侵入者
数十分後、食事を終えた俺は言われた通りスレイタムへと向かっていた。
リーサちゃんはと言うと料理長さんに呼び止められて、部屋に戻らされた。
(反乱軍の事で少しは話が進展したのだろうか。)
俺はスレイタムの部屋の前までやってきてドアを軽くノックした。
すると、部屋の中から<どうぞ>と言う返事が聞こえたのでドアを開けて中に入った。
<あら、シュウヤ来てくれたのね。>
<女王に呼び出されたら、無視できないだろ。>
レミアは軽く微笑み、俺を席へと誘導した。
<役者は揃ったわ。会議を始めましょうか。それじゃあリデーノ。>
リデーノはレミアに指名され、資料を持ってスレイタムの前方部へとやってきた。
<私からは最近の反乱軍の行動についてご報告させていただきます。>
リデーノの報告によればここ最近反乱軍の勢力は緩やかに拡大しつつある。
奴らは国内の重傷を負って生活費を稼げなくなった者や悪事を働いて国に追われている者、親を無くして行き場を失った子供などをけしかけて、勢力の一部にしていると予測せれている。
実際に、レザネルクが国の外れで子供を唆していた魔物を見たらしい。
<しかしその魔物はレザネルクに気づくと跡形もなく消え去ったと言うのです。>
<はい。しっかりとこの目で見ました。>
テレポートの能力を持った魔物ってことか。
逃亡にはうってつけの能力だ。
<厄介だな。>
<はい。奴らの本拠地や正確な能力の情報などはまだ入っておりません。>
リデーノの話を聞いたところ、反乱軍は徐々に活動を活発にしており、既に何体かの魔物が王宮に侵入してきたらしい。
しかし取り押さえようとしてもテレポートによって、毎回逃げられてしまうのだと言う。
(さて、本当に逃げたのか。もし俺なら折角侵入した王宮から易々とテレポートで逃げたりはしない)
<王宮内で変わったことは?>
俺がしようとしていた質問と同じことをレミアが問いかけた。
<そのことなのですが…>
レザネルクの報告によると王宮内の何人かの兵士が姿を消したらしい。
それも反乱軍と思われる魔物が出現した日を境にしてだ。
<じわじわと責められている感じだな。>
<はい。>
テレポートの能力がいまいち分からないが、一度行ったことのある場所にならどこえでも瞬間移動できる。おそらくこの認識でいいはずだ。
そうなると奴らはいつでもここを責めて来られるということになる。
それと
(やれやれ、やはり…)
部屋に入った時から気になっていたが、やはり勘違いではなかった。
この部屋の中から俺とレミア、リデーノ、レザネルク、ミーテェル以外のどこか邪悪な気配を感じる。
話の様子から魔物メンバーはその事に気付いていない。おそらく気配を極限まで抑えて居るのだろう。
<それにしても奴らはコソコソと何がしたいのかね。>
俺は白々しくこんなことを言ってみる。
そして誰にも気づかれないように腕に光のエネルギーを込めた。
(シャイニングレストレイント)
<とりあえず本人から聞きますかー>
俺は奴のいる方に技を放つ。
<ギャ!>
その光のエネルん作られた紐は奴を縛り付けた。
流石の幹部達も突然起きた事態を把握できずに唖然としていた。
側から見れば輪状のシャイニングレストレイントが空中に浮遊しているようにしか見えない。
おそらくその魔物はレミアのような透明化の能力を使っているのだろう。
俺は腕に力を入れて紐の縛りを強めた。
<うぎゃー>
次の瞬間、悲鳴と共に奴の透明化が解除され、姿が露わとなった。
<こ、これは一体…>
流行り魔物一行はこいつの存在に築いていなかった。
<これまでの話は全て盗み聞きされてたってことだ。>
そして、今までこいつの存在に気づけなかったと言うことは、これまでのスレイタムでの会議内容や王国の動きなどは全て露見していたと考えた方がいい。
まぁとりあえず、
<こうしてせっかく拘束したんだ。尋問でもしたらどうだ?>
〜3分後〜
スレイタムは会議室から尋問室へと変貌した。
<もう一度聞く、貴様らの本拠地はどこにある。>
<ふん。仲間を売るようなことをするものか。さっさと殺せ。>
その魔物は頑なに口を破ろうとしなかった。
(何か嫌な予感がする。こいつはおとりであり、目眩しであるような気が。)
嫌な予感が消えないので仕方なく俺はセカンドフォルムになった。
<いい加減、レミア様を狙うのはやめろ。>
<ふん。>
(今回の目的は女王ではなく、その妹なのだがな。)
俺は魔物の心を読み取ってハッとなり、反射的に走り出した。
<ちょっとシュウヤ?>
まずい今レミアの部屋にはリーサちゃん1人。しかも特に護衛が付いている様子はなかった。
「無事で居ろよ。」
俺はレミアの部屋を目指して走った。
次第に部屋が近づいてくると金属がぶつかり合う音や魔物の叫び声などが聞こえてきた。
「あれは…」
俺が駆けつけた時にはレミアの部屋の前で料理長さんを3体の魔物が取り囲んでいた。
料理長さんは左腕がフライパンに、右腕が大きな包丁に変形していた。
面白い組み合わせだが、状況が全然面白くない。
3体の魔物の方もそれぞれヤリ、ランス、オノを作り出している。
多勢に無税とは卑怯な。
「くっ、あいつらー!」
俺はとっさに料理長さんの元へと向かった。
<今こそ俺達3人の合体技をお見舞いしてやる!>
そう言うと、3人の武器が1つに融合した。
<<<喰らえ!三激混爆…>>>
シュビン!
その時一筋の光が魔物達を貫いた。
<ぐはっ!>
<技の名前を叫んでいる途中で…>
<ひ、卑怯な>
3体とも背中から大量の解離血を噴射して前の目に倒れた。
<決め技だからって叫ばなきゃいけないルールはないんだよ。>
一応俺も鬼ではないので命までは取っていない。
<大丈夫ですか?>
<ありがとうございます。シュウヤ様。>
無傷というわけではないが、それほど大きな怪我も見受けられないので大丈夫であろう。
<リーサちゃんは>
<リーサ様は中に。>
料理長さんは今朝の食事の後何があったのかを話してくれた。
俺と分かれたあと、料理長さんはリーサちゃんをレミアの部屋まで送って行ったらしいのだが、突然どこからともなくあの3体の魔物が現れて、襲いかかってきたらしい。
それで料理長さんはリーサちゃんを部屋に匿い、魔物達と抗戦していたのだという。
<まだまだ戦闘は不慣れなご様子だったので。>
16歳だもんなあの子。料理長さんの意見には納得する。
<とりあえずこ
キャー!
<!?>
部屋の中からリーサちゃんの悲鳴が聞こえてきた。
俺はドアを開けて中の様子を伺おうとしたが、部屋には鍵がかかっていた。
<くそ。他に入り口は>
<このドア1つです。>
リーサちゃんが匿われる前から、奴らの仲間が中に侵入していたというのか。
<くそ、うぉー。>
俺は全力で部屋のドアを蹴り飛ばした。
バコン!
ドアは綺麗に外れ、俺達は部屋の中に入る。
部屋の中では2体の魔物がリーサちゃんを押さえつけていた。
<離して!>
<大人しくしろ!>
魔物の1体がリーサちゃんの腹部を攻撃し、リーサちゃんは気を失った。
<この!>
俺はとっさに駆け寄ろうとするが、1体がリーサちゃんの首元に剣をかざした。
俺はすぐさま足を止め、奴らから距離を取る。
<そうだ。可愛い死体を作りたくなければおとなくしてろ。>
<くっ!>
奴らは2人、俺1人でも十分倒せるがそれではリーサちゃんの命が危ない。
(どうする。考えろ)
俺が必死に打開策を探していると俺を追ってきたレミア達が部屋に入ってきた。
<リーサ!>
<待て!それ以上近づくな。>
俺は手を横に突き出してレミアの進行を止める。
<ふっ、女王のご登場か。妹は借りていく。殺されたくなければ1人でサラノーセまで来い。>
そういい残して2人組の魔物はテレポートして姿を消した。




