■第12章 第5節:売上と返済
夕方。
店の扉が閉まる。
「本日はここまででーす」
ミアの声が外に向けて響く。最後の客が帰り、外のざわめきが少し遠のく。
中に残るのは、四人と――静かな達成感。
リナが帳簿を開く。
クロエが横で硬貨をまとめる。
シャーロットは瓶を洗い、次の準備に入っている。
「……今日は多いね」
ミアが覗き込む。
リナが淡々と答える。
「増えてます」
数字をなぞる。
「ストロングの比率が高いです」
クロエが補足する。
「単価上昇により、売上は前日比で増加」
「安定しています」
ミアが目を丸くする。
「そんなに違うの?」
クロエが頷く。
「ライトは回転、ストロングは利益」
短い説明。
シャーロットはそれを聞きながら、手を止めない。
「返そう」
小さく言う。
それだけで意味は通じる。
リナが顔を上げる。
「今日、行きますか」
シャーロットは頷く。
「行こう」
迷いはない。
――
村の外れ。
木の匂いが残る古い作業場。
元大工の老人は、いつものように椅子に座っていた。
「おや」
顔を上げる。
「今日はどうした」
シャーロットが一歩前に出る。
「これ」
小さな袋を差し出す。
中で硬貨が触れる音。
老人がそれを受け取る。
重さを確かめる。
「……多いな」
静かな声。
シャーロットは言う。
「売れたから」
それだけ。
理由としては十分だった。
老人は少しだけ笑う。
「順調か」
シャーロットは頷く。
「うん」
短い返事。
クロエが横から言う。
「収益は安定しています」
「継続可能です」
いつもの調子。
ミアが言う。
「お店、いっぱい来るよ!」
少し誇らしげに。
リナは静かに付け加える。
「外からも増えています」
老人は袋を見て、もう一度頷く。
「……無理はするな」
それだけ言う。
シャーロットは答える。
「してない」
即答。
本当にそう思っている声。
老人はそれ以上は言わない。
袋を横に置く。
「ちゃんと返してるな」
ぽつりと呟く。
シャーロットは何も言わない。
だが、その言葉はきちんと受け取っている。
少しの沈黙。
風が通る音。
ミアが周りを見て言う。
「なんか、前より明るいね」
作業場を見て。
リナも頷く。
「整ってきています」
クロエが言う。
「資金が回っている証拠です」
現実的な言葉。
老人は少しだけ苦笑する。
「そういうことか」
短く。
シャーロットが言う。
「また来る」
それだけ。
老人は頷く。
「待ってる」
簡単なやり取り。
だが、確実に積み重なっている。
――
帰り道。
夕焼けが広がる。
ミアが言う。
「いっぱい返せたね!」
明るい声。
リナが答える。
「予定より早いです」
クロエが補足する。
「このペースであれば、完済時期も前倒し可能です」
シャーロットは少しだけ考える。
「少しずつでいい」
短く言う。
ミアが首を傾げる。
「もっと一気に返さないの?」
シャーロットは答える。
「回すから」
それだけ。
店を回す。
材料を買う。
必要なものを揃える。
その上で返す。
順番は変えない。
リナが小さく頷く。
「その方が安定します」
クロエも同意する。
「最適です」
ミアが笑う。
「難しいね!」
シャーロットは少しだけ口元を緩める。
「そんなに」
小さく。
それだけ。
白花の薬屋は、少しずつ大きくなっている。
だが、やっていることは変わらない。
作る。
売る。
回す。
返す。
その積み重ねだけで、ここまで来ている。
静かに。
確実に。




