12-7 ネコ戦士、未来を危ぶむ
みんなに軽蔑の目で見られて、しょげかえっていた王様は、しょぼしょぼと馬車に戻っていった。
「クロ、ネネ、ちょっと待っててにゃ」
私はそう言ってクロとネネを降ろして、王様の後を追った。
「王様、話したいことがあるにゃ」
馬車の扉を開けて中に入って王様に向かってそう言うと、王様は
「…村の皆には聞かせたくないことか?」
と尋ねてきた。
さすがは一国の王だ。
腐ってもタイだ。
「そうにゃ。この国の未来の、大切な話にゃ」
私が言うと、
「うむ、聞こう」
王様はうなずいた。
「このままずっとこの世界にいても、私はいつか死ぬにゃ」
私の言葉に、王様はまたうなずいた。
「その後、この国にまた危機が訪れたら、どうするにゃ?」
「…危機…とは?」
王様は目を見開いた。
「モンスターとの共存は、フリーザードラゴンと私とで決めたことにゃ。それはこの先も守られると思うにゃ…でも、天変地異については約束の他の話にゃ」
私がそう言うと、王様は
「天変地異とな…?!」
と眉間にしわを寄せた。
「そうにゃ。ベリー村の南には、デッガー火山があるにゃ。デッガー火山が噴火したら、ベリー村は…下手したら、西のロナ村も、滅びるかもしれないにゃ」
「うむ…うむ…それは考えられぬことではないな…」
王様は考え込んだ。
「その時、もしまた他の…私以外のネコ戦士を召喚できたら、みんなが逃げる時に大きな荷物を運ぶとかで、少しでも被害を減らせるかもしれないにゃ。王様はもう一回、ネコ戦士を召喚できるのにゃ?」
私の問いに対する王様の答えは
「…私にはもう、ネコ戦士は召喚できぬ…」
だった。
「我らルーン王国の王族に許されたのは、一代に一度限りのネコ戦士召喚だ。私にはもう二度と、ネコ戦士は召喚できぬ」
王様は、悲しそうに言った。
「王様に子供はいないにゃ?」
そう尋ねてみると、王様は
「まだ年若き息子が二人いる…が、第一王子は賢く、第二王子は愚かだ…」
と答えた。
愚か?愚かってどんな風に愚かなんだろう?
と思ったけど私はとりあえず
「じゃあ第一王子がネコ戦士召喚すればいいにゃ。第二王子は私が叩いてやってもいいにゃよ」
と言っといた。
「た、叩くとな?」
王様は驚いた顔で言った。
「良くわからないけど、愚かな子は生まれつき愚かなわけじゃないと思うにゃ。育つ間に何か理由があって、愚かって言われるようになっただけにゃよ。だったらちょっと叩いてでも、性根を入れ替えてもらうしかないにゃ」
私がそう言って笑ったら、
「…モモ殿は、亡き王妃より恐ろしいな…」
王様は、ふっと笑った。
…王様って、恐妻家だったんだ…
王妃様って怖い人だったのかなーと思っていると、
「我が妃は、城下街の八百屋の娘であったので、しっかりしていて明るく元気だった」
王様が、微笑みながらそう言った。
…ん?
八百屋の娘???
フツー王族って貴族の娘とかと結婚するんじゃないの?
「王様、この国には貴族はいないのにゃ?」
と尋ねると、王様は
「昔はいたのだが、先々代…私の祖父の代から貴族制度はなくし、貴族たちはそれぞれ商売などを始めたのだ。いざという時のネコ戦士召喚のため、王家は残さざるを得なかったが」
と答えた。
「じゃあ国の運営はどうしてるにゃ?王様ひとりで決めるのにゃ?」
と続けて尋ねると
「予算や会計や公共の建設工事など、この国に関するすべてのことは、民の代表十数名と私とで話し合い、決定しておる」
王様は、そう答えてくれた。
ちょっとしたことで勲章勲章って言うから、王様が何でも勝手にひとりで決める国かと思ってたのに、王制なのに民主主義なんだ…!!
「すごいにゃ!!この国は、いい国だにゃ!!」
私はちょっと興奮した。
いざという時のネコ戦士召喚のために、王家後は絶やしちゃいけない。
その理由だけのために王族は残して、国の運営はみんなでやってるなんて…すごい。
こんないい国の第二王子が、ホントに愚か者なわけないんじゃない?
「王様、私、第二王子に会ってみたいにゃ!」
私が思わずそう言ってしまったら、王様は
「…叩くのか…?」
と、ちょっと心配そうな顔をした。
「そうじゃないにゃ!多分だけど、第二王子は愚か者なんかじゃないと思うにゃ!だから会って、話してみたいのにゃ!」
と言ったら、王様はちょっと考えてから
「…うむ。では、機会を作ろう」
と言ってくれた。
話したいことは話したので、私は王様の馬車から降りて、みんなの所に戻った。
するとギルド長が寄ってきて
「ネコ戦士殿、陛下と何か大切な話をしていたのか?」
と聞いたので、私は
「第二王子をひっぱたく話にゃ!」
と笑って答えた。
「…は…?」
ギルド長もみんなも、目を見開いて固まった。
数日後、王様は約束通り第二王子と話す機会を作ってくれた。
第二王子がベリー村に来るというので、馬車だと思ってたら、なんと、ギルド長と一緒に馬に乗ってきた。
しかもギルド長との二人乗りじゃなく、第二王子は第二王子でひとりで馬に乗ってきたので、私たちは驚いた。
第二王子は慣れた様子で軽く馬から降りると、私たちに向かって頭を下げて
「お初にお目にかかります。第15代ルーン王国国王が第二子、ルネと申します」
と言った。
…これのどこが愚か者なのよ…
「初めましてにゃ!ネコ戦士のモモですにゃ!!」
右前脚を上げて私が挨拶をすると、第二王子は
「モモ殿、お噂はかねがね伺っております。私のことは、ルネとお呼び下さい」
と礼儀正しく言って、また頭を下げた。
そしてルネはちょっとためらった後、
「…急な話で申し訳ありませんが…私をこのベリー村で働かせてください…お願い致します…!!」
というとんでも発言をして、みんなに向かって深く頭を下げた。
第二王子って立場なのに、こんなこと言い出すなんて…
これが愚か者って言われる理由か…と、私はため息をついた。
うちの母が掃除機を持つだけで、ネコは飛んで逃げてカーテンのうしろに隠れます。電源も入れてない、ただ持っただけで、掃除機だ!ってわかるぐらいには掃除機が怖いうちのネコ…掃除機で恐怖心を植え付けたこともないのに…と、いつも不思議です。




