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集音路渉 花守り日誌【毎金更新中】  作者: つきや
第五章 古都紅葉

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エピローグ 残響

 ◆渉視点◆


 ――ひどく遠い場所から、誰かの声が響いていた。


(……誰……?)


 音が波のように寄せては返し、掴もうとすると指の間からすり抜けていく。

 意識の輪郭は溶け、ただ暗闇だけが、じっとりと額に貼りついて離れない。


 呼吸が苦しい。

 胸の奥に、冷たくて重い石が置かれているみたいだ。


 それでも――ぼんやりとした感覚の底に、ひとつだけ確かなものがあった。


(誰かが……泣いてる……?)


 その悲しみの気配を追おうとした瞬間、暗闇の奥で、白銀の光が爆ぜた。


 それは言葉ではなく、悠久の時を内包する巨大な記憶。


(これは……僕の……?)


 凍てついた白銀の玉座。

 世界を照らすほどに巨大な、命の樹。

 そして、その根元で「誰か」を抱きしめる自分。


 指先から伝わる喜びと、それを上回る底なしの悲しみ。そして、世界そのものに拒絶されたかのような、途方もない孤独感。


 『――どうか、永遠の安らかな眠りを……』


 別れを告げる静かな声が、胸の核心を鋭く突き刺した。


 その言葉と共に、身体の中心が白銀の波動で焼き尽くされるような劇痛に襲われる。


 記憶が、砕ける。


 痛みに喘ぎながら、渉は悟った。

 これは自分の経験ではない。遠い昔に交わされた、誰かの「願い」の残響なのだと。


 その直後。

 不意に、閉ざされた視界に強烈な光が差し込んだ。


 まぶしくて、反射的に心臓が跳ねる。


 光の向こう側に、誰かの温かな体温を感じた気がした。




 第六章へ続く

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

第五章は、これにて終わりです。


第六章の前に、次週は間話をお送ります。

来週金曜日に公開いたします。

どうぞお楽しみに!

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