↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/77

エレベーターの記憶がない

「本当にやる気?」


「ああ。俺も頭にきてるんだよ。父や母に千花、そしておじいちゃんとの思い出の場所まで奪われて」


「先輩!わたしも遠慮なく協力させてもらいますね」


 さすが小悪魔、最初から遠慮とは無縁なくせに超悪い顔をしてやがる。

 今回の作戦がよほどお気に召したようだ。


「じゃあ配置についてくれ。マンションの管理会社には話を通してあるから心配するな」


「「了解!!」」


 みんなが自分の持ち場へと向かっていった。

 そして防犯カメラが映し出しているたくさんのモニター画面を確認した。



 さあここからが能力を最大限に活かす時だ。



 俺は震える手でゆっくりとスイッチをオンにする。


『ピープーピープー!火災が発生しました。速やかに避難してください。ピープーピープー!火災が発生しました。速やかに避難してください』


 マンション内にあるスピーカーからは大きな警告音とともに避難を促すアナウンスが流れる。

 そう……今回の作戦はあらかじめ白鳥グループの協力を得てマンションの管理会社に火災報知機の異常が見られるので点検と同時に避難訓練を行うといった手はずになっているのだ。

 

「これは訓練です。これは訓練です。ただちに避難場所にお集まりください。これは訓練です。これは訓練です。ただちに避難場所にお集まりください」


 ナツ姉がマンション全体にアナウンスを流す。

 当初の案ではゲリラ的に避難訓練を行うはずだったが、さすがに内容が内容なだけに真面目に行う事にした。

 実際にこのマンションの住人である俺は年に2回行われるこの警告音を聞いていたのだ。

 ただしマンションの住人全てが参加するわけではない。

 マンションの5階までが商業施設や会社オフィスになっているのでその部分を中心とした避難訓練なのだ。

 もちろん拉致された千花をのこのこ避難させるはずはないが狙いはそこではない。


「さあ出てこい悪党ども」


 俺はモニターに食い入るように目を向ける。

 モニターは全て録画されてるけど必ずヒントがあるはずだ。


 かったるそうにしている人々がちらほらと出てくる。

 最初から避難訓練だと分かっていれば面倒だと思うのが人間だ。

 しかも大抵のビルでは会社の場合最低一人は避難訓練に参加しなければならない。 

 そんな貧乏くじを引いてしまった社員がふてくされてしまうのも仕方のない事だろう。


「あっ……」


 モニターを確認しているとひとりの男に注目する。

 たくさんの人の中からなぜその男を見つけられたか?

 それは簡単な事だった。


 このマンションの商業施設には薬局や病院は入っていない。

 それなのにただ一人だけ白衣を着ていれば目立つのも当然だった。

 僕は急いで無線で連絡をする。


「小悪魔の待機してる近くに白衣の男がいる。そいつの戻る場所を確認してくれ」


「了解しました!……ところでその小悪魔って何ですか?」


 顔を見なくても聞こえてくるその声は当然不満に満ち溢れていた。

 そんな話をしている場合ではないけど俺のせいだから仕方がない。


「小悪魔的に憎らしいくらいかわいいってことだよ」


 自分でも何を言ってるのかさっぱりだ。

 

「ふーん……なんかそれいいですね!では作戦続行します」


 え?そんなんでいいのかよ。

 いまいちこいつの感性が分からないけど本人が気に入ったのなら良しとしよう。


「緊急事態発生ですわ!ま、まさかあれは……」


 小悪魔とのやり取りをしていると白鳥さんから緊迫した声で報告が入ってきた。


「白鳥さん!なにがあった?もし危険ならすぐに撤退してください!」


「お、お、大沢……」


「大沢?大沢の研究所が判明―――」


「ブタです……ブタがいます……」


 白鳥さんには似合わない言葉を聞いて一瞬固まってしまったがはっと我に返った。


「アイツが……大沢(弟)のブタがそこにいるのか!」


「はい!あの気持ち悪さは本人で間違いないと思われます!」


 ブタが相手だと白鳥さんといえど容赦ない。


「すぐにそちらへ向かうので、白鳥さんは安全を確保しつつ見張っててくれ」


「わかりました」


 なんで、なんであいつがいるんだよ……

 千花の存在が大きく関係してるのは明らかだ。

 クリスマス会で見たあの映像はやはりブタだったのだ。

 罪を償っているはずのアイツがなぜ?


 俺は急いで1本の電話をかけてから白鳥さんの元へと向かった。


 * * * *


「ここで間違いないんだね?」


「はい。たしかにこの扉の向うへと行きました」


 白鳥さんと合流しブタがどこへ向かったか報告を受けていた。


「そっちの様子は?」


「先輩の予想通り白衣の男をエレベーターで見失ってしまいました」


 ……やはりそうか。

 

「メモリー様少し聞いてもよろしいですか?エレベーターで消えたとなると商業施設のある階層ではなく最上階などのペントハウス的な所に隠れ家があるのでしょうか?」


「きっとその逆だと思う。このマンションは地下が駐車場になっててエレベーターでも行けるようになってるんだけど、仮に駐車場の下にも空間があるとしたら?」


「ま、まさか……」


 最初からおかしいと思っていた。

 白鳥さんのおじいさんに情報をもらって調べた会社は公共料金を使用してる気配がほとんどなかったのだ。

 会社となればオフィス機器で膨大な電気代がかかってもおかしくない。

 だとすればゴーストオフィスの可能性が高い。


 もともと今回の避難訓練の狙いはエレベーターだ。


 通常避難訓練といえば非常階段を使用するのが当たり前なのに、白衣の男はエレベーターからやって来た。

 しかもモニターを見張っていた俺の目に忽然と現れたのだ。

 記憶を振り返っても誰も乗っていなかったはずのエレベーターに。

 

「では大沢はなぜこの扉を使ったのでしょうか?」


「きっと研究施設とは別の部屋があるのかもしれない……たとえばブタが捕まった理由でもあるわいせつ行為の撮影現場とか……」


「そ、それじゃ千花さんが……」


 千花……

 もう残された時間はわずかなのかもしれない。

 


 

読んでいただきありがとうございます!


続きが気になる方は「ブックマーク、評価」をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。