13-1 ネコ戦士、ベリー村周辺の探索を考える
第二王子・ルネが王都に戻り、その後特に知らせもなかったので、多分ルネは王様の説得に成功したんだろう。
とりあえずひと安心した私は、次のことを考え始めた。
この世界で私がまだ実際に行ったことがないのは、ベリー村北西から南にかけての森林地帯やそれに続く平地、それにデッガー火山だ。
ベリー村がツラーオたちの大量発生とかで困ってたのは、多分ベリー村が温暖な地域で、ほとんどのモンスターも温暖な気候を好むからだろう。
バーサさんの畑にいるモモイロヒヒたちの他にも、もしかしたら森林地帯に住むモモイロヒヒがいるかもしれない。
モモイロヒヒの縄張りは決まってるから、畑のモモイロヒヒ母子たちの縄張りでエサが少なくなって、あの母子は畑まで来たんじゃないかな?
最初に会った時、食べ物がないのかって聞いたら、うなずいてたし。
…ということは、空の上から見えたあの広大な森林地帯に何かが起こってて、モモイロヒヒのエサになる果物が減ってるのかもしれない…?
うーんうーんとうなっていると、
「モモちゃん、どうしたんだい?」
カールさんが声をかけてきた。
私が考えてたことを説明すると、カールさんは
「うーん…俺らにはモンスターの生態?とかはわからないからなぁ…」
と言った後、思いついたように
「そうだ。王都の学者先生に聞いてみたらどうだい?」
と私に勧めてくれた。
「にゃるほど、それもそうにゃ!」
早速私は村長に手紙を書いてもらい、伝書鳩を飛ばしてもらった。
すると翌日、ギルド長とケラーさんがそれぞれ馬に乗ってやってきた。
「毎度毎度ネコ戦士殿に王都に来てもらうのは申し訳ないので、私の方からベリー村を訪れることにしたのだ」
ケラーさんはそう言いながら、きょろきょろと村を見回した。
そして
「…なるほど、モンスターの好む温暖な気候であるな…」
ケラーさんがそう言ったので
「ベリー村の近くの森林地帯やデッガー火山までの間も、モンスターが好きそうなのにゃ」
私はうなずいてそう返した。
ベリー村の畑のモモイロヒヒ母子が、森に食べ物がないせいで畑に来たことも説明すると、ケラーさんは
「確かに。ベリー村の周囲の森林地帯は野生の果樹も多かったはずである。それなのに食糧不足とは…」
とうなった。
「だからにゃ、森林地帯の様子を探ってみたいのにゃ」
私がそう言ったら、
「しかし…森林地帯には馬では入れぬぞ…」
ギルド長が渋い顔で答えた。
「…ならば、徒歩で行くしかあるまい」
ケラーさんが意を決したように言ったので、私は驚いた。
えっ?ケラーさんて机に向かってなんか書いたりするヒトじゃないの?!
森の中とか歩けるの???
「ケラーさんも行くつもりなのにゃ…?」
恐る恐る聞いてみると、ケラーさんはうなずいた。
「足手まといにはならぬ」
…いやいや、心配すぎるんだけど…
「私はモンスター研究家として、モンスターたちの暮らす環境、その変化によってヒトにいかなる影響があるのかを、誰より先に知らねばならないのだ。小さな変化を見過ごすことで、ベリー村が危機にさらされることになるなど、あってはならぬ」
ケラーさんの決意は固いようだった。
私は心の中で大きなため息をついた。
このヒトって多分だけど、バーサさんより年上なんじゃないの?
そのトシでデスクワーカーしてきたヒトが、森の中とか歩ける?
…とは思ったけど、仕方ない。
「…わかったにゃ」
私はそう言ったけど、
「し、しかし…」
ギルド長はまだ戸惑ってた。
まあ当然だよね…
ギルド長から見たケラーさんのイメージも、私から見たケラーさんのイメージとおんなじだろうし。
でも、ケラーさんが行くって言うんだから仕方ないよね…
「その代わり、腰抜かさないでついてきてにゃ」
と私が言うと、ギルド長とケラーさんは首をかしげた。
「多分モモイロヒヒが結構いると思うにゃ。だから私、殺気飛ばしながら歩くにゃ」
私の言葉に、二人はあっ…という顔をした。
ギルド長もケラーさんも、思わず発した私の殺気に腰を抜かしたことがあるからだ。
「…心得た…」
二人がうなずいたので、私もうなずいた。
こうしてギルド長とケラーさんと私とで、森林地帯の探索に行くことが決まった。
馬では入れないから、当然荷物も自分たちで持ってかなきゃいけない。
私が一番力は強いけど、万一に備えて、私は武器だけを背負った方がいい。
色々相談した結果、村の北門から出て森林地帯の北西を探索し、いったん戻って西門から、次は南門から…と、何回かに分けて探索することになった。
それなら、いっぺんにたくさんの荷物を持って行く必要はない。
…というわけで、まずは村の北門から出たあたりから探索することにした。
地図によれば川の支流があちこちにあるから、一番重い荷物になる水は持って行かなくて良さそうだった。
それでも干し肉やモロコシパン、キャベツとかはそれなりに準備しなきゃで、結構な重さになるけど、そういった荷物はギルド長が背負ってくれることになった。
…まあケラーさんに荷物背負わせたら、すぐ動けなくなりそうだもんねぇ…
そんなことを考えながら、私もケンさんに武器の手入れをしてもらって、旅立つ準備をした。
「モモちゃん、気をつけるんだよ!」
「いくら強いからって、お荷物を二人も連れてるんだからさ」
みんながそう言うので、ギルド長とケラーさんは気まずそうだった。
「大丈夫にゃ!殺気飛ばしてモンスター追い払いながら行くにゃ!」
私がそう言ったら、
「…ギルド長さんたちも腰抜かすんじゃねぇのかよ…」
ジンさんがそう言った。
まあそうだけど、先に注意しといたから大丈夫だろう…多分。
「んじゃ行ってくるにゃ!!クロ、ネネ、みんなをよろしくにゃ!!」
クロとネネが
「ニャー!!」
と答えてくれて、みんなも北門まで見送ってくれた。
さあ、未知の地域の探索だ!!
第13章開始です~。昨日から姉が来てるんですが、うちのネコは姉がいるとやっぱりいつも通り過ごせないようで、姉には近寄りません。姉んちにもネコがいて、その匂いがするせいか…?




