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万能の大魔導師~エイリア・ファシネイトのトラベルライフ~  作者: 智慧砂猫


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第24話「とっても良い天気なので」

────フラッドは翌朝まで眠った。


 激マズな薬に食欲すら失せ、気が付いたときには陽が昇っていたのでうんざりしながら窓の傍までやってきて外の景色を眺める。宿のすぐ傍で大きな布を広げて薬草を乾かそうとしているエイリアを見つけて、挨拶をしに外へ向かう。


「おう、朝っぱらから元気じゃのう」

「あ、起きたの。いやあ、そりゃもう良い天気でさあ」


 昨日とは打って変わって空は雲ひとつない快晴で、心地良い風も吹いている。聞けばしばらくは今のような天気が続くらしく、乱雑に布のうえで広げて寝そべっている薬草も、はやくに乾かせそうだと彼女は大いに喜んだ。


「しかしのう。貴様の魔法があればすぐではないのか?」

「乾かすだけならね。でもこういうのは自然がいいのさ、自然が」


 乾燥させるために魔法を使えば、少なからずとも魔力の影響を受けて本来の効能より弱くなってしまう。どれだけエイリアが優秀で完璧な薬を作れるとしても、薬草自体の質が悪ければ一級品の薬は作れない。自然に頼るのも必要な努力として彼女は捉えている。


「ほーん。貴様は性格のわりには真面目じゃのう」

「当然、私は一流だからね。才能に驕って努力をしないのは二流さ」

「で、このあとはどうするんじゃ?」

「とりあえず、またガントに会いに行くつもりだよ」

「まだ聞くことがあるのか? 大した話なんぞできんぞ、時間の無駄じゃ」


 世界各地を移動しながら狩りをするトロールたちから話を聞いたところで、多くは魔物の生息地について詳しいくらいで知識らしい知識もなく、せいぜい彼らは残酷で腕っぷしだけが取り柄の下等種族でしかない。フラッドがそう語る。


 ガントがそうではない理由は、たまさか異物として生まれたに過ぎず、攻撃性のない魔物が稀に存在するのは昔からで、会いに行くのは時間の無駄になる、と。


「まあ、トロールの知識に期待はしてないよ。彼らは餌場に長く居ることが多いから移動も年間に二度ほどだろ? 魔物のことより、私が聞きたいのはディグ山脈の話なんだよね。勇者一行として旅をしてたときにも寄ったことなくて」


「ああ、なるほどのう。たしかにワシもよく知らんなぁ……」


 寒い地域が特に苦手なフラッドからしてみれば無縁な土地だ。普段なら近寄りもしないほど嫌気が差すくらいでまったく知識を持たない。今はエイリアといっしょなら寒さ対策もしているだろうからと安心して、むしろ少し楽しみにしているようだ。


「ディグ山脈は深い雪の積もる山だと聞いておる。そんなところで暮らすドレイクなのじゃから、普通のヤツと違ってモコモコしておるとええのう」


「ハハ、たしかに。とりあえず皮を剥いで防寒着にしたいよね」

「え、なにそれこわいんじゃが……? サバイバル精神強すぎんか?」

「だって寒いの嫌いだもん。魔法で暖を取るのと違う良さもあるし」


 魔物も生態的には動物たちと変わらない。寒い地域に生息しているものは極寒に耐えうる毛皮をまとっていたり、あるいは体温を極端に上昇させていたりする。なかには極寒から生まれた魔物も存在して、互いに少ないエサを求めて捕食し合って生きている。


 利用できるものはすべて利用するエイリアにしてみれば、魔物は素材であり宝物だ。今でも「魔物の毛皮でつくる衣服は頑丈だし、コートとか温かいから高く売れそうだよね。生地にしても柔軟だから使い勝手も悪くないはず」と儲け話を頭に思い描いていた。


「貴様は()に恐ろしいヤツじゃの……強い人間はこうも悪魔的なのか」

「フ、天才とは常に色々な可能性を求めるものなのさ!」

「……ま、たしかに貴様ならやりかねんか」


 もともとフラッドさえ瓶詰にしたがっていたのだから、よくよく考えてみればそれも当然な話だ。いまさら何を彼女に期待するものがあっただろうか、とあきれて肩をすくめる。ただ、それが面白いところでもあるのでいっしょに行動しているのも事実だが。


「さて、そろそろ行こうか。珍しい薬草とかあったらついでに採りたいし」

「ウム。ならワシは湖でちょっと魚でも獲るとしようかのう!」

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