16-3 ネコ戦士、モンスター研究家と語る
フリーザードラゴンの言葉で悩んでたけど、それもすっかり解決して、ふと私は思い出した。
モンスターの神様から聞いた、この世界の成り立ちのこと。
森林地帯が復活したこと。
モモイロヒヒたちが群れで暮らしていくと約束してくれたこと。
これはモンスター研究家であるケラーさんに全部知らせるべきじゃない?
そう思った私は、慌てて村長に頼んで伝書鳩を飛ばしてもらった。
二時間ほどで伝書鳩は、翌日ケラーさんが村に来るという返事を持って戻ったので、私はケラーさんの来報を待つことにした。
前に森林地帯の探索に行った時、ギルド長がガイに、ケラーさんがエリンに乗ってきたので、ケラーさんがまたエリンに乗ってきたら、ノアがお母さんに会えて喜ぶだろうなと思ったけど、ぬか喜びだとかわいそうだし、エリンがいきなり来れば、ノアにはうれしいサプライズになるし…と思って、私はノアには何も言わなかった。
翌日の昼前にケラーさんが来たけど、馬はエリンじゃなく、初対面の馬だったので、私はちょっとがっかりした。
すると
”お初にお目にかかる。私はゼンと申す”
と、ケラーさんが乗ってきた栗毛の馬が、ちょっと渋い声で私に挨拶をしてくれた。
「ゼンさんっていうにゃ?初めましてにゃ」
私がゼンに挨拶を返すと、ケラーさんが
「ネコ戦士殿は、誠に馬とも話せるのだな…」
と、ちょっとびっくりしてた。
「とりあえず色々詳しく報告するにゃ。私の家に来てにゃ」
私がケラーさんを家に招くと、
「…男を家に入れるなんて…いや、年寄りだからいいか…」
とカールさんがぶつぶつつぶやいたので、私は吹き出しそうになった。
やっぱりカールさんは、ちょっと焼き餅焼きだ。
ケラーさんと一緒にベッドの端に座ると、ケラーさんはツラーオの皮のバッグから、画板みたいなのと真新しいノートとペンとインク瓶を取り出した。
どうやら私の話をメモするつもりみたいだ。
「…さて、では、詳細を聞こう」
ケラーさんがそう言って、画板を置いてその上でノートを開くと、ベッドの上にいた仔ネコたちがノートのページにじゃれつき始めた。
うちのモモはよく新聞紙にじゃれてたけど、ネコって紙で遊ぶの好きなんだなーと思っていると、
「ニャ」
と言ってネネが仔ネコたちを見た。
そしたら仔ネコたちはノートにじゃれつくのをやめて
「ミー…」
と言ってネネの方に戻って行った。
「ほう…母ネコも仔ネコも賢いのだな」
ケラーさんは微笑んでネネたちを見つめてから、
「では、改めて聞かせてもらおう」
と私に言った。
私はモンスターの神様から聞いた、この世界の成り立ちから少しずつ話していった。
ケラーさんはいちいちうなずいて、時々相槌を打ちながら、少しずつノートにメモしていった。
私が話す声と、ケラーさんがノートにペンを走らせる音だけが、小さな私の家の中に響き続けた。
「…うむ…うむ…古文書には記されていないことばかりであるな…いや、当然か。世界の歴史をその目で見てきたモンスターの神のみぞ知る史実なのだからな…」
ケラーさんは、うなずいたりうなったりした後、ほーっと息を吐きながらそう言った。
「それにしても、かのフリーザードラゴンが元々はモンスターの神の体にしがみついていたムシのようなものだったとは…」
とケラーさんが言うので、
「それで思い出し笑いしそうになったら、フリーザードラゴンににらまれたにゃ。次に会っても笑っちゃダメにゃよ」
私がそう言うと、ケラーさんは笑いそうになりながら
「う、うむ…」
と顔を引き締めた。
「そして…果樹も下生えも枯れ果てていた森林が復活し、あのモモイロヒヒたちが群れで暮らすようになったとは…あの時地図に書き込んだ縄張りの印も消さねばならぬな…」
ケラーさんは心底安心したといった顔で言った。
「火山を壊してくれたモンスターの神様のおかげにゃ。きっと神様も安心してるにゃ」
私がそう返すと、ケラーさんは微笑んでうなずいた。
でも
「…これはまた…陛下がベリー村にお越しになりたいとお思いになりそうであるな…」
ケラーさんは、今度は眉を下げてため息をついた。
「神様にお礼言いたいってことにゃ?」
「うむ…」
私たちは顔を見合わせてから、大きくため息をついた。
ケラーさんが私の話をメモして王都に戻った後、二人して心配してた通り、王様がモンスターの神様にお礼を言いたいと言い出した…という手紙が、伝書鳩によって村に届けられた。
「…やっぱりそう言い出したのにゃ…」
と私がため息をつくと、村長が
「なぜじゃ?陛下にとってもモンスターの神は火山から国を守ってくれた恩人じゃろ?一度はお礼を仰りたいとお思いになってもおかしくはなかろう?」
と言った。
「気持ちはわかるけどにゃ…一国の王が軽々しく動き回るもんじゃないと思うにゃよ」
そう言うと、
「じゃが、そろそろ陛下も王位を譲り、退かれる頃であろう。隠居なさってからならばよかろう?」
村長は、聞き捨てならないことを言った。
は…?王様が譲位する…?
…王様は言ってた。
王族がネコ戦士を召喚できるのは、一代に一回きりだって。
ネコ戦士を召喚できるのって、王様が王様である間だけじゃないの?
だったら…今の王様が王様じゃなくなったら、今の王様は送還の魔法が使えなくなるんじゃないの…?
もしもこの先…例えば、カールさんが誰かと結婚したりして、私が元の世界に帰りたいって思うようになっても、私、戻れなくなるんじゃないの…?!
「…村長さん、伝書鳩飛ばしてにゃ!!」
「む?陛下にお返事申し上げるのかの?」
首をかしげる村長に、私は言った。
「これから私が王様のとこに行くって、そう書いて送ってにゃ!!」
ちょっとだけ暑くなってきたので、今日のネコはベッドの上で寝ています。今日の最高気温は24度ぐらいなので、ネコにとっては適温です。…もうそろそろコタツ片付けていいかな…




