プロポーズした記憶がない
「やっぱりダメです。通常の管理キーでは地下に行けないようです」
「扉の方も電子ロックがかかってる。番号が分からないと中には入れそうにないな」
これで八方塞がりだ。
両親失踪の手掛かりと千花の救出が同時に可能だと思われたものの現実はそう甘くはない。
それでも場所を突き止められただけで収穫だ。
「千花先輩大丈夫ですかね?相手がブタだとなんでもありというか……」
そうなのだ。
ブタはやたらと千花に固執している。
入学当初から真っ先に芸能事務所にスカウトしたからだけではない。
浩一の後ろだてをした生徒会長選挙。
あの時も助けているようで実際には浩一をピエロにしたてあげていた。それはなぜか?
これは俺の予測でしかないけど、一時的に『千花が浩一の彼女のフリ』をした事に対する報復だったのではないかと思う。
形はどうあれブタは千花に好意を寄せているはずだ。
選挙の時は最初から俺もしくは白鳥陣営に勝たせようと思っていた節がある。
結局白鳥さんは立候補しなかったが。
そしてここで1本の連絡が携帯電話に入ってくる。
「準備が出来ました。始めてもよろしいでしょうか?時間は10秒間となります」
「よろしくお願いします」
間に合ったか。
タイミングが合えば無駄になってしまうところだった。
ガチャ!?
「え!?せ、先輩、なぜドアが開いたんです?」
驚きの声を上げる小悪魔に俺は応える。
「いまは急いでるから歩きながら説明してやる。千花を助けに行くぞ」
「は、はい」
重く閉ざされていた扉を開き、地下へと続く階段を走り下りていく。
この避難訓練を実行するにあたり僕は1本の電話をかけておいた。
商業施設を併設しているこのビルの緊急時に、自家発電へ切り替わるか点検を行うと。
そして電力会社からの電気供給を一時的にストップさせたのだ。
すると……どうなるか?
電力供給が断たれた一瞬の間だけ、停電と同じ状況になったのだ。
オートロックの扉は電力を失い自家発電が起動するまでのほんの数秒、ただの扉と化していた。
「先輩はやっぱり天才です!!」
「推理小説を書くためたくさんの本を読んでいるからね。これも完全記憶能力のおかげさ」
「さすがチート能力持ちですね。特別な能力があるなんて羨ましいです」
……本当にそうだろうか?
この能力は確かに便利かもしれない。
そのおかげで有名小説家になれたのも事実だ。
だけど……
能力があるおかげで両親と離ればなれに暮らすことになり攫われてしまった。
しかも千花まで巻き込んで。
「良いことばかりじゃないけどな」
「でしたね……軽はずみな発言してごめんなさい」
「気にするな」
こう見えて察しがいい小悪魔は、僕の考えをすぐに理解したのか謝罪の言葉を口にしてきた。
性根はいいやつなのだ。
「はい。じゃあ付き合ってください」
「……」
「じょ、冗談ですよ。こんな時に期待するわけないじゃないですか」
目を合わせようとせずに伏し目がちな小悪魔。
……前言撤回。ウザい。
そうこうしてる間に階段を一番下まで降りると鉄の扉が現れた。
どうやら今回は暗証番号などはいらないようだ。
そっとドアを少しだけ開けると、何やら声が聞こえてくる。
「なんでこんな狭いところに彼女を閉じ込めてるんだ!」
「い、いえ、命令された通り監禁―――」
「うるさい口答えをするな!俺は彼女を逃がすなと言ったが監禁しろとは言ってない」
「も、申し訳ありません!」
聴力の完全記憶能力を使わなくても分かる。
ブタの声だ。
なぜかは分からないけど奴はこの町に戻ってる。
「こ、小松さんこんなところに閉じ込めて悪い。大きな部屋に移すから許してくれ」
「あんたバカなの?誘拐されてるのに部屋の大きさなんか関係ないわ。早く家に帰しなさいよ!」
「で、でもこれはお兄ちゃんの指示だから自由にしてあげれないんだ。それに僕は……き、君のことが好きだから付き合って欲しい」
……なんだこれ?
千花は誘拐されてるんだよな?
この狭い地下室で愛の告白だと?
アイツ……やっぱりバカなのか?
「うーん……どうしようかな?」
「「えっ?」」
僕だけじゃなく小悪魔も驚いたのか同時に声を上げてしまった。
しかし恋は盲目。
目の前にいる千花のことで精一杯なのだろう気付かれていない。
でも……
なぜ千花はすぐに断らないんだろうか?
まさか二人が付き合うなんてことが……あるはずない。
「な、何でもするから!」
「それならメモリーの両親がどこにいるか教えてくれたら返事をしてあげる」
「あ、アイツは関係ないだろ!」
「幼馴染だから結婚式には出てもらうつもりなんだけど……嫌ならいいのよ」
「け、結婚!?わ、わかった!アイツの両親ならこの隣りの部屋にある研究室で働かせてる。だから付き合って……いや、結婚してくれ!」
「それは無理な話だ。千花は僕と結婚するんだから」
「なんでお前がここにいるんだ!」
「それはこっちのセリフだ」
「メモリー!!」
僕を捕えようとする大沢の人間を氷河流護身術ですぐに落としブタと対面する。
これが最後の決戦だ!!
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