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万能の大魔導師~エイリア・ファシネイトのトラベルライフ~  作者: 智慧砂猫


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第67話「正直ものすごく嫌いだけど」

 なんとなく彼が避けられる理由を知った気がしたエイリアは、求められた握手に応じたりせず──たとえ嫌われてもいいという気持ちで──そっぽを向く。


「それより寒いんだ、中に入れてくれない?」

「……ム、たしかに。名案だな、無愛想な魔導師くん」

「私を無愛想って言うな。君が暑苦しすぎるんだ」


 話しているだけでイライラする、とうんざりするエイリアをフラッドがぽんと背中を叩いて「気にし過ぎじゃ、こっちもマイペースに行こう」と宥めた。


「フッ、さすが筋肉に選ばれしレディは落ち着きが違う。まあともかく入ってくれ、たしかにこのままでは私も凍え死んでしまいそうだ。……実は寒いの苦手で」


「いっそ凍死してるのを見つけたかったよ、私は」


 心の底からそう思っているのか厳しい言葉を浴びせるも、ロッソはまるで気にも留めることなくふたりを山小屋のなかへと迎え入れる。


「寒すぎて心も冷え切っているようだね。まずは温かいスープでも飲みながら暖炉にあたって深呼吸だ。その苛立ちが落ち着いたら──ムンッ! 仲良く話でもしよう!」


「ポーズをとるなって言ってるだろう! 殺すぞ本当に!」


 多くの物事を眼中にないとしてきたエイリアだが、今日ほど他人に対して殺意を覚えたのは初めてだと息を切らして怒鳴った。


「ハハハ、まったく短気な魔導師くんだ。それで今日は何をしにきたのかね? まさか私といっしょに筋肉を鍛えるために来たんじゃないだろう。そっちのオーガのレディはともかく、君のほうはあまりにもひょろひょろすぎる」


 運動不足にすら思えるエイリアを見て腕を組むロッソは、頭の中でトレーニングメニューを考えているに違いない。訴えるような物言いをされた彼女はチッと舌打ちをしてから。


「私たちはディグ山脈にあるダンジョンを探してる」

「ム……あの魔物の溢れる洞窟のことかね」


 途端にロッソの目つきが変わる。


「やめておきたまえ、あそこは並の人間……いや、あるいは私たち同じ魔物でさえ足を運ぶのを躊躇う危険な場所だ。生半可な腕前ではとても生き残るのは──」


「不可能。だとしても私は行かなくちゃならない」


 信念にも近い力強さのある言葉に気おされたロッソは押し黙った。


「いいかい、ロッソ。私が生半可な腕前だと思うのなら試してやってもいいが、その前にハッキリ言っておく。このチンケな小屋と君を消し飛ばすくらい魔法薬学の研究に比べたら遥かに簡単なものだ。つまらない話を聞かせるより道案内をしてくれ」


 一瞬だけ放たれた彼女の魔力から、ロッソは瞬時に異常だと思える強さを理解する。彼女の肉体は既に人間らしいものとはかけ離れた魔力を秘めており、本能的に生きる魔物であればとても近寄ろうとは考えない相手だと息をのんだ。


「ムウ……細いわりにまともではないな」

「そりゃどうも。こう見えて天才だからね」


 フンっと鼻を鳴らして自信たっぷりなすがたに、ロッソはあごをさすりながら「そういえば」と思い出して彼女に尋ねた。


「レディたちの名前を聞いていなかった。とくに魔導師、君は……?」

「エイリア。万能の大魔導師、と人々は私をそう呼んでいるよ」


 その名を聞けばロッソもぱちんと指を鳴らして「なるほど、君がうわさに聞く大魔導師だったか!」と、彼女がどうしてそこまで強い存在であるかに納得がいく。


「なるほど素晴らしい、ならば問題ないだろう。先に洞窟に入っていった連中はいまだ出てこないが……よし、決めた。このロッソ・ブランバルド・ダンディー! 君たちを友として認め、同行しよう! 内部については多少知っているから役に立てるはずだ!」


 ディグ山脈にある洞窟は、最深部までとはいかなかったがロッソもすでに足を踏み入れている。興味はあったがひとりでは難しいだろうと判断して引き返していた彼は心強い仲間を得られたと内心で静かに喜んでいた。


「ありがたい話だね、君のことは嫌いだが役に立つのは事実だろう。フラッドもそれで構わないかな?」

「ワシは平気じゃ。……触ってきたりしなければのう」


 フラッドに避けられたのは嫌だったのか、ロッソがショックを受ける。同じ魔物であり、磨き上げられた肉体を持つ者同士仲良くなれると思っていたらしい。


「よし、じゃあ方針が決まったところでロッソ。君が裏切らないことを祈って伝えておくが、私たちの目的は先に洞窟へ入ったと思われる連中──英雄二名の捜索および魔物の発生原因を突き止め、これを排除すること。構わないな?」


 彼は深くゆっくり頷き、どかっと椅子を蹴飛ばして立ち、ポーズを決めた。


「任せておけ、このロッソ・ブランバルド──」

「あー、わかった。もういいから行こう、見たくない」

「ぬぅ……! 最後まで譲らんやつめ……!」

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