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星を超えて世界を変えた日~星が導くのは、希望か、それとも終焉か。~  作者: 廻野 久彩
第5章 星を蝕む座標

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沈黙の記憶たち4:レオン=グランヴェール

夜の帳が降りて、焚き火の残り火が、かすかに明滅している。仲間たちが順に語った過去の記憶も、今は静かに夜に沈んでいた。


レオンはただ、火を見つめて、思い出していた。


誰かのために剣を振るう。その意味を、あの頃の自分は、まだ知らなかったのかもしれない。


「剣士としての資質は申し分ない。だが、お前のその性格では──」


かつての上官の声が、耳の奥にこだまする。


王国騎士団。


その制服に袖を通したとき、自分は“誇り”を得たと思っていた。星神を奉じ、民を護る。その理想のための剣だと信じていた。


だが、現実は違った。命令に従うことが正義だった。それが、どれほど理不尽であっても。


「民を見捨てて、撤退せよ」

「魔力障壁の外にいる者は、既に切り捨て対象だ」


そのたびに、自分は命令を破った。剣を振るい、助けに走った。


「お前は間違っていない」


そう言ってくれる仲間もいた。けれど、星神の名を掲げる組織にとって、それは“異端”だった。


──そして、最後の日。


あの玉座の間に、彼女の姿はなかった。


「星神教会代表、セシリア=ルクシア殿は療養中のため、本裁定には欠席となる」


その声を聞いた瞬間──確かに、胸の奥が揺れた。驚く者はいなかった。ただ、自分だけが、その不在に目を伏せた。


(セシリア……)


期待はしていなかった──はずだった。けれど、ほんの少しでも、彼女が何かを言ってくれるかもしれないと。そんな甘さが、自分の中に残っていたことに気づいてしまった。


それが、何よりも堪えた。



焚き火の灯が、ゆらゆらと揺れている。


星は静かだった。その沈黙に、どこか、似ていると思った。


今、彼女はどこにいるのだろう。王都のどこかで、空を見上げているのだろうか。


それとも──


(どうか、笑っていてくれ。あの頃みたいに)


あのやわらかな微笑みを、もう一度見ることができたなら。


声に出すことはなかった。けれど、祈るようにそう思った。どこかで、まだ──あの光を失っていないことを。


火がはぜた音に、思考が途切れる。


気づけば、仲間たちは皆、眠りについていた。その寝顔をひとつひとつ見渡し、レオンはゆっくりと目を閉じた。


(今は、信じている。この剣を──この仲間を)


風がそっと吹き抜け、夜の静寂が幕を下ろす。沈黙の記憶は、今、静かに次の朝を待っていた。

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