表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/108

■第3章 第2節:素材採取の遠征(中)

村の外である程度の素材を集めてから、二人は家へ戻った。


朝よりも日が高くなっている。村の中にも少しずつ人の動きが出てきていたが、騒がしさはない。相変わらず静かなままだ。


家の前に立ち、シャーロットはポーチを軽く叩く。


「……こんな感じかな」


量としては十分とは言えないが、何もない状態よりはずっといい。とりあえず試すには足りている。


扉を開けて中に入る。


昨日軽く掃除したおかげで、最低限は使える状態になっている。机の上には何もなく、棚も空に近い。まだ“場所”でしかないが、それでも少しずつ整ってきている感覚があった。


シャーロットは机の上に素材を広げる。


葉の色、形、大きさ。ひとつひとつを軽く確認する。


(これと、これ……かな)


なんとなく組み合わせを考える。


そのときだった。


ふと、棚の奥に何かがあるのに気づく。


「……あれ?」


手を伸ばして取り出す。


それは一冊の本だった。


かなり古い。


表紙は擦り切れていて、角も潰れている。埃もかぶっている。長い間使われていなかったのが分かる状態だった。


シャーロットは軽く埃を払う。


「……本だ」


ぽつりと呟く。


机の上に置いて、ゆっくりと開く。


中の紙は黄ばんでいるが、まだ読める状態だった。文字は少し崩れているが、丁寧に書かれている。


「薬草……?」


最初のページには、簡単な薬草の説明が書かれていた。


見たことのある形もある。さっき外で摘んできたものに似ているものもあった。


「これ、使えるやつだ」


シャーロットは少しだけ身を乗り出す。


ページをめくる。


薬草の特徴、効能、簡単な扱い方。それほど詳しいものではないが、最低限の情報は揃っている。


さらにめくると、今度はポーションの作り方が書かれていた。


「……ほんとにあるんだ」


思わずそう呟く。


簡単な回復ポーションの作り方。材料、手順、火の使い方。かなり基本的なものだが、一通りの流れは書かれている。


シャーロットはしばらくそのページを見ていた。


(こうやって作るんだ)


今までのやり方とは違う。


感覚ではなく、手順として書かれている。


順番、量、時間。


すべて“決まっている”。


「……なるほど」


小さく呟く。


理解はできる。


理屈としては分かる。


だが――


(ちょっと面倒かも)


正直な感想だった。


手順が多い。


細かい。


一つ一つを守る必要がある。


「こういうの、ちゃんとやる人すごいな」


ぽつりと呟く。


クロエが後ろからそれを見ていた。


「基準が明確です」


「うん」


「再現性があります」


「それも分かる」


シャーロットはページを軽く指でなぞる。


「でも、ちょっと遅いかも」


「遅い?」


「うん。これ通りにやると時間かかる」


実際にやったわけではないが、見れば分かる。


火を使って、時間を測って、順番に混ぜる。


丁寧だが、その分時間が必要だ。


「昨日みたいに、その場で作るのは無理そう」


「当然です」


クロエは即答する。


「本来はそのように作るものではありません」


「だよね」


シャーロットは少し笑う。


ページを閉じる。


もう一度開く。


さっき摘んできた葉と見比べる。


「……似てるけど、ちょっと違う」


本に載っているものと、実際に持っているもの。完全に同じではないが、近いものはある。


「これ、代わりに使えるかな」


独り言のように呟く。


クロエは少しだけ考えてから答える。


「推奨はされません」


「でも、やる」


「止めません」


そのやり取りに、シャーロットは軽く笑った。


「ちょっとだけ、試してみる」


本を机に置く。


素材を手元に集める。


今までの感覚と、本の知識。


両方を頭の中で並べる。


(どっちでいくか)


少しだけ考える。


完全に本通りにやるか。


それとも、いつも通りの感覚でやるか。


「……混ぜるか」


小さく呟く。


それが一番しっくりきた。


本の流れをベースにしつつ、細かい部分は感覚で調整する。


どちらかに寄せるのではなく、両方使う。


シャーロットはそう決めた。


「まずは、これ」


一枚の葉を取る。


本の内容を思い出しながら、軽く処理する。


でも、完全には従わない。


自分のやりやすい形に変える。


クロエがそれを見ている。


何も言わない。


ただ、観察している。


シャーロットは手を動かしながら、小さく息を吐く。


(……これ、うまくいくかも)


理由はない。


でも、感覚としてそう思えた。


昨日よりも、少しだけ確信がある。


即席ではない。


でも、完全な手順でもない。


その中間。


それが、今のシャーロットには一番合っている気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ