20-3 ネコ戦士、投網を作るため王都に行く
私は、この国の民みんなの健康のことまでは考えてなかった。
バーサさんたちベリー村のみんなが元気で長生きしてくれれば…って程度にしか考えてなかったのに。
自分の周囲のヒトたちのことしか考えてなかったのに、なんか話が大きくなってきてしまった…
でも…まあいいか。
リーナさんちの子供たちみたいな小さな子供達が今から魚を食べたら、その子たちが年を取る頃には寿命がすごく延びてるかもしれないって思ったら、ちょっとわくわくする。
「カールさん、王様にお手紙書いてにゃ!国のみんなの健康と長寿のために魚を捕まえる網を作りたいにゃって、書いて送ってにゃ」
そう言うと、カールさんはうなずいて
「わかった。じゃあ早速手紙を書いて送ろう」
と言ってくれた。
カールさんが手紙を書くのを横で見ていると、カールさんは緊張した様子で
「えーと…偉大なる第15代ルーン王国国王陛下にお願い申し上げます…かな」
と言ったので
「にゃっ?!そんな書き方するのにゃ?!」
私はびっくりして声を上げてしまった。
するとカールさんが、
「じいさんはこう書いてたと思うんだけど…婚礼の儀の招待状もこんな風に書いたし…」
と言ったので、
「私に書かせてにゃ!」
と、私はカールさんにお願いしてみた。
「じゃあ、書いてみるかい?」
カールさんが笑ってペンを差し出してくれたので、
「ありがとにゃ!」
と私はペンを受け取った。
この世界の言葉は私の耳に入ると頭の中で同時通訳される感じだったけど、文字はそうはいかなかった。
それでもケラーさんが見せてくれた古文書とかは読めたし、文字もそれなりに覚えたので、まあ何とかなるだろうと思って、私は手紙を書き始めた。
「お父さんみたいな王様へ…かにゃ?」
私が書きながら口に出すと、カールさんが隣で目を見開いたようだった。
「国のみんなが元気で長生きできるようにするために、魚をたくさん捕まえたいのにゃ。魚を捕まえるための大きな網を作りたいんにゃけど、力を貸してくれないかにゃ?」
文末にモモ、と書いて、私は左前脚の肉球にインクを塗って足跡を紙に着けた。
「これで私からだってわかってくれるにゃ!」
自信を持ってそう言いつつも、ネコの前脚で書いた文字は、小さな子供の書いた字みたいだった。
カールさんは笑いをこらえつつ、
「うん、モモちゃんからだってひと目でわかるから、王様はきっとお力を貸して下さるよ」
と言った。
カールさんが伝書鳩に手紙を着けて送ってくれるとすぐに…二時間ぐらいで返事を持って伝書鳩は戻ってきた。
王様からの返事の手紙を開いたカールさんが、笑って
「我が娘モモへ。民の健康と長寿のためとあらば、喜んで協力しよう。王都に参り、紡績工場で相談するが良い。私から先に話を通しておいても良いし、私が共に赴いても良いぞ…だってさ」
と内容を読み上げてくれた。
「やったにゃ!じゃあ早速行ってくるにゃ!」
と言うと、
「うん、行っておいで。クロたちのことは俺がちゃんと世話しとくよ」
カールさんが優しく笑ってくれたので、私は
「カールさんは妻に理解あるいいダンナさんにゃ~」
と言った。
カールさんは、
「そう思ってもらえたらうれしいよ」
と、ちょっと照れたように笑った。
そして私は投網の図を描いた紙を畳んでポーチに入れて、ノアに乗せてもらって王都に向かった。
城下街に入ると、なんだか人だかりがしていたので、何かと思ったら、
「おお、モモよ。参ったか。私も共に紡績工場に行くぞ」
王様が出迎えてくれていた。
王様は私のことを”モモ殿”って呼んでたけど、”殿”が取れてフレンドリーになって、私は嬉しくなった。
「ありがとにゃ!紡績工場はどこにあるのにゃ?」
と尋ねると、
「王都の東の端の方なので、馬車で参ろう」
って言ってくれたんだけど、
”ボクも行く!!”
とノアが言うので、私はノアに乗ったまま、馬車をひくエリンと並んでゆっくり行くことにした。
紡績工場に着くと、工場長らしい人がうやうやしくお辞儀をして
「民の健康と長寿のため、体に良いという魚を捕まえる網をお作りになりたいとの旨、うかがっております。どのようなものをお望みでしょうか?」
と言った。
私はポーチから投網を描いた紙を取り出して、
「こういうやつにゃ。これに鉄の錘をつけて投げて魚が入ったら、この紐を引っ張るにゃ。そしたら網がすぼまって口が締まるのにゃ」
と、大体の仕様を説明した。
私も投網の仕様はテレビで見た時のイメージで何となく程度しかわかってないけど、布とかを作るプロの職人さんとかが見れば、ちゃんとしたものを作ってくれるんじゃないかな…と思ってたら、工場長が絵を見て少し考えてから、
「網を編む糸は細くても丈夫で、そしてあまり目が粗くならぬように編む方が良いのでしょうか?」
と聞いてきたので、
「そうにゃ。小さい魚にも体にいい栄養があるから、小さい魚も獲りたいのにゃ」
と私は答えた。
「わかりました。それでは布に使う糸を撚り合わせて、細くとも丈夫な糸を作り、それで網を編みましょう」
工場長はそう言ってから、工場内のヒトたちに指示を出した。
場内を見回すと、糸を作る大きな機械と、布を織る大きな機械、それにミシンっぽいのがあったけど、全部足踏み式だった。
電気がなくてもこうやって服が作れるんだ…と私は感心した。
下水道のことでも驚いたけど、この世界は思った以上に色々発展してる。
何百年もかけて、この国はしっかり発展してきたんだろう。
「王様、この国はみんなすごーく頑張り続けてきたのにゃあ。だからこんなに豊かになったのにゃ」
と言って王様を見上げると、
「うむ。民たちが頑張ってきたおかげで、この国はここまで発展したのだよ」
王様は、満足そうにうなずいてほほえんだ。
昼間ちょっとぐらい暑いなと思っても、夜はまだ20度ないぐらいなので、寝る時には私の足元の方にいたネコも、目覚めると私の股の間にくっついて寝ています。ネコにとってはまだまだ寒い日が続くようですが、ネコがくっついてくれると私は嬉しいので、当分寒くてもいいです。←




