〜 流れ行く日々 ドイツ編 番外④ 〜
〜 流れ行く日々 ドイツ編 番外④ 〜
「うっ……」
僕は窓から差し込む朝日で目を覚ました。
ベッドの上で大きな伸びをする。
隣ではメリッサがスヤスヤと寝息を立てながら寝ている。
"今、何時なのかな?"
ベッドから起き上がるとやや前屈みの姿勢でテーブルのに置いてある携帯電話で時間を確認する。
何気なくバッテリー残量を確認すると76%であった。
大容量のモバイルバッテリーを持っているのでそれに繋いで充電する。
"7時過ぎか……"
いつもより1時間ほど遅いが仕方の無い事である。
"少し寒いな……"
ズボンを履いてから薪ストーブの中を覗くとまだ少し炭火が残っている。
ストーブの火扉を開いて火鉢で火の残っている炭をほぐして薪を入れる。
暫くすると薪が燃え始める。
鳥の囀りが聞こえてくる。
風が吹いているのか窓ガラスのガラスがカタカタと揺れる音、森の木々がざわめく音も聞こえる。
山荘のドアを開けると爽やかな朝の日差しが僕の目を眩ませる。
そんなに強くは無いが風が吹いている。
鍋に湧き水を入れてお湯を沸かしているとメリッサが目を覚ます。
「ぁぁ……おはよう……」
いつもの通りのボサボサの髪の毛に腫れぼったい目をしたメリッサがベッドから起きてくる。
これもまた、いつも通りのノーブラにパンツ一丁の姿である。
「あっ!うーーっ!」
ベッドから降りたメリッサは大きな伸びをする。
「あ〜よく寝た……」
なんだか今日のメリッサはいつもより爽快感があり肌艶も良いような気がする。
「あ、おはようメリッサ……」
「何か作るね……」
フライパンで真空パックのベーコンを焼き、昨日の残りのライ麦パンをスライスしてチーズと焼いたベーコンを乗せてトマトを輪切りにしてチューブマスタードをかけて挟む。
コーヒーを淹れて出来上がりである。
「ねぇ、カネツグ、ここにはどのくらいいるつもりなの?」
2人で朝食を食べているとメリッサが不意に尋ねてくる。
「えっと……1週間で予約してあるけど……」
「別の場所に変わってもいいよ」
きっとメリッサは電気もガスも水道もなくる不便なので嫌になっているのだろう。
「カネツグはいつ頃、日本に帰るの?」
メリッサは何か考えながら僕に尋ねてくる。
「帰りの飛行機はまだ予約していないから……」
「これと言って決められた日はないよ」
「でも、7月の初め頃には帰らないと……」
「長くても後3週間ぐらいかな」
僕はパンを食べながら答える。
「後……3週間か……」
メリッサは呟くと何か考えている。
「ねぇ、カネツグ、もしもよかったら……」
「ここで残りの3週間を過ごさない……」
思いもよらないメリッサの提案に僕は唖然とする。
「いいの?何にも無いよ、ここ……」
てっきり嫌気がさしていると思っていた僕は吃驚する。
「やっぱり、私は田舎娘なのよね……」
「こういった場所の方がいい見たい……」
メリッサはそう言うとパンを食べ始める。
「いいよ……僕も田舎者だから……」
僕が提案を快く受け入れるとメリッサは微笑んだ。
僕のこの言葉に嘘はない、実際に僕もこの静かな環境がとても気に入っているのである。
元からフランス人のバカンスは我々日本人の旅行とは違っている。
普段生活を離れて心身ともにリフレッシュするのが目的である。
なので、1箇所に長期間滞在してのんびりと過ごす時間を大切にするのである。
更にバカンス中はお金を極力使わない、何故なら稼いでいないから節約するのである。
旅行の時ぐらいはパッと使ってしまう日本人とは全く考え方が違う。
よく観光地なんかではフランス人はケチだとか言われるのもこの考え方のためである。
メリッサもフランス人である。
観光地を効率よく回る僕の考え方は間違いだったのだと今更ながら気付いた僕であった。
メリッサは誰もいないこの静かな環境でのんびりと過ごしたいのである。
多少の不便さなど最初から気にもしていないのだと今更ながら気付いた僕であったのだが……
まるで水を得た魚のように生き生きとして肌艶も良いメリッサを見ていると……
"……3週間か……僕の……"
"……体力(精力)……持つかな……"
昨日の夜の事を考えると自分の体力に大きな不安を覚える僕であった。
ただ、この3週間の山荘暮らしはメリッサにとっても僕にとっても非常に良い時間となった事は確かである。
〜 流れ行く日々 ドイツ編 番外④ 〜
終わり




