食事の準備
久しぶりに焚き火で身体を温めるとホッとする。
力強いけど優しい炎。全体的には橙色だけど、たまに緋色を織り込んだ焚き火は、程よい大きさで燃え続けていた。
僕は念のため、祭壇の間と洞窟の内部を行き来している小さな穴を塞ぐことにする。具体的には煙の通り道にならないように、手頃な石と細かい隙間はぼろ切れで塞いだのだ。
洞窟の奥は、まだなにが棲んでいるかもわからない未知の領域。もしかすると、人の気配を嗅ぎつけて魔物が寄ってくるかもしれない。そのための僕の出来る限りの対策を施したのだ。
そうすると煙は自然と洞窟の外の世界へ。今日も雪が舞うミケーネ山の雪原へと広がっていく。
村の猟師たちは洞窟の入口付近。この場所でよく夏の間は焚き火をしていたようだ。地には火を使った形跡が見受けられる。もちろん、僕も同じ場所で焚き火をしている。
この山は夏でも夜は冷え込むと聞いていたし、ここに泊まることもあったのだろう。この洞窟を猟師たちが使っていたということは、少なくとも夏の間は魔物が外からはやってこないのだと思う。たぶん…。
でも、最低限の警戒はしておいたほうがいいのかもしれないな。何が起こるかわからないし…幸いここからは見晴らしが良く、外の雪原が見渡せる。もし異変があればすぐにでも穴を通って祭壇の間に戻ればいい。
そんなことをぼんやりと考えていると、パチパチと火がはぜる音と共に香ばしい匂いが漂ってきた。
――あ! そろそろ焼けたみたいだ。頃合いかな。
僕は手袋をすると、火の傍に刺してある小枝を引き抜いたのだ。
「キャウ、キャウ!」
僕の傍らではオニキスがお行儀よくお座りをしていた。そして今か今かと目を輝かせ、ふわふわの灰色の尻尾をぶんぶん振っている。
シュナの持つ小枝には、大きな丸い団子が三つ刺さっていた。こんがりとキツネ色に焼け、香ばしい匂いが辺りに漂っていたのである。




