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転校初日に学校一の美少女に告白したら、何故か一緒に日本一を目指すことになった件  作者: 堅物スライム


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第23話 交流戦

 三月に突入した。

 高校二年生として過ごす最後の月。

 春の気配にはまだ遠いが、空は澄み渡り、爽やかな青が広がる朝。

 俺たちは都立桜坂高校に到着した。


 校門では玉田さんが、明るく笑顔で迎えてくれる。


「おはようございます! 今日はよろしくお願いします!」

「玉田さん、お久しぶり! 今日はありがとう。よろしくお願いします」


 九条さんはにっこりと笑い、玉田さんとがっちり握手する。


 校舎の敷地に足を踏み入れると、朝の光の中で運動部の声が響いていた。

 いつも通う自分の学校とは違う、校舎の造りやグラウンドの形。

 どれも新鮮で、少し緊張が走る。


 玉田さんに案内され、たどり着いたのは視聴覚室だった。

 そこには玉田さんの他に制服姿の五人。

 さらに、私服の大学生風の男女もいる。今日のジャッジを務めるOBだろうか。

 HEnDUの予選で対戦した、髪をきっちり整えた真面目そうな男子の姿も見える。


 今日、準備してきた論題は二つ。

 スケジュールとしては午前と午後で一つずつ。

 最後に、ジャッジからのフィードバックの時間も設けられている。


 お互いに紙の資料やタブレットを取り出し、机の上に並べる。

 緊張感が少しだけ、場の空気を張り詰めさせる。


 準備が整い、ジャッジの合図――小さなベルの音――で試合が始まった。


 午前中の論題は『自動販売機は多すぎるか、適切か』だ。

 肯定・否定、それぞれ立場を入れ替えて再試合までがセットになっている。


 ◆◆◆


 午前の試合は、ちょうど昼時に終わった。

 張り詰めていた空気が一気にほどけ、俺たちは両校入り混じって持参してきた弁当を広げる。


「九条さん、重箱みたいな豪華なお弁当持ってくるかと思ったら、意外に普通だね?」

「マンガじゃないんだから……玉田さんが私をどう見てるのか、なんとなく理解できた」

「だって、九条財閥のお嬢様だし。普段どんな生活してるんだろうって、憧れちゃうよ」

「全然普通だよ。想像してるみたいなセレブじゃないから」


 微笑ましいやり取りだが、俺は心の中で「いやいや、正月にトリンプ大統領とツーショット撮ってたよね? 超セレブじゃん!!」と全力でツッコミを入れたくなる。


「そのお弁当もお母さんの手作りなの?」

「……う、うん」


 おや? 

 九条さん、目が泳いでないか?

 多分、一流の家政婦さんが腕をふるったんだろうな。


「へぇ~、やっぱり財閥トップの奥様は料理も一流なんだ」

「ど、どうかな……そ、それより! おかず一品交換しない? その卵焼き美味しそう!」

「え? いいの!? じゃあ私も好きなの選んでいい?」

「うん、どれでも」


 女子同士の笑い声が弁当と一緒に広がっていく。

 そんな光景を横目に、俺はコンビニで買ってきたおにぎりを黙々と頬張った。


 一方、中澤さんは桜坂高校のもう一人の女子と楽しそうに話している。

 その隣に、上戸がコバンザメみたいにぴたりとくっつき、必死に会話に混ざろうとしていた。


 ――俺も、第三者から見たらこんなふうに九条さんに付きまとってるように映ってるんだろうな。

 そう思うと、なんだか急に恥ずかしくなった。


 ◆◆◆


 午後の試合も終わり、ジャッジからのフィードバックもありがたく頂いた。

 中澤さんと上戸は、午前中こそ場の空気に呑まれていたが、午後には積極的にスピーチできるようになっていた。

 少人数での交流戦ということもあり、慣れてくると普段の部活の延長のような感覚になったのだろう。


 外に出ると、夕方の薄暗さがあたりを包んでいた。

 冷たい風が頬を撫で、校舎の影は長く伸びている。

 校門まで見送りに来てくれた桜坂高校のメンバーたちと手を振り合い、俺たちは帰路についた。


 朝からずっと脳をフル回転させていたせいで、めちゃくちゃ腹が減った。

 おにぎり二個じゃ全然足らんかったわ。

 何か食って帰るか――歩きながらこの辺りのラーメン屋を検索してみる。


 お、仲元があるじゃん。

 この中途半端な時間なら、並ばずに入れそうだ。


「じゃ、今日は解散ってことでいいのかな?」


 まだ駅までは少し距離のあるところで、俺は九条さんに確認する。


「え? いいけど……どこか寄ってくの?」

「うん、腹減ったからさ。この先の角にラーメン屋あるからちょっくら行ってこようかと」

「ラーメン……」


 九条さんの瞳に、一瞬だけ好奇心の光が宿ったのを俺は見逃さなかった。


「一緒に行く? 辛いけど」

「え? 辛いの?」

「蒙古タンメン仲元っていう激辛ラーメンのチェーン店」

「激辛……?」

「あ、辛くないメニューもあるけど」

「辛い料理、実は大好きだけど……」


 ほう、興味はありそうだが、女子ひとりだと気を遣っちゃうか?


「中澤さんもどう? せっかくだし」

「いや、あたしは遠慮しとく。ダイエット中だし」


 続けて上戸に視線を送ると――


「あー、俺も今は腹減ってないしいいや。二人で行ってこいよ」


 ……こいつ、気を遣ってくれたのか?

 いや、俺と九条さんが抜ければ、中澤さんと二人きりになれると踏んだだけだな。


「どうする? 社会勉強として行ってみる? 九条さんの知らない世界に案内してあげるよ」

「そ、そうね……せっかくだし行ってみようかな」

「あ、でもお腹減ってる? 結構量あるけど大丈夫?」

「うん、実はお腹ぺこぺこ」

「よし、決まりだな!」


 こうして俺たちは上戸たちと別れ、『蒙古タンメン仲元 桜坂店』へと足を向けるのだった。

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