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万能の大魔導師~エイリア・ファシネイトのトラベルライフ~  作者: 智慧砂猫


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第66話「できれば関わりたくない暑苦しいアイツ」

 ドワーフの男が首をかしげる。


「俺を探してただあ? 魔導師様がなんの用で?」

「ま、正確には地理に詳しいドワーフだ」


 広いディグ山脈を自分の土地のように自由に歩けるのは、頻繁に出入りする者だけ──つまり屈強なドワーフたちだ。彼らの案内を頼りに、山脈のどこかに住むドレイクを探したいと伝える。ドワーフの男は頭をがりがり掻いてため息をつく。


「ああ、あの変人を探してるのか? やめといたほうがいいと思うけどな。アイツは……排他的ってわけじゃねーが、多くと関わりを持ちたがらねえから」


「それでも構わない。なにか手土産は必要かな」

「いや、なんにも要らねえとは思うが……うーん、まあいい」


 荷物を置いた男は、エイリアに手を差し出して握手を求める。


「俺はルドルフ、このあたりで採石を行ってる。よろしくな」

「よろしく頼むよ。ちなみにこっちはフラッドと言って……」


 ルドルフが見つめるフラッドのすがたに首を傾げた。


「なんだ、最近の魔導師様ってのは魔物を飼うのか?」

「え? あー……そんなところだ。ちょっとした実験中でね」


 口から出まかせを言ってその場を流す。


「ほらほら、それよりも案内をしてくれ。私たちは来たばかりで地理には疎くてね」


 ルドルフの背中を押して急かし、寒さ厳しい外の環境にぶるっと震える。彼はといえばちっとも寒そうにはしておらず、しかし耳や鼻は真っ赤だ。厚底のブーツで雪を踏み、「仕方ねえなあ、こっちだ。ドレイクの住んでる小屋が近くにある」と歩き出した。


 あとをついていくと山道を逸れて進み、深い雪のなかを掻き分けていく。凍えるのを避けるため、エイリアは炎の魔法で周囲に微弱な熱を放つ。そのうしろにぴったりくっついてフラッドが暖を取っていた。


「温かいのう……。こんな場所に住みつくとか馬鹿の所業じゃな」

「ハハハ、たしかに。だが私でも選ぶとしたらこういう場所になる」


 他の魔導師とは違ってエイリアはひとりになれる環境を欲しがり、誰の邪魔も入らないのを好んだ。きっとドレイクも似たような考えで選んだに違いないと自信ありげに言う。


「半分が人間、ってなるとどちらにも蔑まれがち(・・・・・・・・・・)だ。こうやって誰も来ない場所のほうがいいんじゃないのかな。きっと私たちを見たら嫌そうな顔をするぞ。『どうせまた馬鹿にするんだろう』って感じでね」


 想像してけらけら笑う。仮に喧嘩を売られたとしても、ドレイクひとりを相手に自分とフラッドであればじゅうぶんすぎると考えているようだ。


 そうしてやってきた山小屋は思っていたよりも立派で頑丈に造られており、周囲に雪はなく仄かに温かな空気が漂っている。


「俺は会いたくねえんで、ここまでだ」


 ルドルフはどうも落ち着かない様子をして、そそくさ立ち去ろうとする。


「そう? 礼をさせてほしいところだけど……」

「いや、必要ねえよ。じゃあ、あとはせいぜい頑張りな」


 彼はさっと会話を切り上げて道を引き返す。エイリアたちは見送ることもなく別れて山小屋の閉ざされた扉をドンドンと強めに叩く。


「すみません、誰かいませんか。ちょっと話をしたいんですが」


 しばらく待ってみても返事がない。フラッドと顔を見合わせて、もういちどだけ扉を叩こうとした──そのときだった。


「……ンン、ブラボー! 実に良い筋肉の波動を感じる……!」


 突然背後から抱きつかれ、腹を撫でられたフラッドがゾワッとして「ひいっ!」と甲高い声で叫んだ。エイリアも咄嗟に臨戦態勢を取り、杖を即座に握り締める。


「おお、待ちたまえレディたち! 吾輩はただクールな筋肉の波動に触れていただけだ……! 敵意はない、客人が誰かと思っただけなのだよ!」


「だからって後ろから抱きつく馬鹿がいるわけないだろ!」


 ふたりに対して両手を高く挙げて丸腰なのを示す上半身裸の男は、オールバックの金髪にしっかりした口ひげを蓄えた紳士風の顔つきをしながら筋骨隆々の肉体を晒すことに余念がない。何かしゃべるたびにポーズをキメようとする。


「ノン、抱きついたのではなく触れたのだ……そう、そちらのオーガのレディがあまりにスマートだが凝縮された見事な筋肉を晒していたもので同類かと」


「いちいち筋肉を見せびらかすようなポーズをとるな、暑苦しい!」


 エイリアが怒鳴ると、彼はしゅんとしながらもやはりポーズをキメる。


「失礼した、吾輩の癖でね……。まずは怪しいものではないと自己紹介をさせてはくれまいか、レディ。吾輩こそはロッソ・ブランドバルド・ダンディー!──この山を支配する半人のドレイクである! 人間と魔物の不思議なコンビよ、仲良くしよう!」

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