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Keep Yourself Alive 第六感の場合  作者: 東山ルイ
もう1人の第六感。
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高転び

「二個小隊が全滅!?そんな事が信じられるか!?全員超能力者だぞ!狂ってやがる!」

「さらなる増援を送るか。いや、意味が無い。それほどまでにあの超能力者は強い。数を揃えても負けて、1VS1でも負ける。まるで違法改造(チート)のようだ。」

阿鼻叫喚が響き渡る。未だかつて無い事態に、流石の彼らも慌てざるを得ない。

「学園の方は防御体制が整っている。あの科学者がやられるようなことはないだろうが、我々はどうだろうな?」

焦りを隠せない様子だ。仮に今居る居場所がバレて、そのチーターがここにやってくれば、間違いなく彼らは敗北する。そんな時だった。

「こーんーにーちーはー!闘争の時間だぜぇぇ!」

ロシア人は夜のような目付きで、今まさに一方的な夜を与えようとしていた。

ブロンドの髪に妖しく光る赤い目は、人々が思い描くであろう死神の姿に近い。

「う、うてぇ!」

激しい銃音が鳴り響く。交響曲が美しく優雅に曲を作り上げる。爆煙の中からはボロボロの死体ではない。ひとりの人間が出てくる。

「俺の能力はんなくだらねぇ銃弾じゃあ打倒は出来ねぇ。照準の精度が低いんだよ!」

脳波をずらして、照準を微妙にずらす。シックス・センスを応用した能力のひとつではあるが、果たしてこれが正しい使い方なのかと言われると、イリイチは笑う。

笑う鬼は、豪快に能力を解放した。送受信状態を送信のみに切り替える。数がそこまで多くはないため気絶するようなことはないが、それでも一瞬にして大量の意思が流れ込む感覚はとてもじゃないが人間には抑えられない。

「苦しいか?苦しいのか?苦しそうだな?哀れなお前らには、俺が救いをくれてやる。」

フラググレネードを何個も何個も投げる。ビルの上階にある部屋の一室は粉々に崩れさろうとしていた。

「超能力者様もこうなりゃガラクタだな。」

爆撃音が止み、ガラスが割れて文字通り滅茶苦茶になった部屋と滅茶苦茶になった()()()()()()()を眺めて悦に浸る。

「どんなに英華を極めようが死ねばゴミ。ゴミには何も無い。そうだろう?」

「…よう。この爆撃を耐えたとは大したヤローだ。」

屍の前には2人の人間が立っていた。異能力というものはなんとも度し難い。()()()()()()()()()()()ものが()()()()()()存在するのだ。

「大した野郎。そうだな。こいつらと比べれば俺は強いな。そうだろ?第六感。」

「確かにそうだな。こいつらはアマチュアだ。不測の事態にまるで対応出来ていない。デザートには十分だ。」

そういった刹那に、空間が引き裂かれるような状態が出来上がる。屍が浮き上がり、瓦礫が浮き上がる。相手はやる気十分だ。

「痛快な能力だな。瓦礫を積み重ねてぶつけようなんて素晴らしいじゃあないか。」

シックス・センスを使い、相手の脳波をずらす。すんの所でぶつけるのを辞め、新たな行動をしようとする。

「空間を自在に動かせるなんて凄いじゃあないか!」

イリイチは喜んでいるかのように叫ぶ。空間。現在の彼らの空間はこの部屋だ。部屋そのものを操って、イリイチを潰そうとしているのだ。

「褒めてくれてありがとう。だがこんなんじゃ、お前は死なねぇだろうな。」

「その通り。強いお前に敬意を評して、倒し方を教えてやるよ。1VS1の状況で尚且つ近接戦で、俺の能力が反応する前に殴れば倒せるだろうな。瓦礫を積み重ねている間に俺はお前の術式を暴けちまうからなぁ。」

脳が万全な状態のイリイチは基本的に無敵だ。無敵であるのを望んでいる訳ではなく、()()()()()()()()()()()。シックス・センスを下げれる限り下げても、敵性意思を持った相手の思考は読めてしまう。それを改竄して送り返すのも完全に無意識で行っているのだ。

「そうかよ。じゃあ近接戦するか。」

空間が歪み、敵はすぐ目の前にくる。反応しきれないイリイチは自らの哲学を捨てきれずにまともに顔面に殴りを喰らう。

「言っておくが…。俺はお前を見くびっちゃいない。それどころか今までで1番の超能力者だと思っている。」

「そうかよぉ!」

狂気じみた笑顔でイリイチは殴り掛かる。だが空間はまた伸び始め、殴る動きをしたイリイチは空振る形で倒れ込む。

「ご機嫌だな。だがご機嫌なだけでは勝てると思うなよ?」

空間は彼の手によって蠢く。文字通り距離感が掴めないのだ。シックス・センスの反応はあくまで()()()()()()()使用することによって初めて効果を得る。空間が歪むというイリイチ自体が反応できない事態に陥ると彼自体の脆さも相まって、余計に苦しくなる。

「まるで…まるで、あの男のようだな。勝ち続きの戦で初めて負けたあの男のようだ。」

朦朧としたイリイチは無意識のうちに第一号開放式を使用するところまで来ていた。



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