再会
帰りたく、ない。
なんだか、帰る気が起きない。
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(……なんでだろうな)
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考える気も起きない。
考えたところで答えなんか出ない気がした。
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気づけば足が動いていた。
見慣れた道。
見慣れた街灯。
見慣れた自動ドア。
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ウィーン。
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「いらっしゃいませー」
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いつもの声。
いつもの店。
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航は無言で棚へ向かう。
そして、
いつものカップラーメンへ手を伸ばした。
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(会えたら、なんて)
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苦笑する。
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(思うもんじゃねぇな)
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その時。
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「「……あ」」
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同時だった。
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手と手が同じ商品へ伸びる。
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航が顔を上げる。
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「……柳?」
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目の前の男がぱっと笑った。
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「おう!」
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柳蓮。
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「久しぶりだな!」
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その笑顔を見た瞬間。
少しだけ肩の力が抜けた。
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「何してんだよ」
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「それはこっちの台詞だろ」
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柳がカップラーメンを持ち上げる。
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「夕飯」
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「お前絶対もっといいもん食えるだろ」
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「食えるのと食うのは別問題だ」
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「名言っぽく言うな」
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気づけば。
少しだけ笑っていた。
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柳がふと首を傾げる。
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「……なんかあったか?」
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航の表情が止まる。
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「別に」
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「嘘だな」
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即答だった。
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「お前昔から分かりやすすぎる」
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「うるせぇ」
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「ほら」
柳は顎で店の外を指した。
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「話せ」
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「嫌だ」
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「話せ」
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「だから嫌だっつってんだろ」
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「話せ」
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「圧が強ぇんだよ!」
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数分後。
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なぜか店の前のベンチ。
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航は缶コーヒーを握っていた。
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「で?」
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「……」
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「で?」
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「しつこい」
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「知ってる」
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航は空を見上げる。
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言うつもりなんてなかった。
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でも。
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気づけば話していた。
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家族が消えたこと。
サクラのこと。
朔と会ったこと。
今日のこと。
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全部。
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柳は最後まで黙って聞いていた。
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そして。
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「なるほどな」
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一言だけ。
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航は少し苛立つ。
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「それだけかよ」
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「それだけだ」
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柳は笑う。
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「俺は答えを持ってるわけじゃない」
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静かな声。
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「だからな」
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少しだけ空を見上げる。
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「悩め」
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「……は?」
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「悩め、悩み抜け」
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柳は真っ直ぐ前を見たまま言う。
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「そうすれば、見たいものが見えてくる」
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夜風が吹く。
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航は黙る。
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「……」
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「まあ」
柳が肩をすくめた。
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「あくまで俺の持論だけどな」
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思わず笑いそうになる。
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「なんだそれ」
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「知らん」
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「無責任か」
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「責任取る気ないし」
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「最低だな」
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柳が少し笑った。
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「あと」
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「?」
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「誰かを頼れ」
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航が顔を上げる。
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「一人で抱え込むな」
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「……」
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「ってか」
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柳が急に固まる。
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「今気づいたんだけど」
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「?」
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「これ、話しちゃいけないレベルの話じゃねぇのか……?」
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数秒の沈黙。
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航が吹き出す。
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「ふはっ」
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「今かよ」
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「笑うな!」
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柳が立ち上がる。
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「ってかお前大丈夫なのかよ!?」
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「機密とか!!」
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「知らねぇよ」
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「よくねぇよ!!」
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勢いよく振り向いた瞬間。
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ゴンッ。
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「いてぇ!!」
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街灯の柱に頭をぶつける。
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航は完全に吹き出した。
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「バカだろお前」
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「笑うなって言っただろ!!」
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しばらく笑い声だけが響く。
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やがて。
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柳が少しだけ真面目な顔になる。
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「……でも」
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「?」
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「あんま無茶すんなよ」
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航は目を細める。
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「ああ」
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小さく頷く。
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「どっかの誰かさんのおかげでな」
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柳が少しだけ目を丸くした。
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そして笑う。
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「……そりゃ、よかった」
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静かな声だった。
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「そういや」
「お前は、どうなのかよ」
「なにが?」
「東華。うまくできてるか?」
「おう!みんな仲良く元気にやってるぜ!」
「…そうか。」
「落としても、ねぇしな」
「!そうか。 東華、
…まだ続いてんだな。」
「久しぶりにくるか?」
「…いや、いい。」
「えええー!来いよー!」
「それよりも、 …その、いつ解散させる予定なのか?」
「急だな! ……… あいつとの約束では、高校入るまでだったから、あと少しで、かな」
少し寂しげに眉を下げる
「。そうか。」
「ああ!それじゃ、またな!」
柳が手を振る。
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「おう」
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少しだけ間が空く。
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でも今度は自然に言えた。
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「……またな」
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柳が一瞬だけ止まる。
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それから。
前より少しだけ嬉しそうに笑った。
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「おう」
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「またな」




