13-6 ネコ戦士、神々と語らう
フリーザードラゴンが去って、少しの間を置いて、みんなが私の方に駆け寄ってきた。
「モモちゃん!神様たちと話せるのかい?!」
みんなの問いに
「…フリーザードラゴンはそう言ったのにゃ…」
私は、そう返すしかなかった。
神々は、常に私のそばにいる…?
わからない。
わからないよ…!!
私が頭を振っていると、
「…きっとモンスターの神様もヒトの神様も、今までモモちゃんが頑張ってきたことを、ちゃーんと見ててくれたってことだね」
とバーサさんがほほ笑んだ。
「そうだな。モモちゃんはモンスターとヒトの架け橋になって、モンスターもヒトも大切にしてきたんだもんな」
カールさんもそう言って、優しく笑った。
「そうね。滅んだ国にひとりでいたクロのことも助けたし、モモイロヒヒとも仲良くなったんだもんね」
アンナもそう言って笑った。
…みんなの愛が、私を包んでくれる。
そうだ、王様が言ってた。
ネコ戦士は、たくさんのヒトに愛されて、強くなるんだって。
だったらもう、私のやることはひとつだ。
私の命をかけてでも、みんなを…クロたちを守るしかない。
私はもう、前世で死んでるんだから、みんなを守れるなら…この命、惜しくはない。
「神様たちに、祈ってみるにゃ…!!」
決意を込めて、私は宣言した。
その日一日、ベリー村のみんなはいつも通り平和に過ごした。
私も、カールさんと一緒にニワトリの世話をしたり、キノコの様子を見たりした。
傭兵に殺されたツラーオたちの体からはもうキノコは生えなくなったけど、クロとネネが時々狩ってくれる小鳥の死骸で、少しずつキノコの栽培は続けていた。
収穫したキノコをバーサさんが乾かして、薬の材料として王都の薬屋に売る準備をする…いつも通りのベリー村の日常だ。
この平和なベリー村は、絶対に守る。
私の命と引き換えにしてでも。
そう心に誓いながらも、私はいつも通りの一日を終えた。
そして夜になって、クロとネネと一緒に毛づくろいをして、寄り添うようにして眠って…
夜明け前に起き出した私は、装備を身に着け、まだ誰も起きていないのを確認してから広場に向かった。
フリーザードラゴンがよく現れたのは夜明け前だったから、そのぐらいの時間の方が、神々への祈りも通じやすいんじゃないか…と勝手に思った私は、祈り始めた。
「神様…私の神様たち…私とお話して下さいにゃ…」
必死に祈り続けていると、私の周囲は真っ白になった。
ネコ戦士になるか、ヒト戦士になるか。
あの選択画面と同じような状況に、私は目を見開いたまま固まった。
”ネコよ…ネネコよ…”
バーサさんのような、私の母のような、優しい声。
これが、ヒトの神様の声…?
”困っているようですね…”
優しい声が、そう言った。
「そうです!!村も…モンスターたちも…この世界が危ないんです!!」
私は気づいた。
語尾に”にゃ”がついてない。
私の…ヒトだったネネコの話し方だ。
でも今は、そんなこと気にしてる場合じゃない。
「お願いです!!お願いします!!デッガー火山の噴火をっ止めてくださいっ!!」
私は声を張り上げて、叫んだ。
すると優しい声は言った。
”それは…私ではなく、先に存在していた者たちの神に頼むべきでしょう”
…モンスターの神様に頼めってこと…?
「でもっ…でもっ…!!」
モンスターの神様の呼び出し方なんて、知らない。
私が焦り出すと
”…呼んだか”
と、地の底から響くような重厚な声が聞こえてきた。
まさか…
これがモンスターの神様…?!
「お願いしますにゃ!!」
モンスターの神様に語りかけると、また私の語尾に”にゃ”がついていた。
ああもう、どうなってんのよ…
戸惑う私に、モンスターの神様は言った。
”果実を食らう者を助けたのだな…”
…見てたの…?
驚く私に、さらに
”奴らの住まう地が危ういのだな?”
と、モンスターの神様は言った。
「そうにゃ!リンゴの木がいっぱい枯れてるのにゃ!!このままじゃ食べ物がなくなっちゃうのにゃ!!」
私は、痩せてしまったモモイロヒヒのオスの姿を思い出した。
いくらDV野郎でも、あの姿はかわいそうすぎた…
”如何なさいます?先に存在していた者たちの神よ”
ヒトの神様の声がした。
”火の山がなくなれば、その後この地がどうなるかはわからぬ”
モンスターの神様がそう答えた。
”火の山は火竜のみが生息していた地でしょう?火の山がなくなろうとも、他の者たちは困らないのではありませんか?”
ヒトの神様がそう言うと、
”…是”
モンスターの神は短く返した。
どきどきしながら両者のやり取りを聞いていると、
”ならば、壊そう”
とモンスターの神様は、言った。
え?壊す?
火山を???
私が首をかしげていたら、
”そなた…自分の命と引き換えにしても…と願っていたでしょう?”
とヒトの神様が言った。
私は正直に
「…死ぬのはイヤです…」
と言った。
そして続けて
「でもっ…みんなが辛い思いをするのは、死んじゃったりするのは、もっとイヤです!!」
とヒトの神様に向かって叫んだ。
すると
”そなたの覚悟あってこそ”
”我らはそなたの願いを叶えるのだ”
神々が、そう言った。
その言葉が終わるか終わらないかぐらいのタイミングで、一面の白の世界は、すうっと元に戻って、私はベリー村の広場で一人、たたずんでいた。
「モモちゃん、早いねぇ」
バーサさんの声がして、私は我に返った。
私は呆然としたまま
「…神様たちと…話せたにゃ…」
とバーサさんに言った。
バーサさんは目を見開いた後、村のみんなを叩き起こしに行った。
「モモちゃんがっ!!神様たちと話したんだって!!」
バーサさんの声に、みんなは飛び起きて広場に集まってきた。
…安眠妨害だよ、バーサさん…
気温の上下が激しい季節なので、ネコは布団に入ったり布団の上で寝たり…と、夜の間動き回ってます。ヒトが衣替えの時期でもネコは軽く毛替わりする程度なので、寝場所を探しまわるんですね~




