13-7 ネコ戦士、神の行いを見る
「ヒトの神様と…モンスターの神様と話したのにゃ…そしたら神様同士が話し合って、モンスターの神様が火の山を壊すって…そう言ったにゃ…」
まだ呆然としていたので、私はそう言うのでやっとだった。
「…火山を壊す…?」
「火山を壊したら、どうなるんだ…?」
みんなは首をひねった。
「神様も、どうなるかわからないって言ったにゃ…」
私がそう言うと、みんな考え込んだ。
「火山を壊すって、いったいどうやって…」
カールさんがそう言いかけてから、
「…山みたいなドラゴンが、モンスターの神様…だったな…」
と言葉を続けた。
「…ってこたぁ、このあたりに山みてぇなドラゴンが現れるってことか?!」
ジンさんが眉間にしわを寄せて言った。
「そ…それは…一体どうなるんじゃ…?」
村長が不安そうに言ったので、
「モンスターの神様は、モモイロヒヒのこと知ってたにゃ。リンゴの木が枯れて食べ物に困ってたのも、私が痩せたモモイロヒヒを助けたのも…みんな知ってたのにゃ。だから、このあたりを壊したりはしないと思うにゃ」
私は村長に向かって、そう言った。
「…だったら、きっと心配ないんだろうよ」
バーサさんが、ふんっと鼻から息を吐いて言った。
「あたしたちやモモイロヒヒたちが困るようなことを、神様ならきっと、なさらないよ」
バーサさんは、そう言って笑った。
昨日のひきつった笑顔じゃない、いつもの元気な笑顔だ。
「きっと大丈夫にゃ。神様がやってくれることを見守ればいいのにゃ!」
私も元気が出てきて、笑ってそう言えた。
そうこうしてるとすっかり夜は明けて、みんな、いつも通りの生活を始めた。
ジンさんが肉を焼き、バーサさんが店を開けて、カールさんと私でニワトリの世話をする。
ケンさんがツラーオの皮でバッグを作り、エドさんが家の補修用の木や骨を削って、リーナさんがモロコシパンを焼く。
当たり前の日常。
当たり前の風景。
これがどんなに大切でいとしいものなのか。
私は改めて、ベリー村への愛を噛みしめた。
今日はそろそろバーサさんが南の畑にキャベツの苗を植えるんじゃないかな?
そう思って南門の方を振り返りながら
「バーサさん、キャベツの苗植えるにゃ?」
と言った私の目に、信じられないものが飛び込んできた。
「…山にゃ…」
私がそうつぶやくと、バーサさんが
「ん?火山かい?」
と言って、私の見てる方に目をやった。
そしてバーサさんも
「…山だね…」
と言って固まった。
「ん?火山がどうかしたのかい?」
そう言いながら、みんなも南の方を見た。
そこにあったのは。
…いや、そこにいたのは。
山みたいな…高く険しい山のような、ドラゴンだった。
「…モンスターの神様にゃ…」
「あ、あれが…」
「モンスターの…神様…?」
みんなで巨大な山みたいなドラゴンを見つめていると、ドラゴンは…モンスターの神様は、動いた。
モンスターの神様は、多分だけど、南の海の中にいるみたいだった。
海の中から少しずつ、火山に向かって動くその姿は。
まさに、巨大な山。
デッガー火山より大きな山だ。
モンスターの神様は、ゆっくり…ゆっくりとデッガー火山に近づいた。
ゆっくりに見えても、きっとヒトや私が歩くスピードよりは速いんだろう。
そして、モンスターの神様の山みたいな体は少しずつ、デッガー火山を押しつぶし始めた。
黒煙を吐く活火山、熱くないはずはない。
ごめんなさい、ごめんなさい…
熱い思いをさせて、ごめんなさい…!!
心の中で必死に謝り続けたけど、モンスターの神様の表情は全く変わらなかった。
遠目にだけど、ずっと見つめているとわかってきた。
岩だ。
モンスターの神様の体は、岩でできてるんだ。
だったら、熱かったり痛かったりしない…かな…?
どきどきしながら見守るうちに、デッガー火山の黒煙が見えなくなってきた。
デッガー火山にのしかかる山みたいなドラゴンは、やがて完全に火山をその体の下に隠してしまった。
そうして、モンスターの神様は。
山みたいなドラゴンは。
そのまま動かなくなった。
「神様、死んじゃったのにゃ?!」
動かなくなったモンスターの神様を見て、不安になった私は、叫んだ。
すると
”我はしばしここに座す。でなくば、火の山の溶けた岩が流れ出すであろう”
と、例の重厚な声が聞こえてきた。
良かった…死んじゃったわけじゃないんだ…
ってか、神様だから死なない…か…?
「良かったにゃ!!死んでないのにゃ!!ありがとにゃ!!ありがとうございますにゃーっ!!」
私が山みたいなドラゴンに向かって大声で叫ぶと、
「ありがとうございますーっ!!」
みんなも声の出る限りに、大声で叫んだ。
みんな、泣き笑いをしていた。
モモイロヒヒたちのことを思い浮かべながら
「そこでみんなのこと見守ってて下さいにゃーっ!!」
と私が叫んだら、また声がした。
”うむ…見守ろう。我が同胞も…そなたらも”
え?
モンスターたちだけじゃなくって、私たちのことも見守ってくれる…?
私は、モンスターの神様に向かって、跪いた。
「ありがとにゃ…ありがとにゃ…ありがとうございますにゃ…!!」
村のみんなも私にならって跪いて、お礼を言い始めた。
「ありがとうございます…!!」
「ありがとなーっ!!」
「ニャー!!」
いつの間にかクロとネネが足元に来ていて、私たちと一緒に叫んだ。
そんなクロとネネを見て、みんな顔を見合わせて、笑った。
デッガー火山のあった場所には、今は神様の山が鎮座して、私たちを優しく見守ってくれているようだった。
ネコにおやつをあげるんですが、気分次第で食べなかったり、めっちゃ食べたりします。そしてたまに、入れ物を私が手に持って口元に持って行けば食べる…ということもあります。はい、私はネコの下僕ですw




