■第12章 第3節:冒険者の増加
## ■第12章 第3節:冒険者の増加
数日後。
白花の薬屋の前には、明らかに“列”ができていた。
村人だけではない。
革鎧、鎖帷子、ローブ。装備の種類が混ざる。背丈も、雰囲気も違う人間たちが、順番を待っている。
「……並んでるね」
ミアが扉の隙間から外を見て言う。
「開店前です」
クロエが淡々と返す。
リナが深く息を吸う。
「今日は多いですね」
シャーロットは頷く。
「回そう」
短い言葉。
それで全員が動く。
扉を開ける。
「いらっしゃいませ」
リナの声。
最初の客が入る。すぐに二人目、三人目。
一気に店内の空気が変わる。
「ストロング、体力二つ」
「魔力一本」
「ライトも追加で」
注文が重なる。
リナが受ける。
ミアが受け渡しを補助する。
クロエが在庫と金の流れを管理する。
シャーロットが調合する。
無駄がない。
だが――
「……早いな」
列の後ろで待つ男が呟く。
店内の回転が速い。
長く滞留しない。
「無駄な会話ないしな」
別の男が言う。
効率的。
それが、そのまま評価に繋がる。
店の中では、別の空気も生まれていた。
「今日はライトでいいや」
村人の男が言う。
その隣で、冒険者が言う。
「ストロング三つ」
同じカウンター。
違う選択。
ミアがそれを見て小さく言う。
「使い分けてるね」
リナが頷く。
「用途が違います」
クロエが補足する。
「村民は日常回復、冒険者は戦闘効率重視」
明確な差。
それでも、同じ場所で回っている。
シャーロットは何も言わない。
ただ、必要なものを作る。
その結果として、客が分かれるだけ。
「……助かるわ」
村人の女性がライトを受け取り、笑う。
「これで明日も働ける」
隣で、冒険者がストロングを受け取る。
「これで次潜れる」
同じ“助かる”でも、意味が違う。
それでも、両方満たしている。
列は減らない。
むしろ増えている。
外では、別の会話も聞こえる。
「町でも噂になってるぞ」
「白花の薬屋だろ?」
「効果おかしいって」
小さな声だが、確実に広がっている。
クロエがそれを聞いて言う。
「外部認知、拡大中です」
ミアが少し不安そうに言う。
「大丈夫かな……」
リナが答える。
「回せているうちは大丈夫です」
現実的な判断。
シャーロットが言う。
「増やす」
短く。
それだけ。
だが、その意味は重い。
生産量を増やす。
対応できる人数を増やす。
回し続ける。
それができなければ、崩れる。
「……忙しくなってきたね」
ミアが苦笑する。
「静かに暮らすんじゃなかったっけ」
軽い言葉。
クロエが答える。
「定義の問題です」
いつも通りの調子。
リナが小さく笑う。
シャーロットは何も言わない。
ただ、手を動かす。
天秤に薬草を乗せる。
左右を揃える。
その動きは、変わらない。
だが――
店の外は、確実に変わっている。
人が増える。
声が増える。
金が動く。
白花の薬屋は、村の一部から――
“目的地”になり始めていた。




