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成瀬、夢乃

航は背を向けた。


砂の感触が、足裏にやけに残る。



「……帰るか」



その一言で、何かを切った気がした。



歩き出す。


振り返らない。



海の音が、少しずつ遠ざかっていく。



(……終わり、か)



そう思った瞬間。


ポケットの中で、端末が震えた。



足が止まる。



取り出す。



画面。



差出人:不明



一行だけ。



『確認する』




航の目が細くなる。



次のメッセージが来る。



『三内夢乃との血縁関係』




一拍。




『該当なし』




風が止まる。



音が、少しだけ遅れる。



(……ああ)



理解は、もうしていた。



さっきの記録。


須藤の言葉。


全部、繋がる。



それでも。



(……違う)



頭の中で、何かが拒否する。



(そんなの、関係ないだろ)




指が動く。



『だから何だ』




送信。



既読。



すぐに返る。



『関係の定義が変わる』




航は、少しだけ笑う。



乾いた、短い笑い。



「……勝手に決めんなよ」



声に出す。



誰もいない道に、落ちる。




頭の中に浮かぶ。



夢乃の声。


夢乃の顔。


夢乃の名前。



全部、消えていない。




(俺は、覚えてる)



(あいつは、いた)




端末が、もう一度震える。



『それでも——』



一拍。



『君はそう呼ぶのか?』




航は、画面を見つめる。



しばらく、何も打たない。




やがて、ゆっくりと指が動く。



『ああ』




送信。




既読はつかない。



そのまま、画面が暗くなる。




航は端末をポケットにしまう。




空は変わらない。


道も変わらない。




でも、一つだけ確定した。




“事実”と、


“自分が選ぶもの”は違う。




航は歩く。



迷いはない。




ただ、


その足取りだけが、


ほんの少しだけ重くなっていた。




それでも。




「……妹だ」




誰にも聞こえない声で、


もう一度だけ、そう言った。

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