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胡散臭い先輩

「だからなんなんだよお前……」



黒川は楽しそうに笑った。



「そういう反応するんだね」



「初対面で名前知ってたら普通だろ」



「それもそうか」



黒川はあっさり頷いた。



「じゃあ改めてよろしく」



「どうも」



「航くん」



「その呼び方やめろ」



「嫌だ」



即答だった。



「なんでだよ」



「なんとなく」



「最悪だな」



横で成瀬が吹き出す。



「相性悪そうだな、お前ら」



「こいつが悪い」



「心外ですね」



成瀬が肩をすくめた。





数分後。



航は結局まだ段ボールを運ばされていた。



「なんでこんなにあるんだよ……」



「頑張れ新人」



成瀬は椅子に座ったまま言う。



「手伝え」



「断る」



「クソ先輩」



「聞こえてるぞ」



黒川が少し笑った。



「成瀬さん、本当に容赦ないですね」



「今さらか」



「今さらですよ」



成瀬が天井を見上げる。



「なんかもう息合ってない?」



「最悪な意味でな」



「否定はしません」



「お前ら仲良くなれそうだな」



「絶対嫌だ」



「それは同感です」



成瀬が腹を抱えて笑い始める。



「はははっ!」



「笑うな!」



「楽しんでますよね?」





しばらくして。



最後の段ボールを運び終える。



「終わった……」



航が机に突っ伏した。



「お疲れ様」



黒川が缶ジュースを差し出す。



「ん」



「……あ?」



「ご褒美」



「子供か」



そう言いながら受け取る。



冷たい。



思ったより生き返る。



「サンキュ」



「どういたしまして」



黒川も隣へ腰を下ろした。



少し沈黙。



騒がしい空間なのに、


なぜか居心地は悪くない。



「そういえば」



黒川が口を開く。



「航くんって、サクラ歴どれくらい?」



「最近」



「聞いてたより短いな」



「誰から聞いたんだよ」



「いろいろ」



「便利な言葉だな」



黒川が笑う。



「便利だからね」



航は缶を傾ける。



「お前は長いのか」



「まあ、それなりに」



「へぇ」



「だから困ったら聞いてよ」



「なんで」



「なんとなく」



「お前もかよ」



黒川が少し笑う。



「ははっ」



そして少しだけ視線を落とした。



「……溜め込むタイプでしょ、航くん」



「は?」



「違う?」



航は答えない。



黒川も追及しない。



ただ。



「頼ってね」



静かな声だった。



「僕が頼ることになるかもしれないけど」



航は少しだけ眉をひそめる。



「胡散臭ぇ」



「ひどいなぁ」



そう言いながらも、


黒川はどこか楽しそうだった。



その時。



ピロン。



黒川の端末が鳴る。



黒川が画面を見る。



「あ」



「どうした」



「ちょっと呼ばれた」



黒川が立ち上がる。



「悪いね」



「別に」



「また今度話そう」



「はいはい」



黒川は小さく笑う。



「じゃあね、航くん」



「その呼び方やめろ」



「嫌だ」



即答だった。



「ムカつくなこいつ……」



黒川は楽しそうに笑いながら去っていく。



その背中を見送った直後。



「原田」



聞き覚えのある声。



成瀬だった。



嫌な予感がした。



「なんですか」



「新人教育だ」



沈黙。



「……は?」



成瀬がニヤッと笑う。



「今日、新人が来る」



「へぇ」



「お前担当な」



「は?」



「頑張れ先輩」



「俺も新人だぞ」



「知ってる」



「知ってて言ってんのかよ」



「まあ頑張れ」



「雑すぎるだろ」

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