動物の鳴き声
――キャウ…キャウ……。
「?」
微かに動物の鳴き声が聞こえる…? しかも小動物が鳴いているように聞こえるのだ。
今の時期は寒さが厳しく、ほとんどの動物は春が訪れるまで深い眠りについている。そうすると、この時期に活動している動物はだいぶ限られてくるが…思い浮かぶのは狼やキツネ、オコジョや野ウサギぐらいだろうか。あと魔物とか?
プルプルプル…ガクガクガク…
「……」
最後の選択肢は出来れば考えたくなかった!
けど下界よりも数は少ないとはいえ、この山岳地帯にも魔物は生息している。ここだっていつもなら立ち入りを禁止で絶対に人が足を踏み入らない洞窟だ。そのことを考えても可能性はかなり高いかもしれない。
ちなみに魔物とは、負の感情が集まりできる瘴気の吹き溜まりより生まれる異形の存在だ。
瘴気の吹き溜まりは怒りや憎しみなどの負の感情が多い場所にできると言われており、野生動物などが瘴気に触れると狂暴化し魔物に変化するといわれている。魔物は命ある生物を襲う危険な存在。ある程度弱い魔物であれば爪や牙などの野生動物と同じような直接的な攻撃をしてくるが、強くなるにつれ中には攻撃魔法も操れる危険な個体も存在する。どちらにしろ野生動物よりも注意が必要だ。
この山岳地帯には主に単独行動する魔物しかいないようで、一族でも腕っぷしがあり攻撃魔法が扱えるものであれば数人がかりで討伐することが可能。
ただ下界では、単独行動をする魔物だけでなく群れで行動し、なかには頻繁に村を襲う魔物もいるため、冒険者ギルドや国の騎士団などが討伐にあたることもあるらしい。下界はかなり大変なようだ。
そんなことを考えていたせいだろうか。シュナはだんだんと怖気づいてくる。
もしかしたらただの気のせいで、風の音が洞窟に反響しそう聞こえるだけかもしれない。やっぱり気のせいなんじゃないかと、自分を無理やり納得させていると、
――キャウ……キャウ…。
またあの鳴き声が聞こえてきたのだ。
どうやら気のせいではないようだ。今度は、はっきりと痛みを必死に堪えるような悲痛な鳴き声が聞こえてくる。
やっぱり放ってなんか置けない。見て見ぬ振りなんかやっぱりできないよ…。
両親や弟のレイ。一族のみんなからも役立たずと言われ、手さえ差し伸べてもらえなかった…落ちこぼれの自分。
弱い存在だから…役立たずだからって助けてもらえないなんてそんなのあんまりだよ。僕はそんな人間にはなりたくはない! 声の正体が魔物だったら、その時はそのときだ!
シュナは腹をくくると洞窟の中にある祭壇。太古の神を祀る祭壇の間からでる決意をしたのだ。




