表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/45

休暇 1

電話のコール音は一回で止まった。


『何だ』


陸の声はいつも通り、無駄がない。


航は少しだけ息を吐く。


「終わった」


『内容』


「問題なし。全部通った」


『そうか』


それだけ。


いつも通りの短さなのに、今日は少しだけ意味が違って聞こえた。


航は窓の外を見る。


夜の街。いつも通りのはずなのに、少し遠い。


「あとさ」


『なんだ』


少し間を置く。


「サクラに入ることになった」


一瞬だけ、空気が変わる。


『そうか』


それだけ。


驚きも、確認もない。


まるで最初から決まっていたみたいに。


航は眉を上げる。


「いや、それだけ?」


『十分だ』


「軽っ」


『事実だ』


通話はまだ切れない。


昔なら、この沈黙は気まずかった。


でも今は違う。



(回想)


最初に陸と会った日。


『お前は選ばれている』


「意味わかんねぇって」


『理解は後でいい』


「いや今説明しろよ」


『不要だ』


(会話成立してねぇだろこれ)


あの頃は全部こんな感じだった。


でも三年後。


『サクラに入ることになった』


「……了解」


それだけで通じるようになっていた。



現在。


航は小さく息を吐く。


「でさ」


『なんだ』


「休暇もらった」


『何日だ』


「一週間」


『そうか』


またそれだけ。


でも、この短さが逆に落ち着く。


「迎えに来て」


『場所は』


「例の店の近く」


『五分』


「早すぎだろ」


『近い』


「いやそういう問題じゃねぇ」


通話の向こうで、何かが動く音。


もう出ている。


航は苦笑する。


「ほんと、相変わらずだな」


『無駄がないだけだ』


「はいはい」


少しの沈黙。


でも昔みたいな“距離の沈黙”じゃない。


ただの間。



航はスマホをポケットに入れる。


外に出る。


夜の空気が少し冷たい。


(サクラに入ることになった、か)


言葉にすると軽いのに、どこか現実感が薄い。


しばらくすると、黒い車が静かに止まる。


音がほとんどしない。


窓が開く。


「乗れ」


陸。


いつも通りの顔。


航は軽く笑う。


「迎えに来るって言ってもさ、もうちょい普通待たね?」


「無駄だ」


「即答やめろって」


ドアを開けて乗る。


車内は静か。


エンジンがかかると、街の音が少しずつ遠ざかる。


「で」


航は横を見る。


「サクラってさ、入ることになったけど」


陸は前を見たまま。


「そうか」


「それだけ?」


「十分だ」


「いやほんと会話雑だな」


少しだけ沈黙。


でも、空気は軽い。


昔とは違う。



(回想)


初日。


車の中。


『乗れ』


「説明しろ」


『必要ない』


「いやあるだろ普通」


『ない』


「おい」


その頃は全部ぶつかっていた。


でも今は——


『乗れ』


「はいはい」


それだけで動く。



現在。


車が止まる。


広い敷地。


静かな家。


灯りは少ないのに落ち着く場所。


「ここだ」


「またデカいんだよなここ」


「必要だ」


「それ万能すぎるって」


陸はドアを開ける。


「入れ」


航は少し伸びをする。


「なぁ」


「なんだ」


「サクラに入ることになったけどさ」


「そうだな」


「……ほんとに始まった感じするわ」


陸は少しだけ間を置く。


「まだ始まっていない」


「は?」


「入口だ」


航は苦笑する。


「相変わらず分かりにくいな」


「それでいい」


二人は歩き出す。


夜は静かで、空気は冷たいのに。


妙に落ち着いていた

推理から、ほのぼのへ!

少ししたらまた推理に入る予定です!

遅くなってすみません!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ