女王妹殿下
「さて、そろそろ王宮に戻るか。」
「そうね。」
怪物との戦闘を終えた俺達は戦いの疲れを癒すために王宮に戻ることにした。
今日は結局何も狩る事はできなかった。
まぁ野生の動物を狩って王宮に持っていけば、ティモルが手に入るということは分かったので後日また出直せば良いだろう。
それに一応収穫もあったしな。
1つはラーセと出会って、自分のことについて少しだけ理解が深まったこと。
そしてもう1つは…
「ね、その宝石みたいな玉は何なのかしら」
「さぁ、何らかのエネルギーの結晶玉ってことだけは確かなんだけどな。」
この結晶玉とは、先程ラーセが怪物を倒した後、人格交代して俺が表に出てきた時に見つけたモノだ。おそらく、元々怪物の体内に存在していたものだと考えられる。
「ほんと何なんだろうな。これ。」
NEOのアジトに持っていけば、色々と調査してこれが何なのか分かるかもしれないが、今ゼラフォーを離れるわけにも行かない。
「とりあえず、それがエネルギーの塊なら、シュウヤの体内で保管していた方がいいんじゃないかしら。」
たしかにあの怪物の体内から出てきたものだ。何かしら危険なものに違いない。
「そうだな。」
俺は結局玉のエネルギーの形態変化を行なって体内に取り込んだ。
レミアからエネルギーを与えられた時とは違い、俺の身体には何の変化も起こらない。
何かの能力源となるエネルギーではないのか?
(今度機会があったらラーセにでも聞いてみるか。)
俺はセカンドフォルムになるための箱の近くにそれとは別の箱を体内に作り出し、その中に結晶玉を保管した。
「これで良しと。んじゃ、行くか!」
そうして俺達は王宮へと戻ってきた。
<お2人共、お帰りなさいませ。>
国に入る直前に門番の魔物が俺達を出迎えてくれた。
<ご苦労様。私が外出している間、何か変わった事は?>
<リーサ様がレンティウサ(王族の試練)からお戻りになられました。>
門番はなんだか嬉しそうにレミアと話していた。
<了解したわ。門を開けてもらえる?>
2人の話はすぐに終了したようで俺達は門を潜り、王宮へと戻ってきた。
「なぁ、さっきの話だけど、リーサって?」
「ん?あぁ、リーサは私の妹よ?」
なんとレミアには妹が居た。俺の偏見ではレミアは一人っ子のような顔をしているので少々驚いた。
<そのリー、<レミア様!>
俺が続けて質問をぶつけようとしたその時、後ろから走ってきた魔物の叫びによって俺の声はかき消された。
<リデーノ様がお呼びです。至急スレイタムまでおこしください。>
<分かったわ。ごめんシュウヤ、これから会議だから先に部屋で休んでて。>
<あ、あぁ。>
反乱軍の件で何か進展でもあったのだろうか。
俺はレミアに付いて行こうかなとも思ったが、それ以上に早く身体を休めてたかったのでレミアの言う通り、先に部屋で休まさせてもらうことにした。
そうしてレミアと別れた俺は寄り道することもなく、まっすぐレミアの部屋へとやってきた。
そして俺はゆっくりと部屋のドアを開ける。
<おねぇちゃ〜ん! >
「ぐはっ!」
ドアを開けた途端、何か弾丸のような物が俺に突っ込んできた。
「いたたたたた…」
俺は思わず尻餅をついた。
その後、腹部に重みを感じるので視線を向けてみると、見たことのない少女が俺をガッチリとロックしていた。
<えーと…リーサちゃん?>
<あれ?おねぇちゃんじゃない。おじちゃん、誰?>
少女はおっとりした顔つきで俺を見つめてくる。レミアの妹だけあって、相当可愛らしい。
一応言っておくけど僕にそっち系の趣味はないのでよろしく。
ていうか、、、
「俺まだ17歳なんだけど。」
(過去に俺が言ったセリフが今になってブーメランしてきやがった。あの時のサトルさんの気持ちが分かるな。)
<俺の名前はシュウヤ。リーサちゃんだよね。俺は君のおねぇさんの友達なんだ。>
<そっかぁ。じゃあ未来のお兄ちゃんって呼んでもいい?>
<いやいやいや、俺達はそんな関係じゃっ!…それに長いよ。>
<え?んーとそれじゃあ…>
リーサちゃんが俺の呼び方を考えている間に俺も少し考え込んだ。
目の前にいるのは本当にレミアの妹なのかと疑ってしまう。
バッチリと大きな瞳とブックらとした頬、ストレートで綺麗なセミロング。
容姿からいえば小学生低学年くらいの年齢だ。
(マジでレミアの妹?まぁたしかに似てはいるけどさ。)
人間の常識で物事を語ってしまうが、レミアが1790歳でその妹なのだから…つまりはそういうお年頃という訳だ。
この見た目で1700歳超えと言われたら、誰だって合点がいかないはずだ。
<それじゃあ、お兄ちゃんで。よろしくねお兄ちゃん!>
突然閃いたように、唐突にリーサちゃんが喋り出した。
<う、うん。よろしくねリーサちゃん。>
(さほど変わってないけど、まぉいいか。)
<じゃあお兄ちゃん、お兄ちゃんのお膝に座ってもいい?>
<え、あ、うん。いいよ。>
俺はそう言ってソファーに座ると、リーサちゃんは俺の膝の上に座った。
<あとは私の頭を撫で撫でしてください。>
<仰せのままに。>
言われるがまま俺はそっとリーサちゃんの頭を撫でた。
(すげー。サラサラやん。)
非常に撫で心地の良い頭だった。
<んー。こうされるのがとっても落ち着くの。>
<へぇ。>
(それにしても、良く初対面の相手にここまでオーブンになれるな。)
その後しばらくの沈黙の後、リーサちゃんが口を開いた。
<それじゃあ、お兄ちゃんの事を教えて?>
<え?あー、俺は
<ストープっ!頭は撫でたまま。>
<あっ、はい。>
俺はリーサちゃんの頭を撫でながら自己紹介をした。
その後も俺達は互いに質問し合ったり、世間話をしたりして慣れ親しんだ。
<へぇー、お兄ちゃん人間なんだ。じゃあ別の世界に住んでるの?>
<そうだよ。こことは別の次元で、ベテルっていう所に住んでいるんだ。>
俺がベテルのことを色々と教えてあげると興味を持ってくれた。
<私も行ってみたいな。お兄ちゃんの家…>
<あはは、ここと比べるとちょっとばかり窮屈かもしれないけどね。>
アハハハ
俺達が仲良くなるのに時間はそれほどかからなかった。
そうして俺達が話に夢中になっていると、不意に部屋のドアが開かれた。
「ふぅ。お待たせ、シュウ…」
リーサちゃんを膝に乗せて頭を撫でている俺の姿。
「えーと、お帰り。」
<おねぇちゃん!>
リーサちゃんはレミアと会うや否や俺の膝から降りて、またもや弾丸のような威力でレミアに抱きついた。
レミアはそっと優しくリーサちゃんを抱きしめ、頭を撫でた。
そして何かを思い至ったかのように俺を見つめてきて。
「シュウヤ、やっぱりあなた…」
「ちっがーう!、俺は断じてロリコンじゃねぇ!…リーサちゃんから頼んできたんだ。」
「へぇ。まっ、分かってたけどね。」
知っててからかってくるとは卑劣な奴だ。
(でもまぁ、本当にレミアのことが好きなんだなリーサちゃん。こういうのを見ていると何だか仄々としてくるな。)
俺は姉妹や兄弟っていいもんだなぁ。と思いながら2人の様子を眺めていた。
すると
「あ、あれ?目が…」
突然視界がぼやけてきた。
「そっか…」
リーサちゃんとの話に夢中になるあまりすっかり忘れていたが、俺はくたくたに疲れていたのだ。ほっと落ち着いた瞬間に急激な眠気が襲ってきた。
「あー、、もう、ダ」
俺は眠気に負けて意識を手放した。
数時間経過の後俺は目を覚ました。
「あぁ、すっかり眠ってしまった。…ん?」
左の耳にささやかな空気の波動を感じた。
「ま、まさかな。」
俺は恐る恐る左側に首を傾けた。
「スー、スー、」
俺の視界の大部分がレミアの顔で埋め尽くされる。
「こんな間近で、、」
俺はすぐさま顔を背けて反対側を見た。
「え?」
俺の視界の大部分がリーサちゃんの顔で埋め尽くされる。
「何?この状況。」
俺は王族の魔物2人とサンドイッチ状態で添い寝していた。
<んー、お兄…ちゃん。>
突然リーサちゃんが寝言を発したので俺はビクッとなってしまった。
俺の夢でも見ているのだろか。
「シュウヤ。今ドキドキしてるでしょ。」
背後からレミアのささやき声が聞こえた。
俺は振り返り、レミアと目を合わせる。
「お前…。毎度毎度俺をからかいやがって。魔物にとってはこれが常識って言うんじゃあるめぇな?」
俺は少し目を鋭くして、小声でレミアに問いかけた。
「しないよ。シュウヤ以外の人にはしたことないよ?」
レミアが顔を赤くきながらそう言った。
「え?そ、それって。」
レミアの言動に動揺してしまう。
どこのラブコメだよ。とツッコミを入れたくなった。
「そろそろ私の気持ちに気付いてくれてもいいんじゃない?」
(この展開は…)
俺は思わず、固唾を飲み込んだ。
「シュウヤからかうの楽しいし、飽きないからさ。ね?我慢して?」
あっそういうことか。
身体の緊張が一斉に抜け落ちていく。
(何で残念がってるんだよ。俺は)
「そ、そっか。まぁお前は言ってもなおらないしな。」
俺は諦めて、仰向けになって眠りに着こうとする。
すると、レミアは寝返りを打って俺に背を向けた。
「好きな人をからかっちゃうのは人間の心理でしょ。気付いてよ…バカ。」
レミアがこそこそ何かを呟いていたが、あまりに小さい声だったので聞き取ることはできなかった。
(まっ、また明日でいいか。)
俺は開き直って再び眠りについた。




