〜 日本の夏・悲劇の夏 ① 〜
〜 日本の夏・悲劇の夏 ① 〜
ソヒョンのお願いで女装する事になってしまった僕……
絵梨香や島本さんに事情を話して相談すると何故か2人とも異常に乗る気で全面協力を約束してくれた。
そして、僕の家のリビングには絵梨香と島本さん……そして、アッちゃんがいる。
何故が3人もやけにノリノリでテンションが異様に高いのが見て取れる。
「皆様、既に事情はご存知でしょう」
「これから、私の兄の改造に取りかかりたいと思います」
絵梨香がイベントの司会者のようである。
アッちゃんは大きな旅行用のトランクを2つも持ち込んでいる。
トランクを開けるといろんなアイテムが詰まっているのがわかる。
「皆様、どんなコスがお兄さんにお似合いだとお考えですか?」
アッちゃんは絵梨香と島本さんに意見を求める。
「そうね……和泉君は⚪︎△⚪︎⚪︎の×××よっ!絶対っ!」
「今は、私の中ではこれ以外はありえないのよっ!」
島本さんは鼻息を荒くして力説する。
「そうね……それもいい……」
「でもっ!兄さんは⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎ソフトの△△っ!」
「アレもいいっ!」
絵梨香が拳を握りしめて力説する。
この前に何も知らずにコスプレしたエ⚪︎ゲームの主人公の百合娘である。
「なるほど……御二方のご意見はごもっとも……しかしっ!」
「お兄さんにはこれっ!」
アッちゃんはそう言うとトランクの中から新作コスチュームを取り出して高らかに掲げる。
「おおっ!これはっ!」
アッちゃんが自らの頭上に掲げたコスチュームを見て絵梨香と島本さんが唸り声を上げる。
リビングには4人しかいないのに何故か空気が熱く感じられる。
オタク女子の熱量はハンパではないのである。
アッちゃんが自らの頭上に掲げたコスチュームは映画化された⚪︎△⚪︎⚪︎の×××の新コスチュームである。
映画のプロモーション映像を見てアッちゃんが手作りした物である。
「あの〜皆さん……何か勘違いしていませんか?」
「今回はコスプレじゃないんですけど……」
僕は、当初の目的を完全に忘れている絵梨香や島本さん、アッちゃんに具申するのだが……
「あ、ああ、あの話ですか?」
「そんなのは後で適当になんとかしますから……」
アッちゃんはどうでもいいように言うと新作コスチュームを手にして僕に詰め寄る。
「さあっ!お兄さんっ!」
「お着替えの時間ですよっ!」
鼻息を荒くしたアッちゃんがそう言うと絵梨香と島本さんが僕を取り押さえる。
3人の完璧な連携に僕はアッサリと取り押さえられ引っ剥がされて新作コスチュームに着替えさせられる。
いつもながらアッちゃんの新作コスチュームはやたらとクオリティが高い。
こんな所にも日本のオーバークオリティの一端が垣間見えるのであった。
「……」
新作コスチュームを着た僕に3人は茫然としている。
あまりに良く似合うからである。
それもそのはずで涼音本人が僕をモデルにして描き下ろしたキャラクターコスチュームだなので当然である。
正真正銘の僕専用のコスチュームなのである。
「映画の公開前なのに……」
「こんなの勝手に作ってもいいんですか?」
新作コスチュームを着た僕がアッちゃんを問いただすのだが……
「あ、大丈夫です」
「涼音さんと長澤の了承は貰ってるから……」
僕の問いかけに島本さんが何事も無かったかのように平然と答える。
「……そう……ですか……」
原作者とスポンサー企業の責任者の了承があるので返す言葉もない僕であった。
そうしていると島本さんが高価そうなデジタルカメラをバックから取り出し撮影を始める。
「ちょっと島本さん……無断撮影は……」
僕がそう言うと島本さんはニッコリと笑う。
「これも了承してもらってるから……」
「あ、和泉君……もっと笑って……」
カメラを構えた島本さんが僕に指示を出してくる。
どうやら完全に始めから計画的犯行である事がわかる。
いつの間にか我が家はコスプレ撮影会場となっている。
元から涼音の描き下ろした新作映画の舞台設定資料は以前に見学した我が家がモデルになっているのである。
その後も何回もお着替えさせられる事になるのであった。
コスプレ撮影は3時間近く続き……当初の目的のお出かけ用の女装はほんの30分足らずでお終いであった。
ソヒョン家族と会う日にはアッちゃんが着付けに来てくれるそうである。
後でなんかお礼をしようと考えている。
そうして、なんだかんだで撮影が終わる頃には2時過ぎになっていた。
「お腹空かない?」
絵梨香がそう言うと全員が頷く。
朝の10時過ぎからずっとぶっ通しでお着替え&撮影だったので何も食べていないのである。
「兄さん、何処かいい所ないかな……」
僕に絵梨香が尋ねてくる。
「う〜ん、今日は鰻屋さんは定休日だし……」
「そうだなぁ……これからだと……」
「あ、あそこなら……」
僕は携帯電話を取り出すと電話をかける。
「あっ、もしもし……刀匠の和泉ですが……」
「時間は3時前ぐらいになりますが……」
「あっ、ハイ、4人です……」
「よろしくお願いします……」
僕は通話を終えると絵梨香達に説明をする。
「町営の温泉施設の予約が取れたよ……」
「時間は3時から5時までの2時間だけど……」
「温泉に入ってご飯食べるぐらいの時間はあると思う」
以前に中野さん家族と会ったり、カルロスさんとリンダをもてなした公営の温泉施設である。
「これからタクシー呼ぶから……」
「ここからだと20分程かかるから丁度いいぐらいの時間になるよ」
そう言うと僕はいつものタクシー会社に連絡を入れる。
4人なので皆2台のタクシーに分乗する事になる。
10分ほどするとタクシーが家の前でクラクションを鳴らす。
僕達はタクシーに分乗して温泉へと向かうのであった。
〜 日本の夏・悲劇の夏 ① 〜
終わり




