現在地にて
――あれから、数日が経ったのだろうか…。
冬至の日から洞窟内で暮しているため、時間の感覚が曖昧ではっきりとしない。
外に出れば、少しは季節の流れを掴むことができるだろうが…どうしたものかとシュナは考え込んでいた。
祭壇のある石造りの床から少し離れたところにシュナは座っていた。彼が座っている砂地の地面には、木の棒でなぞって描いたこの洞窟の簡単な見取り図。記憶をたよりに今まで行き来した場所を簡単に描いてみたのだ。
当面の目標は洞窟の構造をできるだけ正確に把握すること。どこにどんな危険があるのか? またここには魔物が住み着いているのか? もし…住み着いていた場合、戦うすべのないシュナたちは速やかに移動、引っ越しをしなければいけない…。
けどそのためには安全な場所の確保…それとできれば外の様子も知りたいので、ここから一番近い洞窟の出口も見つけたいが、はたして上手くいくのだろうか。
難しい顔をしているシュナのすぐ傍では、子犬のオニキスがもふもふの長い尻尾を揺らしながら、シュナにぴったりと寄り添っていた。スリスリと灰色のもふもふの体を寄せて幸せそうにくつろいでいる。
たまにシュナの視界にさり気なく入ると、チラチラッと様子を伺いウルウルした目で見つめてくるのだ。
これは…シュナにかまって! とオニキスがさり気ないアピールをしている最中なのだ。
シュナは空いている方の手でオニキスのもふもふした背中をゆっくりと撫でる。尻尾に近い背中側もちょっとがしがし撫でると耳が垂れて気持ちよさそうに目を細めていた。ここは毛づくろいができないため気持ちがいいのだろう。
そうやってオニキスを撫でていると、不思議なことにネガティブな感情でいっぱいになりかけていた頭がふっと楽になっていた。そのことにシュナは気づく。これが世間で言うところのもふもふセラピーなのかもしれないと妙に納得してしまうのだ。
子犬のオニキスは寂しがり屋で、僕の姿が見えなくなると怪我をした脚を引きずりながらでも…キュウ、キュウと鳴いて探し回るのだ。ちょっと祭壇の間からの外に出ていただけのときもそうだった…鳴き声に気づき僕が慌てて姿を見せると、尻尾を振りながら嬉しそうに駆け寄ってくるのだ。なんか親鳥の後を追いかける雛鳥みたいだ。
もちろん眠るときも二人で身体を寄せ合い眠りにつくのが習慣となっていた。もふもふした灰色の毛は柔らくて僕も心が落ち着くのだ。
――きっと僕一人だったらとっくの昔に心が折れていただろう。
子犬のオニキスが傍にいてくれて本当に良かったと心から神様に感謝していた。
ちなみにオニキスの怪我だが、そろそろ薬をつけなくても大丈夫なぐらいまで回復してきている。僕の腕も怪我もちょっと痣になっているが薬をつけなくても問題はない。
僕は頬を両手で軽く叩くと気持ちを切り替えることにする。食事をして眠ったら、明日はオニキスを連れて洞窟内の探索しよう。焦ることはない。できることを少しずつやっていけばいいのだ。
そのことを小さなオニキスに教えられたようなそんな気がしたのだ。




