温かい食事
僕が握っている丈夫な小枝には、大きめの団子が三つ刺さっている。
あらためて見ると…さすがにちょっと大きく作りすぎたのかもしれない。でも、思ったよりも上手く焼けてみたいだし香ばしい匂いも漂っている。まあ、大丈夫だろう。
本当はもっと小さく平らにして、枝にくっつけるようして焼くのがこの地方の伝統的な料理だ。けど…道具が限られているし、これはしかたがないということしよう。
この団子の作り方は結構簡単だ。
まずお湯で茹でたジャガイモを滑らかになるまでスリ潰し、柔らかな小麦で作った粉を少し入れよく練りこむ。アクセントに同じくお湯で茹でた雑穀やソバの実を少し鍋から取りだし、すり潰したジャガイモと混ぜたら、団子状に丸めて枝に刺していく。そして、焚き火の傍に立てかけこんがり焼きあがったら出来上がりだ。材料はオニキスが食べていた保存食用の小魚、その貯蔵庫にあった物を拝借している。
僕は丁寧に枝からジャガイモ団子を引き抜くと、木のお皿の中に入れておく。もちろんオニキスと分けて食べるためだ。
そしてもう一品。どうやら鍋の中でぐつぐつと煮立った汁物も良さそうだ。
これは、雑穀とソバの実がよく煮た具だくさんスープ。仕上げに塩味として、猪の干し肉を小刀で薄くスライスしながらスープの中に入れてかるくかき混ぜる。これで完成だ。
「もう少し、待っててね。オニキスの分もちゃんと用意するから」
「キャウ!」
オニキスは目を輝かせると尻尾をぶんぶん振っていた。
シュナは優しく微笑むと、ジャガイモ団子をひとつと、ソバの実と雑穀がたっぷり入った干し肉入りのスープを木の深い器に入れるとオニキスの前に並べたのだ。
僕はいつものように、今日ご飯が食べれることに古き神様に感謝する。
ふっと横を見ると、オニキスは耳をぴんと立て僕の方を見ていたのだ。
ねえ、もう食べてもいいかな? とその顔は言っている。
「ちゃんと待っていられるなんて、お前は偉いな」
シュナはふっと笑うとオニキスの頭を優しく撫でる――そして、仲良く同時に食べ始めたのだ。
まずは、ソバの実と雑穀がたっぷり入った干し肉入りの温かいスープから頂く。
一口飲むと、雑穀の程よい食べごたえとソバの実のプチプチした食感。そしてイノシシの干し肉の深い出汁が良くでている。身体も芯からほかほかと温まり、心までほっこりとする味だ。とても美味しい。
次に大きなジャガイモ団子をひとつ、大きな口でぱくりとかぶりつく。ほくほくした食べ応えのあるジャガイモ、外はパリッとしているのに中はとても熱くて、ホクホクを残しつつもモチモチしている。
思ったよりも熱いのでふーふー息を吹きかけ今度は少しづつ食べていると、オニキスもジャガイモ団子が熱かったのか懸命に息を吹きかけ、僕と同じように少しずつ食べていたのだ。これにはちょっと笑ってしまう。
こんなにも楽しい食事は、本当に久しぶりかもしれない。
魔法や占星術の勉強が始まってからは出来の悪い僕は家族から邪険にされ、一人寂しく納屋で食事をするのが常となっていた。
それでも幼い頃、家族と温かい食卓を囲んで笑い合っていた記憶は…僅かだが残っている。それとき以来の温かな食事かもしれない。
結局、最後のひとつになったジャガイモ団子はオニキスと仲良く半分こにして食べることにした。
オニキスも喜んでくれたみたいだし、久しぶりの温かで楽しい食事が出来たことに僕は心からオニキスに感謝したのだ。
――今日もささやかだけど、幸せな一日をありがとう。




