12-9 ネコ戦士、第二王子を見送る
キャベツやネギやリンゴやベリーを収穫し、お弁当を食べた後、
「さあ、これで畑を耕すよ」
バーサさんがそう言って。鋤を持った。
キャベツやネギを刈り取った後の土を耕して、畑の隅に植えてある苗を植え付けるんだけど、ニワトリが村に来てからは、苗を植える前にニワトリのフンを土に混ぜてしばらく置いておくようになっていた。
「これは…何でしょうか…?」
「ニワトリのフンだよ」
ルネの問いにバーサさんが答えると、
「えっ…ニワトリの…?」
とルネは驚いていた。
「苗を植える前の土に混ぜといたら、野菜が良く育つのにゃ」
私がそう言ったら、ルネは
「…私はまだまだ無知なのですね…」
としょんぼりした様子で言った。
するとエマが
「知らないことを知るために、働き始めるんでしょ?私だって、バーサさんのお手伝いを始めるまで、何も知らなかったもん」
とルネに笑いかけた。
ルネは
「…そうですね…知らないことは、知ろうと努力すれば良いんですよね」
と答えて、うなずいた。
ホントにいい子だ。
でも、いつまでもルネをこの村で働かせるわけにはいかない。
「ルネ、そろそろ王都に帰るにゃ」
私がそう言うと、ルネは首を横に振った。
「いいえっ…まだ、まだ私は…」
ルネは食い下がったけど、
「あんたがこの村にいる間、ギルド長さんも王都に戻れないのにゃ」
と言うと、黙ってうつむいた。
バーサさんが
「そうだよ。早く帰って王様に、自分がどうしたいのかをちゃんと言うんだよ。勉強したくないわけじゃないって。おじいさんのことが心配だから、おじいさんの仕事を手伝いたいんだって、ちゃんと、そう言えばいいんだよ」
優しく笑いながら…ルネに向かって諭すように言うと
「…父は、わかってくれるでしょうか…」
ルネは不安そうにつぶやいた。
「王様がルネの言うこと聞いてくれないなら、私がニワトリの羽根で王様の頭を叩いてやるにゃよ」
私がそう言うと、バーサさんとエマは吹き出した。
ルネは驚いて
「えっ?えっ?」
と言ったけど、
「大丈夫よ。モモちゃん、前にも王様の頭叩いてたから」
エマが笑いながら言ったら
「そ、そうなのですか?」
と驚きながら、ルネは言った。
「さあ、収穫も終わったから、戻って野菜と果物をきれいにするよ!」
バーサさんがそう言ったので、私たちは村に戻ることにした。
少しだけ暖かい、春の訪れを感じさせる風が吹く中、私たちは南門からベリー村に戻った。
村に戻ると、バーサさんとエマとルネは野菜の外側をむいたり、果物をきれいに洗ったりし始めた。
手持ち無沙汰な様子のギルド長のとこに行って
「ルネは王都に帰るにゃよ」
と言うと、ギルド長はほっとした顔をした。
「そうか。馬たちも充分休めているので、いつでも出発できるが…」
ギルド長がそう言ってきたので
「バーサさんのお手伝いが終わったら、ルネを連れて帰ってにゃ」
と返すと、ギルド長はうなずいた。
「うむ、ではしばし待とう」
そう私に返してから、ギルド長は馬たちのひづめの手入れを始めた。
姉の子供たちぐらいの年頃のルネと、少しの間だけとはいえ一緒に暮らすことができて、楽しかった。
でもルネは、普通の子供じゃない。
王様の子供だから、王様の子供としての勉強もきちんとするべきだ。
それだけは、言っておかなきゃいけない。
バーサさんのお手伝いを終えたルネは、村のみんなに頭を下げて
「私の勝手でご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。私は王都に戻ります」
と言った。
「迷惑なんかじゃなかったよ」
「よく頑張ったよ。なあ?」
「そうね、ニワトリのフンも嫌がらなかったし」
みんなが笑ってそう言うと、ルネは目に涙をためて
「…ありがとうございます…!」
と、また頭を下げた。
ギルド長が馬たちを連れてきて
「殿下、参りましょう」
とルネに声をかけると、ルネはうなずいて
「それでは皆様、お元気で…」
と言いかけたので、私は
「勉強もするんにゃよ?」
と口を挟んだ。
「え?え?」
と戸惑うルネに
「お兄さんの補佐ができるように勉強しながら、おじいさんのお手伝いするにゃ。そう約束しなきゃ、きっと王様は許してくれないにゃよ」
私はそうクギを刺した。
「おじいさんのお手伝いは大変だけど、勉強だってしなきゃいけないにゃ。それでも許さないって王様が言ったら、私を呼んでにゃ!」
と私が笑うと、ルネは
「…ニワトリの羽根で、父を叩いて下さるのですか…?」
と返し、みんなが声を上げて笑い出した。
「そりゃあ王様もお許しになるしかねえな!!」
「勉強も仕事も頑張るってのに許さないなら、それしかないよねぇ」
そしてみんなが
「だから、安心して王都に帰りなよ」
「元気でな!」
「頑張ってね!!」
と口々に言うと、ルネは笑ってうなずいた。
ルネを見送った後、ちょっと淋しい気持ちになった私の後ろ足に、クロとネネが体をこすり付けてきた。
ネコはヒトの気持ちに敏感で、私も家のネコに慰めてもらったことがあった。
…まあ今は私もネコなんだけど。
今日から姉が来てるんですが、うちのネコは姉の足元に行った後「誰や、こいつ」という顔をして急いで逃げて行きました…めったに来ないから忘れちゃってるんですねw というわけで、明日から第13章開始です~!←文脈よ。




