表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星を超えて世界を変えた日~星が導くのは、希望か、それとも終焉か。~  作者: 廻野 久彩
第5章 星を蝕む座標

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/91

名もなき少女3:閉ざされた導

少女は、遠くの木陰に立っていた。見下ろすその瞳は、いつもと変わらぬはずの淡桃の光を湛えているのに、なぜか微かに揺れている。


「やっぱり、みんな、来たのね」


彼女の横で、シェルムが静かに羽を鳴らす。


「フラムは、あくまで警戒のための召喚。けれど……主の心は、揺れている」


「……そんなことない」


(違う……でも、どうして?)

(わたしは、ただ……誰かに、“名を与えたかった”のかもしれない)

(誰にも与えられなかったから。だから、今度は──わたしが)


「主は、気づいている。“あの者”は、過去の誰かに似ていると」


少女の指先が微かに震える。


「なぜ、わたしを追うの……?なぜ、“あんな目”で見るの……」


誰にも届かぬ問いを、風だけがさらっていった。



「気をつけろ。今、空間が……揺れた」


レオンの声に、全員が足を止める。


周囲の森が、どこか違って見えた。空気の密度が変わったように、音が籠もり、風が途絶えている。


「結界、ですね」


ミリアが即座に呟いた。


「外界との繋がりを断つ封印系……多重偏差の展開式。簡易なものではありません」


「つまり、本気で隠れるつもりってことか」


カイルが唸る。


木々の間に、微かに浮かぶ淡い文様。封印術式の一端が露出していた。


「この封印、誰が……?」


ミリアが無意識に問うた瞬間、遠くから風が鳴った。それはただの風ではない。明確な“警告”としての風。鋭く、冷たく、意志を持って吹き抜けた。


あの隼。少女が連れていた召喚獣の姿が、無意識に脳裏をよぎった。


「来るぞ」


咄嗟に身構えたその前方、空間が捻れるように歪んだ。次の瞬間、裂け目から溢れるように現れたのは──


咆哮と共に、紅蓮が森を焼いた。獅子の姿をした獣。燐光を帯びた鬣が翻り、焔の印が空間に刻まれる。


「この魔力……あの紫の髪の少女と、同じ系統……」


「……!?さっきの隼とは、別の召喚獣……?」



少女は、そっと手を伸ばした。

その先に立つ獣へ向けて、ためらいがちに言葉を紡ぐ。


「……じゃあ、君の名は“フラム”。応えて。わたしの声に──」


獣は、その問いに応えるかのように、ただ咆哮と共に躍りかかった。



地を砕くほどの加速、熱波と斬撃の交錯。

レオンは即座に剣を構え、ライナとカイルが連携して側面を取る。


「ライナ、前に!カイル、右へ──」


「わかった!」


「任せろ!」


刹那の連携。風を裂く音、炎を切り裂く爪撃。だが──その獅子の姿をした召喚獣、フラムは、ただの“敵”ではなかった。


「様子がおかしい……攻撃が、まるで俺たちを試しているみたいだ」


レオンが低く呟く。


「……君が、何を恐れているのかは知らない。だが──お前が一人で閉じこもるなら、俺は、俺たちは、扉を叩き続けるだけだ!」


──バァン!


封印結界が、音を立てて砕けた。光の破片が舞い、視界が一気に開けていく。


あの淡桃の眼が、確かにそれを見ていた。


ミリアは眉をひそめた。


「この魔力波……構造が……まさか、これ……星神印の……?」


言いかけて、口をつぐむ。

けれど、その揺らぎは確かに、何かを“思い出させる”ものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ