12-4 ネコ戦士、キノコに祈る
ツラーオの体からキノコが生えるかどうかは、賭けみたいなものだ。
もしもキノコが生えるようになったとしても、それまでレントのお父さんの命がもつかどうかはわからない。
なのでギルド長を始め、ギルドのみんながお金を出し合って、レントのお父さんのために薬を買うことになった。
王都の薬屋と医者から、いっぺんに全部買うんじゃなく、少しずつ薬を買って、レントに渡すんだそうだ。
レントのお父さん以外にも同じ病気になる人がいるかもしれないから、薬の買い占めは出来ない。
そうやって何とかレントのお父さんの命をつなぎながら、私は祈り続けた。
ツラーオの体からキノコが生えますように…!!
毎日のようにカールさんと一緒にツラーオの様子を見に行ったけど、一週間経ってもキノコが生える気配はなかった。
「…今日も生えてなかったにゃ…」
私がつぶやいたら、
「…まだだ、まだ諦めちゃいけない」
カールさんは、自分自身に言い聞かせるように、小さな声で言った。
「せめて、まだ乾かしてないナマのキノコがあったら胞子が採れるのににゃ…」
私がため息をつくと、カールさんが言った。
「またロナ村に生えてないかな…」
「…それにゃ!!」
そうだ、ロナ村にまたキノコが生えてるかもしれない。
「村長さんに伝書鳩飛ばしてもらうにゃ!」
私の言葉にうなずいたカールさんと一緒に、私は村に戻った。
村長はすぐに王都に伝書鳩を飛ばしてくれて、お昼前にはギルド長がやってきた。
馬を休ませながらお昼ご飯を食べて、私たちはロナ村に向かうことにした。
「クロ、ネネ!みんなのこと頼んだにゃ!!」
クロとネネにそう言うと、二匹は
「ニャー!!」
と元気に返事をしてくれた。
そして村のみんなに見送られてベリー村を発って一時間弱でロナ村に着くと、なぜか村長のキトさんが迎えに出てくれていた。
そして
「お待ちしておりました。またキノコを見つけたので、王都にお知らせしたのですが…お早いお着きで」
と言った。
ロナ村にも伝書鳩がいるそうで、私たちがキノコキノコ言ってたのを気にかけてくれていたキトさんは、キノコが生えたことをさっき知らせた…とのことだった。
すごい…奇跡みたいなすれ違いだ。
キトさんが生のキノコを見せてくれて
「すでに乾かし、すぐに薬に使えるようにしてある物をお渡しいたします」
と言ったけど、私は
「ナマのキノコの粉が欲しいのにゃ!」
とキトさんに訴えた。
「は…?これはまだ薬には使えませんが…?」
戸惑うキトさんに
「ナマのキノコの裏についてる粉があったら、キノコを生やせるかもしれないのにゃ!粉下さいにゃ!」
と必死にお願いしてみると、キトさんは四つ折りにした小さな紙を持って来て、その上でキノコを振った。
結構たくさんの胞子が紙の上に落ちたので、私はほっとした。
胞子が落ちた紙を丁寧に畳んで、こぼれないように気をつけてポーチにしまっていると、ギルド長は乾燥済みのキノコを受け取ってキトさんにお金を払っていた。
「いっ一万ジロ…?!こんなにはいただけません…!!」
キトさんは慌ててたけど、
「我らの仲間であった者の父親の薬のために、ギルドの皆で少しずつ持ち寄った金である。受け取ってもらわねば困る」
ギルド長がそう言うと、
「…ありがたく…頂戴いたします…!」
キトさんは両手の平にお金を載せたまま、ギルド長に頭を下げた。
「ただいまにゃ!カールさん、ツラーオのとこ行くにゃ!!」
ベリー村に戻るなり、私は叫んだ。
みんなはなんだなんだと集まってきたけど、詳しく説明する時間が惜しかったので、私は
「キノコの種みたいなのもらったにゃ!すぐ植えつけなきゃダメにゃ!!」
と雑に説明した。
それでもみんなは気づいてくれて
「おおっ!そりゃ早くしねぇとな!」
「行ってきなよ!!」
と応じてくれた。
「では私は王都に戻り、乾かしたキノコを薬屋に調合させる」
ギルド長もすぐに王都に向けてベリー村を発った。
私は大急ぎでカールさんと一緒にツラーオの所に行って、朝に水をかけたのでまだ湿っていたツラーオの体に、キノコの胞子をまんべんなく振り掛けた。
キノコがちゃんと生えますように…!!
そう祈りながら、私はキノコの胞子をツラーオに振りかけた。
そして、待つこと四日。
ツラーオの体から、エノキダケぐらいの大きさのキノコが生えてきているのを見つけた。
「これじゃまだ小さいな…」
カールさんがそう言うので
「そうだにゃ。もうちょっと大きくなるまで待った方が良さそうにゃ」
と、私も同意した。
ギルド長がロナ村で買ったキノコは、王都の薬屋で調合してもらってレントに渡してるはずだけど、いつまでもつか…
焦る気持ちを抑えながら、私たちはキノコの成長を待った。
それからまた三日ほど待っていたら、キノコはシメジぐらいの大きさに育った。
ロナ村で見せてもらったキノコと同じぐらいの大きさになったキノコを見て、私はカールさんと顔を見合わせて笑った。
「やったな!立派に育ったなあ!」
「早速王都に伝書鳩飛ばしてもらうにゃ!」
私たちは大喜びで村に戻り、村長に伝書鳩を飛ばしてもらった。
「このキノコ、干さなきゃダメなのかにゃ?干すの時間かかるのかにゃ…」
私がザルに入れたキノコを見つめていると、
「今は寒いから、そうやってザルに入れたまま干しといたら、すぐに乾くよ」
とバーサさんが言った。
そして
「薬にするぐらい乾かすなら、二~三日は干さなきゃいけないと思うけどね」
バーサさんが続けて言ってくれたので、私はキノコを干すのをバーサさんにお願いすることにした。
その後、キノコがカラカラに乾くのを待つ間にも、キノコは次々に育ってくれたので、村の広場にキノコの干し場を作って、干しキノコはどんどん増えていった。
その間にギルド長が干しキノコを取りに来ては王都に運び、薬屋に調合してもらって、薬はどんどん増えたようだった。
干しキノコをギルド長が運び始めてから十日ぐらい経ったある日、ギルド長がやってきて
「ネコ戦士殿!!レントの父親の病が治ったぞ!!」
と叫んだ。
「…やったにゃ!!」
「やったな!!」
「良かったなぁ!!」
みんなで大喜びしてると、ギルド長が
「キノコの代金を支払おう。何万ジロだ?」
と聞いてきた。
「一本1ジロぐらいでいいにゃ?」
私がそう言ったら、みんなも
「そんなもんだろ」
「そうだね、薬は10ジロぐらいで売って欲しいもんねぇ」
と言ってくれた。
ギルド長は
「そのようなっ…!!」
と慌てたけど、
「高い薬のために、レントはツラーオたちを虐殺したにゃ。もう二度と、そんなことが起こらないようにしたいのにゃ」
私がそう言うと、ギルド長は村のみんなに頭を下げて
「…かたじけない…!!」
と言った。
こうしてベリー村は、肺病の特効薬の原料になるキノコの特産地になった。
…またベリー村の特産品、増えたよ…
後書きにはうちのネコのことや自分のことを書いてますが、時々「○○死す!!デュエル・スタンバイ★」とかの予告を書いてみたくなることがあります。…誰も死にませんけどw←




