16-4 ネコ戦士、国王に説明を求める
「陛下の所に行くとは?」
村長が驚いた顔をして言った。
「王様と話したいことがあるのにゃ。今すぐに話したいのにゃ!!」
と私が真剣な顔で言うと、村長は
「…よくはわからぬが、モモにとって大切な話なのじゃな…?」
と聞いてきた。
「そうにゃ。だから手紙書いて送ってにゃ。お願いにゃ!」
私の言葉に村長はうなずいて、
「うむ…では伝書鳩を飛ばしておこう」
と言って、村長の家に戻って行った。
私がノアの方を向いて
「ノア、私を王都まで連れてってくれないかにゃ?お父さんとお母さんとは会えないかもしれないけどにゃ…」
と言うと、ノアは
”いいよ。モモがそうしてほしいなら、連れてってあげる”
とうなずいた。
ノアはまだ仔馬と言える年頃だけど、もう体は村に来た頃よりずっと大きくなっていて、ガイやエリンに近いぐらいだ。
今のノアなら、王都まで三時間はかからないだろう。
「疲れたら、ちゃんと言ってにゃ。間で休憩取るからにゃ」
”うん、わかった”
ノアは村に来た頃より体も大きくなったけど、心も大人になったなぁ…
「じゃあ、頼むにゃよ!」
私は村長が伝書鳩を飛ばしてくれるのも待たず、ノアに飛び乗った。
「モモちゃん?!どうしたんだい?!」
私がノアに飛び乗ったら、カールさんが慌てて走ってきた。
「王様に急用ができたのにゃ!ノアも乗せてくれるって言うから、行ってくるにゃ!」
用件の内容は言うわけにはいかない。
この先もしかしたら、私以外に好きな人ができるのかもしれないけど、カールさんは私に、ただずっと一緒に暮らそうって言ってくれたから。
だから、送還の魔法についての用事だってことは、言えない。
でもカールさんは
「…わかった。大切な用事なんだな?」
と言ってくれた。
心が痛んだけど、私はうなずいて
「じゃあちょっと行ってくるにゃ!すぐ帰るにゃ!!」
と、カールさんに言った。
「気をつけて行けよ!」
「ノア、モモちゃんを頼んだよ!」
みんなもそう言って見送ってくれて、私はノアに乗って王都に向けて旅立った。
王都への道を一時間ほど進んで
「ノア、疲れてないにゃ?」
とノアに向かって尋ねると、ノアは
”今のところは大丈夫。走るの、すごく気持ちいい”
と言ってくれた。
「私はノアやガイさんたちみたいに速く走れないけど、速く走れたら気持ちいいのにゃ?」
私の言葉にノアはうなずきながら
”うん。自分が風になったみたいに、体が軽くて気持ちいいよ”
と言ってくれた。
やっぱりこの世界の馬は、すごいんだ。
モンスターの神様が、馬を”走族”と名付けたのは、伊達じゃないな…
そんなことを考えながら、ノアのたてがみにしがみついていると、結構あっという間にノアは私を王都まで運んでくれた。
二時間丁度ぐらいで王都に着いたので、私は驚いた。
「ノア、すごいにゃ!ガイさんやエリンさんぐらい速かったにゃ!」
私が感嘆の声を上げると、ノアは
”モモは軽いから、ひとりで走ってるのと変わらないよ”
と、息も切らさずそう言った。
でもやっぱり休んでもらわないと…と、私は城下街を通って丘を登り、ギルドに向かった。
「これは…ネコ戦士殿!」
観測隊のダナンさんが走ってきた。
「王様に急用ができて来たのにゃ。この子…ノアを休ませてあげたいのにゃ」
私がそう言うと、ダナンさんはギルドの厩舎に案内してくれた。
北の防壁づくりのために傭兵のほとんどが出払ってるから、厩舎にいる馬は少なかった。
厩舎にいたのは、この間ケラーさんを乗せてきたゼンと…
”お母さん!!”
ノアが声を上げた。
そこには、ノアのお母さんであるエリンがいた。
エリンの横が空いてたので、ノアをそこに入れてから
「エリンさん、ノアは私をここまで乗せてきてくれたにゃ。ノアは立派に育ってるにゃよ」
エリンにそう話しかけると、
”良かった…まだまだ子供だと思ってたけど、ちゃんとお仕事ができるようになったのね…”
エリンは、私とノアにそう言った。
”うん、ボク、頑張ってるよ。ヒトの子供たちも、モモも頑張ってるんだから”
ノアがそう言うと、エリンは目を見開いてから、微笑んだようだった。
”ノア…大人になったのね…”
エリンがノアの頭に自分の頭をこすりつけると、ノアは目を伏せて、自分もエリンに頭をこすりつけた。
母子の再会を見届けて、私はダナンさんに連れられて王宮に向かった。
「ネコ戦士殿が陛下への謁見を望んでおられます」
ダナンさんが王宮入口の衛兵に伝えると、衛兵はすぐに王様のおつきのヒトに取り次いでくれて、私は王宮に招き入れられた。
「おお…モモ殿、よく来てくれた。ベリー村の村長より、先ほど書状が送られてきたのだが…私に急用とは?」
王様は王座から降りて私の方に歩いてきながら、そう言った。
「王様に、大事な大事な話があるのにゃ…」
私が真剣な顔で言うと、王様はおつきのヒトに目配せして、おつきのヒトはどこかに行った。
人払いをしてくれた…ってことだろう。
「さて、モモ殿。大事な大事な話とは?」
王様がそう聞いてくれたので、私は話を切り出した。
「王様が引退するんじゃないかって、村長さんが言ったのにゃ」
そう言うと、王様は、ん?という顔をした。
「王様のネコ戦士召喚と送還の魔法は、一代一回だけなんにゃろ?私を呼び出した王様が引退しちゃったら…王子が王様になったら、王様はもう、送還の魔法を使えなくなるのにゃ?私…元の世界に帰れなくなるにゃ…?!」
私の問いに、王様は目を見開いた。
うちのネコは家中の引き戸は全て自分で開けられますが、ヒトが近くにいると引き戸の前に座って、開けてくれるのを待ってます。「自分であけなよ~」と言ってもしつこく待ってます。なので結局、私が開けることになります。ネコ飼いあるある…なんでしょうか…?




