12-8 ネコ戦士、第二王子の心情を知る
私には王家のこととかは良くわからないけど、二人の王子がいたら、弟はお兄さんの補佐とかしなきゃじゃないの?
なのにこの子は、自分の責務から逃げたいってこと?
私はため息をついてから
「ルネは何歳にゃ?」
と彼に聞いてみた。
「15歳になります」
ルネはそう答えた。
「そろそろお兄さんの補佐になる勉強とかやらなきゃダメなんじゃないのにゃ?」
私の問いに、ルネはしばらく黙った後
「…現在、兄は父の補佐をしております。兄が王位を継げば、兄の子が兄の補佐になるでしょう」
と言った。
「お兄さんは何歳にゃ?まだ若いにゃろ?子供ができてもその子はすぐには補佐はできないにゃろ?」
矢継ぎ早に尋ねたら、ルネは
「兄は20歳ですが、すでに王都の宿屋の娘と婚約しており、近々結婚する予定なので、兄が王位を継ぐ頃には、子供も育っているでしょう」
と淡々と答えた。
ルネの答えに納得できなくて、私は
「子供がすぐにできるかはわからないにゃろ?ルネが補佐しなきゃいけない期間もあるかもにゃろ?そのために勉強しなきゃにゃろ?」
と、また矢継ぎ早に質問をした。
するとルネは
「私はっ、母の実家を継ぎたいのです!!」
と声を上げた。
「現国王陛下の奥様…王妃様って言ったら、王都の八百屋の娘さんだったよね?」
バーサさんがそう言って
「ああ、そうだったなぁ」
「元貴族だった八百屋さんだったっけ?」
みんなが口々にそう言い始めた。
「そうです。母の実家は元貴族ですが、二代前から八百屋を始めました。母には兄がいましたが、私がまだ幼い頃に病で亡くなり、今は祖父がひとりで店をやっているのです…」
ルネはそう言って、目を伏せた。
なるほど、この子が補佐になる勉強をしない理由は分かった。
…でも。
「あんた今まで働いたことないにゃろ?」
と私が言ったら、
「…はい…」
ルネは小さな声で言って、うなずいた。
「八百屋なんて簡単にできるとでも思ってるのにゃ?」
私が続けてそう聞くと、ルネは
「…ですから、この村で働かせてもらいたいとっ…!!」
と言って、顔を上げた。
うーん…ベリー村の八百屋…バーサさんと、王都の八百屋じゃ違うと思うんだけどなー…
王都の八百屋はバーサさんから野菜仕入れて売ってるだけのはずだし…そう考えながら、
「バーサさん、この子をバーサさんと一緒に働かせてやってくれるにゃ?」
バーサさんの顔を見上げて私がそう言うと、
「いいよ!!八百屋の仕事ってのを叩きこんであげるよ!ただし、ベリー村流だけどね!」
と言って、バーサさんは笑った。
ギルド長を含むみんなは目と口を開いてたけど、
「よろしくお願いします!!何でもします!!」
ルネがそう言ってバーサさんに頭を下げると、さらに目と口を開いた。
「じゃあ、店に来な!」
「はい!!」
バーサさんに連れられてルネがバーサさんの店に向かうのを、私は笑って、みんなは呆然として見送った。
ギルド長が村長に頼んで伝書鳩を飛ばしてもらっていたので、
「ギルド長さんは王都に帰らないにゃ?」
と聞いてみると、ギルド長は
「第二王子のご様子を陛下にご報告申し上げなければならぬので、私もしばらくベリー村に滞在させてもらう」
と答えた。
私が笑って
「ルネがみんなに失礼なことしたら、私がニワトリの羽根で叩いてやるにゃよ」
と言うと、ギルド長は目を見開いてから
「う…うむ…」
と渋い顔をした。
私が王様の頭をニワトリの羽根で叩いたことを思い出したんだろうな…
私がまた笑って、
「冗談にゃ。あの子は大丈夫だと思うにゃ。いい子にゃ!」
と言ったら、ギルド長は少し表情を緩めて
「うむ…そうだな…」
とうなずいた。
思いがけずベリー村に滞在することになってしまったギルド長のためにも、ルネには頑張ってほしいな…と私は思った。
そうしてルネは、バーサさんに教えを乞いながら、一生懸命働き始めた。
エマと一緒に野菜や果物を洗ったり、汚い所を取り除いたり…今は水も冷たいから、野菜や果物を洗うのも辛いだろうに…慣れない仕事だろうに、彼は彼なりに頑張っていた。
「あんたのお母さんはきっと、今のあんたより小さい頃から親御さんを手伝って、こういう仕事をしてただろうね」
バーサさんが笑いかけると、
「はい…そうですね。そして今、祖父も同じように働いているのでしょう…」
ルネはそう言った。
「おじいさんの年はいくつだい?」
バーサさんの問いに、ルネは
「もうすぐ80になります…きっと、毎日大変だろうと思います」
と答えていた。
「そうかい…そりゃあ心配だねぇ…」
バーサさんが眉を下げてそう言ったら、
「はい…」
ルネは泣きそうな顔でうなずいた。
…めっちゃいい子じゃん…
私たちは、バーサさんとルネの様子を温かく見守った。
ルネがバーサさんの店で働き始めて三日目、私はいつものように南門から畑に出るバーサさんの護衛を頼まれた。
前にオスのモモイロヒヒを脅して追い払ったから、もう特に危険なことはないだろうけど、リンゴやベリーの木に登れるのは私だけだし、護衛というより果物の収穫要員って感じだ。
バーサさんが作ってくれたお弁当を持って、バーサさん、エマ、私、そしてルネの四人で村の南門から畑に出ると、
「ひっ!!」
と言ってルネが後ずさった。
見ると、リンゴの木のとこにモモイロヒヒの母子がいた。
「子供、すごく大きくなったにゃー!!」
私がそう言うと、モモイロヒヒの母親は少し考えてから、うなずいた。
私ぐらいの大きさだったモモイロヒヒの子供は、もう大人のヒトに近い大きさになっていたので
「ホントだねぇ。大きくなったねぇ」
バーサさんも微笑んで、モモイロヒヒ母子を見つめた。
エマもさすがに慣れてきていて
「子供の成長は早いわねぇ」
と言いながら、カマを持ってキャベツの収穫を始めた。
ルネは呆然として
「…八百屋って…命がけなんですね…」
とつぶやいた。
こんなのベリー村だけだよ!と私は心の中でつっこんだ。
暑くなったり寒くなったりで、ネコも戸惑い気味です。私が暑がりなので、もうコタツはカバーかけただけでつけないのに、ネコはあったかいと思ってコタツに入って、そして「思てたんとちゃう」みたいに出てきます。夜だけでもコタツつけてあげるべきでしょうか…




