16-1 ネコ戦士、初心に帰る
モモイロヒヒの言葉がはっきり聞こえるようになったのは、私がモンスター返りしてるってこと?!
ネコ戦士は元々、人里で暮らしてなかった野生のネコだったらしいし…
だったら私、ネコに…モンスターに戻るってこと…?!
モモイロヒヒの言葉が聞こえたことで、私は軽くパニックに陥ってきた。
「モモちゃん、どうしたんだい?」
カールさんが心配そうな顔で話しかけてきた。
こういう時…私が何か悩んでる時、いつも真っ先に気づいて声をかけてくれる。
そんなカールさんの優しさがありがたくて…
でも、心配かけたくないとも思えて。
「…にゃんでもにゃいにゃ!」
笑顔を作ってそう答えた。
そしたら
「…何でもないことないだろ。口元がひきつってる」
カールさんはため息をつきながら言った。
…見抜かれてる。
私はカールさんのシャツの裾を右前脚で引っ張って、
「…ちょっと来てにゃ…」
と私の家に連れて行った。
カールさんをベッドの端に座らせて、私はごくりとつばを飲んでから言った。
「…カールさん、もしも私がモンスターになっても、今まで通りでいてくれるにゃ…?」
カールさんは目を見開いて
「モンスターになったらって…どういうことだい?」
と聞いてきた。
なので私は
「最近、ノアの…馬の言葉が分かったり、モモイロヒヒの言葉が分かったりするようになってきたのにゃ…もしかしたら私、モンスター返りしてるんじゃないかと思うのにゃ…」
と、今の私の不安を正直に話してみた。
カールさんはちょっと考えてから、
「そういうのは、凍竜さんやモンスターの神様に聞いてみた方がいいんじゃないのかい?」
と言った。
…なるほど!
「それもそうにゃ…!」
ちょっとだけ安心して、ほっとしていると
「もちろん、モモちゃんがモンスターになっても、俺は今まで通りモモちゃんが好きだよ」
とカールさんが言った。
…そういうことじゃない!!
今まで通り村の家族として接してくれるかってことだよ!!
と思ったけど、やっぱりうれしくて、私は
「…ありがとにゃ…」
とカールさんにお礼を言った。
とりあえずカールさんと一緒に家を出て、私は広場に向かった。
そして
「凍竜さん、凍竜さん、聞きたいことがあるのにゃ…」
とフリーザードラゴンに呼びかけ始めた。
少しして、いつも通りフリーザードラゴンが空から舞い降りてきた。
”モモよ…どうした?”
フリーザードラゴンは、いつものきれいな声で話しかけてきた。
「私最近、馬…走族の言葉も、モモイロヒヒ…果実を食らう者たちの言葉もわかるようになったのにゃ…私、あなたたちに近くなってきたのにゃ…?」
恐る恐るそう聞いてみると、フリーザードラゴンはまばたきしてから
”それは、我らが神と通じたためであろう”
と言った。
モンスターの神様と通じたせい…?
私が首をかしげていると、
”そなたは火の山の件で初めて我らの神と会話をしたのであろう?そのため高位の存在の申すことが解せるようになったのではないかと、我は思う”
フリーザードラゴンは、そう言った。
「そういう…ことなのにゃ?」
と聞くと、フリーザードラゴンは
”間違いないはずだ”
とうなずきながら言った。
私は安心して、ほーっと長く息を吐いた。
”何故そのようなことを不安に感じたのだ?”
フリーザードラゴンが不思議そうに聞いてきたので、
「もしモールやツラーオの言葉までわかるようになったら…もう、村のためでも何でも、モールやツラーオは倒せなくなるって思ったのにゃ…」
私はそう答えた。
私の世界では牛とか豚とかの肉を普通に食べてたけど、生きてる牛や豚を見たら、こんな可愛い生き物を食べてるんだって、小さい頃すごく辛くなったことがあった。
私たちがその肉を食べるために、牛や豚が育てられてるっていうのはわかってたけど、それでも辛くなったんだ。
この世界に来てから、モールやツラーオを倒すようになったけど、それは村のみんなのために仕方ないって割り切ってた。
でももし、モールやツラーオの言葉が分かるようになって、”殺さないでくれ”とか言われたら…
私にはもう、モールもツラーオも倒せない。
そんなことを悶々と考えていると、
”つらーおは己より弱き者…草を食む者を食らうが、つらーおより強いそなたに狩られ、そなたらに食われる。それは致し方なきこと”
弱肉強食だから、当たり前ってこと…?
「でもっ…でもにゃ…」
と言いかけると、フリーザードラゴンはさらに言った。
”つらーおはヒトどもも食らうのだ。そなたがいなければ、この集落のヒトどもは食らわれていたかもしれぬぞ”
「…それはっ絶対ダメにゃ!!」
私がフリーザードラゴンに向かって叫ぶと、フリーザードラゴンは、ふっと笑った。
”そなたは優しすぎるのだ。誰もかれもを大切にしようとしすぎると、その優しさゆえ、そなたは身動きが取れぬようになるかもしれぬ。そなたにとって何が最も大切なのか、今一度考えてみるが良い”
そう言って、フリーザードラゴンは飛び去って行った。
私にとって…何が一番大切なのか…
フリーザードラゴンの言葉は、私の心に重くのしかかった。
第16章開始です。ゴールデンウイークはずっと寒かったので、ネコは暖を求めて家の中をさまよっていました。今は私の部屋のコタツの中です。…スイッチ入ってないのに…




