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万能の大魔導師~エイリア・ファシネイトのトラベルライフ~  作者: 智慧砂猫


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第79話「なんとか決着はつけられた」

 エイリアは深呼吸をする。額に汗が滲む。


「上出来。じゃあ、一瞬で終わらせてやろうか」


 時間は掛けられない。アポフィスが持つ最も強い能力を借り受ける。テュフォンは彼女の次の行動を読むために注視していたが、徐々に視界が奪われていくのに気付く。


『さあ、闇が降りてくるぞ。すべてを喰らう闇が』


 能力はエイリアを除くすべての存在に影響した。何もかもを闇に塗りつぶし、気配を探すテュフォンを気に留めず歩いて近付いていく。


「君は今、すべてが闇に覆われている。視覚、聴覚、嗅覚、触覚……あらゆるものが使えず困惑していることだろう。自分が立っている場所さえ認識できていない。動くことさえままならないはずだ。そして私は、そんな無防備な君を倒す」


 すう、と息を深く吸い込んで彼の胸に手を当てる。


「──〝フレア・ブレイク〟」


 触れた箇所が紅く光り輝き、爆炎を放つ。その身をすべて包み込むような威力で吹き飛ばせばテュフォンも無傷では済まず、亡骸の山にぶつかって動かなくなる。


 魔力が底をついたエイリアは、その場で膝をつく。アポフィスは『また呼べ、エイリア』と満足げに言って彼女の体から静かに消え失せた。


「まさか本当に倒すとはの、エイリア。無事なのか?」

「ん。大丈夫さ、もちろんね」


 肩を借りて立ち上がり、燃え上がる亡骸の山を見る。エイリアが残った魔力を使って叩き込んだ爆炎がごうごうと音を立ててすべてを焼きつそうとしている。──彼女は睨みつけて舌打ちをした。


「なんだ、まだ生きてるじゃないか」


 傍に駆け寄ってきたハイディスやロッソもびたりと足を止める。強烈な気配は消えていないどころか強まった。その燃え盛る肉体を持ち上げて歩き、彼女たちの前に立って大声で笑って見せたのだ。


「……フ、こんなに笑ったのは久しぶりだ。なんと、なんと素晴らしい人間か。かつて一度たりとも、この俺が────」


 一歩ずつ近寄って来る。警戒する彼女たちの緊張をよそに、彼は目の前でやってきて、身を焼こうとする炎が消えると座り込んだ。


「負けを認めたことのない俺が初めて負けたという気分になった。見事だ、エイリア・ファシネイト。たった二秒ほど気を失っただけだが……そもそも気を失ったことさえない。お前は実に優れた人間だ、俺もまだ修業不足だったというわけか」


「君で修行不足って言ったら世の中、みんな怠惰を貪ってる。勝てたのはまぐれって考えてもらえると嬉しいな。で、君はどうするつもり?」


「再び修業をする。ただし魔界に戻って、だが」


 ときどき外に魔物が出て行っているのは知っていたし、それが多くの人間の害になろうとも関係なかったが、門を開いて呼び出せる魔物の質は〝たかが〟と言える程度だ。もっと強い魔物を探すには魔界にこもったほうが早い、と言う。


「天界では俺は嫌われ者だ。ひとり殺してるし、いくら俺でも神々を同時に相手しては生きてはおれん。……それではお前と再び戦うことができなくなる」


「申し訳ないけど私は遠慮するよ? 来ないでよね、マジで」


「ハハハ! 何もかも修業が終わってからの話にはなるんだが!」


「いや聞いてなくない、コイツ? 私の話全然聞いてないよね?」


 なにはともあれ、勝利を収めて魔物発生の原因とも言えるテュフォンを──奇跡的なレベルで──打ち破ることが出来て、彼女の仕事は終わりを迎える。


 ハイディスが「もうひとつ下のフロアがあるようだが」と口にした。


「ああ、もともとダンジョンを創る前からあった場所だ。地中深くに埋まっていた巨大な魔結晶……魔界の門を開くのに何度も使ったが、いまだ枯渇の様子もない。もう俺にも必要ないから、あとは好きに使えばいい」


 かなり巨大らしく運び出すことも出来ないうえに、魔石と違い魔結晶は砕けると魔力を完全に消失してただの石ころになってしまうので不便な部分もある、と聞いて興味をそそられたエイリアたちは、話も程々に彼に案内してもらうことにした。


 向かった先は巨龍に匹敵するサイズの魔結晶で、フラッドは「ワシらがみたサラマンドラの倍くらいデカいのう」とキラキラ輝くのを見つめながら言った。


「運び出すのは確かに無理だな。せっかく使えそうなんだけど、こんなものを見つけたなんて報告したら独占されるのは目に見えてるし、うーん……」


 頭を悩ませていると、ハイディスが「少し構わないか」と手を挙げる。


「我の魔力を取り戻すのに使わせてはもらえないか?」

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