう言うと、
「古文書の記録によれば、ティド村の舟には水をかく棒のようなものがついていたはずだが…」
とギルド長が言った。
…オールのこと忘れてた…
「ギルド長さん、よく思い出してくれたにゃ!!そうにゃ!イカダを操る棒がいるのにゃ!!」
私が慌ててそう言うと、
「どんな棒だい?木で作るもんなら、まかせろよ」
とエドさんが言った。
頼もしい…!!
「持ち手は細くて、先の方が幅広く薄くなってる棒にゃ」
私は右前脚の人差し指の爪で、地面に絵を描いた。
「なるほど、この広くて薄いとこで水をかくんだな」
エドさんはうんうんとうなずいた後、
「イカダがあの大きさだったから…こんなもんか」
と、材木置き場から適当な材木を持ち上げて言った。
そして
「で?何本作りゃいいんだ?」
とエドさんが聞いてきたので、私はちょっと考えてみた。
船と言えば公園とかのボートだけど、ボートは幅が狭くて両側に一本ずつオールがついていた。
あのイカダのサイズだと、真ん中に乗って両側のオールを操作するには、二人はヒトが必要だろう。
ひとりであのイカダを操るなら、取り付けてもらったへさき部分に一本あれば、いけるのでは?と考えた私は
「とりあえず一本お願いにゃ!多分それでいけるはずにゃ!」
とエドさんに頼んだ。
エドさんはすぐにオールを作ってくれたので、それを持って、私はまたエドさんと一緒にノアに乗って東の海岸に向かった。
浜辺の木に縛り付けておいたイカダのへさきに、ケンさんが余分に作ってくれたモールの皮ひもを使って、エドさんが上手にオールを固定してくれた。
これでいける…はずだ。
イマイチ自信はなかったけど、もう投網も持って来てたので、それを柱にくくりつけて、私はイカダを海に出すことにした。
「エドさん、見ててにゃ!!」
と言って、私は木からイカダを外して、海に向かって押し出すと同時に飛び乗った。
イカダはうまく浮いたけど、オールをどう動かせばいいのかわからない。
テレビで見たタライ舟みたいにオールを動かせばいいと思ってたんだけど、オールを動かしても思ったようにイカダが動かなくて、私は焦った。
このまま外海に出ちゃったらどうしよう…!!
投網を投げるどころじゃなくなって、必死にオールを動かしていると、イカダはその場で回り始めた。
「にゃーっ!!回るにゃ!!戻れないにゃーっ!!」
パニックになった私に、
”ネコ 何してる”
と声が聞こえてきた。
「押してにゃーっ!!浜辺に戻してにゃーっ!!」
まだパニック状態の私に、
”我 押す”
と声は応じてくれて、イカダはふわっと押されて浜辺に上陸した。
た…助かった…
部屋の窓を開けていると、ベッドの上に横になったまま頭だけを上げて、ネコはしばらくぼーっと外を見ていることがあります。まあ鳥が飛んでたら口を細かく開閉させて「カカッカカッ」って、クラッキングとかいうのをやり始めるんですが。




