もう1人の第六感
「死体共が蠢いてやがるぜ。笑えてくるなぁ。どいつもこいつも今日ここで死ぬなんて考えていなかったろうに。まぁ仕方がない。死は不本意なものだ。」
イリイチはいつものように高笑いしてその場を去っていく。目標は1つ。学園だ。
「あの科学者が空気ったんだろうな。やつがどんな権力を持っているかは知らねぇが、敵討ちは殺し屋の華だ。ジダーノフの墓標にあの科学者の首を添えてやろうか。」
銃を確保する。弾も多く確保し、平和維持軍が乗ってきたであろう車に乗り、学園を目指す。
「無線傍受するか。うん。うん。混乱気味のようだな。二個小隊が連絡つかないとなれば、そりゃ混乱を起こすか。」
煙草を咥えながら運転をする。当然免許は持ってはいないが、昔から運転ぐらいはしたことはある。なによりも第六感があれば運転なんて造作もないことだ。
「速攻かけて、目的だけを果たしてとっとと帰ろうか。」
東京本校、東京という都市には不釣り合いなほどに巨大な学園だ。生徒たちも教員たちも更には軍隊までなんでも揃っている。時刻は17時。まだまだ明るい空はこれからの劇には相応しくないくらいに輝いている。
学園郊外の高台にたどり着く。そこから目標の位置を特定する。
「狙撃可能だ。どうせならひと暴れしていくか?いや、俺も一応は学園生徒だ。同胞たちを殺めるのは相応しくないな。」
凶弾はある日ある時突然として降ってくる。それが今に正に起きた。学園防御のために、超能力者は無差別に攻撃を加えるように学園本校は設定されたのだ。
「この前の襲撃事件で警備を強めたか…。このままだと蜂の巣だな。撤退するか。」
考えてみれば当たり前のことだが、興奮状態だったイリイチには少し驕りが出ていた。本校が2人の暗殺者に襲撃されて、要人を拉致されて、さらに抹殺命令を受けた兵隊が全員返り討ちにあった。学園は現在、超能力者を近づけないために超能力者抹殺システムをONにしている。学園内の超能力者は外に出れずにして、兵隊たちの超能力者は拠点を別に移している。無機物による攻撃にはイリイチもどうすることも出来ない。
「危なかったな。少しやり方を変えるべきだな。」
その拍子でスマホで電話をかける。相手はリーコンだ。
「誰だ?掛けてくるな。」
「俺だ。イリイチだ。」
「お前か。東京でも悪事を働いているらしいじゃないか。俺はなにをすればいいんだ?」
「東京本校に要人として保護されている科学者を特定しておびきだせ。やり方は任せる。」
やり方を変える時に重要なのは情報を制すことだ。リーコンの情報力は侮れない。これが盗聴されていようと、それすらも情報として処理してしまう。
「坂本千畝。こいつだな。……。なるほど。ロシアでお抱え外国人やってたわけだ。研究内容は超能力者開発。…!超能力者開発の中にシックス・センスがある。あの情報はやはりこいつの研究機関が作ったものだったのか。」
シックス・センスの底を掴み取ろうとする時点で殺さないと不味い。情報が錯綜している時点でこいつは最後の生き残りだ。そして…。
「第六感を保有している人間は少なくとももう1人存在するわけだ。坂本について行ってれば現在本校にいるはずだ!」
1000人単位で意思を受信しているイリイチは、1人ぐらいの意思の取りこぼしには気がついていない。シックス・センス同士が受信しあったらどうなるかまでは分からないが、坂本千畝にとってそのもう1人のシックス・センスは鬼札であるはずだ。坂本千畝が生きている以上、一連の作戦は完全に失敗している。これを失敗に終わらせた張本人は…。
「ジョーカーは1枚だけではないわけだ。平和維持軍も学園そのものも関係がない。敵は2人。もう1人のシックス・センスとそいつを操るボス…」
かつてのようなボスと自分のような関係を想像して、未だかつて無い苦戦をするだろうと覚悟を決めるのであった。




