敗北
俺は光刀を右手に魔物に向かって突撃した。
動くことには不慣れなようで怪物の動きは鈍い。
俺はたやすくヤツの攻撃をかわし、懐に入った。
「くらえ!」
俺は怪物の胸部めがけて光刀を振り下ろす。
しかし怪物はエネルギーシールドを作り出し、俺の攻撃を弾いた。
かなりの力を込めたのにも関わらず、バリアには傷1つついていなかった。
(かなり強力なシールドだな。あれを打ち破るのはしんどい作業だぞ。だが…)
気づいたことが1つある。今のシールド生産のエネルギーは左から2番目の頭から発せられたモノだった。
一応他の頭でも生産出来る可能性があるので
続けて何回かの連続攻撃を仕掛けてみた。
その攻撃は全て弾かれてしまったが、エネルギーシールドはやはり左から2番目の頭から発せられたもので、他の頭は何も関与していないことが分かった。
「1つの頭が1種類のエネルギーを持っていると考えて良さそうだな。」
しかし後7種類がどんな能力を持っているのか分からないので俺は怪物から距離をとった。
すると怪物の1番右の頭が口を大きく開けてそこに炎のエネルギーを溜め始めた。
「どうするかな。」
シールドを破らない限り怪物にダメージを与えることはできない。しかしむやみに近づいても炎の的になってしまう。
俺はむやみに近づきはせずに怪物から距離を置いたまま受け身の体制をとる。
その瞬間、怪物は炎の塊を俺めがけて剥ぎ出した。
それは素早い攻撃だったが、しっかりと目で追うことができた。
俺はその攻撃を難なくかわす。と思いきや、炎は移動方向を変えて俺を追いかけてきた。
(マズい。これは避けきれない。)
俺はとっさに両腕を交差させて盾とし、体を守る。
しかしそこにレミアが駆けつけ、能力を解放した。
「爆龍炎滅波」
怪物の炎は俺に命中する前にレミアの作り出した、竜の形をした炎によってかき消された。さらにレミアの攻撃には威力が残っており、怪物目がて直進した。
ズドーン
レミアの放った炎は怪物の頭に直撃し、怪物は体制を大きく崩す。
「サンキュウ。助かったぜ」
「いいの。そんなことよりもあいつを倒す方法を考えて。」
「おう。」
あくまで予測の段階だがレミアのお陰で1つの可能性を見出すことができた。
俺は再び魔物に向かって突進し、光刀を振り下ろす。
キーン
当然攻撃はバリアによって受け止められてしまう。
「くっ、うおぉ!」
俺はバリアごと怪物を切り裂くよう腕に力を込める。
今まさに俺と怪物との間でつばぜり合いが繰り広げられている。
「やはりな。」
怪物は自分のエネルギーを上手く使いこなせていない。
なぜならつばぜり合いをしている間、俺は無防備な状態だったのに怪物は残り7つの頭で攻撃を仕掛けてこなかったからだ。
怪物はおそらく能力の併用はおろか、1つの能力を使用している間は身動きすら取れないのであろう。
つまり1つの能力を使用している間は他の能力を使用することはできない。
そうと分かれば、攻略する方法はいくらでもある。
俺は魔物から距離を取り、右腕に宿る光刀をエネルギーの状態に戻し、左腕にもエネルギーを集める。
「ディフューズオブルーチェ」
俺の腕から放たれた光のエネルギーは無数の刃となって怪物を攻撃した。
怪物はとっさにバリアを作り出し、刃から身を守った。
「ほらほら、どんどん行くぞ!」
ドカン、ドドド
刃はバリアに触れた瞬間に爆発した。
光刀と同じ原理だ。
魔物は必死に堪えているが、エネルギーの爆発によって生じた爆炎が魔物の視界を奪う。
数分後、俺の攻撃を全て受け切った怪物は反撃に出ようと1番左の頭が紺色の光を灯した。
これまた強力な毒のエネルギーだ。
「ならその頭から切ったるわ!」
怪物が反撃に出ようとした時、俺は既に怪物の背後に回り込んでいた。
怪物は毒のエネルギーを放出しているため「バリアを展開することはできない。
俺は再び作り出していた光刀で怪物の1番左の頭を切り裂く。
すると頭は2つに分られ、怪物はその場に倒れた。
「ふぅ。これで終わ…らねーな。」
地面に倒れてそのまま息を引き取るかと思ったが、怪物は体から赤紫のエネルギーを放出して全身をエネルギー魂に包んだ。
そのエネルギー魂は心臓のように定期的に拍動しながら少しずつ膨張している。
「くそっ、ディフューズオブルーチェ」
俺はとりあえず攻撃を仕掛けてみる。
手応えはあった。光の刃は全てエネルギー魂に命中している。
やがてエネルギー魂はダメージの許容範囲を超えて跡形もなく弾け飛んだ。
そしてそのエネルギー魂の中から再び怪物が姿を現した。
しかし蛇のような胴体から2本の足と腕が生えており、生物的進化を遂げていた。
ギシャーー!
怪物の右から2番目の頭が光輝き、俺の目の前から姿を消した。
「くっ。」
俺はとっさに背後に向かって光刀を横向きに振る。
カキーン!
後ろを見ると怪物が鋭い爪を振りかざしており、光刀と交わっていた。
俺はその攻撃をいなして怪物の懐に飛び込んだ。すると、怪物の頭が次から次へと俺を喰らおうと襲ってくる。
その頭はデカい上に動きが速い、怪物の体幹部分に生命のコアがあると考えられるのだが、中々間合いを詰めることができない。
しかし、しばらく怪物の頭と攻防を繰り広げてあることに気付いた。
怪物は手と足の使い方に慣れようとしているのか、単に使用できなくなっただけなのかは分からないが、毒や炎、バリアなどの能力を使ってこなくなった。
それならばむしろこっちの方が戦いやすい。
「レミア!準備頼む!」
俺はレミアに合図を出し、光刀を形作るエネルギーの形状を変化させる。
「シャイニングレストレイント!」
そうして作られた紐状のエネルギーを絡ませて、怪物の両手両足を縛った。
この能力を使っている間、俺はエネルギーを振り解こうとする怪物と力比べをしていなければならないので攻撃に移ることができない。
「レミア頼む!」
「任せて。ハァアアア!」
レミアは未だ見たこともないエネルギーを放出し、それを全身に纏わせた。
髪の色は赤紫色に変色し、その眼も龍のように鋭いものになった。
「おぉ。俺のセカンドフォルムみたいだな。」
レミアは空高く飛び上がった。
「降滅天魔!」
レミアは物凄い威力で怪物に突撃した。
すると
シュビン。
魔物の中央左側の頭にある2つの目玉が光ったような感じがした。
「なんだ今の…」
何かの能力を発動したのだろうか。
先程まで俺の呪縛から逃れようと必死にもがいていたのに、レミアが攻撃を仕掛けた瞬間に全身の力を脱力させてじっと身構えていた。
「待て!レミ…
ズドーン!
レミアの攻撃は怪物に直撃した。
その攻撃があまりにも早かったために俺が攻撃を止めるように指示した時には既に手遅れだった。
「なっ!?」
レミアが怪物に接触した瞬間、怪物は口から黒い煙を吐き出した。
「レミア!今すぐそいつから離れろ!」
俺の賢明の叫びも虚しくレミアは黒い煙に飲み込まれてしまった。
その後怪物の右側中央の網が光り、レミアの放っていたオーラは怪物に吸収されていく。
俺はとっさにレミアの元へ駆け寄るが、怪物の8つの尻尾に進行を阻まれてしまう。
「くそっ、邪魔だー!!」
俺は8つの尻尾を全て受け流し、黒い煙を吐き出している頭を切り裂こうと光刀を構える。
「なに!?」
俺が斬りかかろうとしたその時、魔物は再び黒い煙を読み込んで体内に取り入れた。
グォオーー!
怪物の体からは先ほどのレミアと同じ色のオーラが放出され、再びエネルギーの球に包まれた。
「あのやろー。さらに進化する気か。…そうだレミア!」
俺は怪物から解放されたレミアの元へと向かう。だが・・・
「!?」
レミアの体は石化してしまっていてびくりとも動かなかった。
「なんでこんな…」
俺はレミアの手にそっと触れる。
冷たい。レミアの温度は生き物のそれでは無いほど冷たかった。もはや生きているのかどうかも分からない。
「ん?」
すぐそばからレミアのエネルギーを感じた。そちらの方を見ると、の正体はエネルギー球の中にいる怪物だった。
おそらく怪物はエネルギーを吸い取る能力を使ったのだ。レミアの膨大なエネルギーを取り込み、さらなる進化を遂げようとしている。
「よくも…」
俺の心の奥底から怒りが込み上げてきた。
あいつとは身近い付き合いで卒中からかわれてはいたが、苦では無かった。むしろ…それが楽しく思える時もあった。
「絶対に許さん!」
俺は箱の中のエネルギーを限界まで見に纏い、セカンドフォルムになった。
さらに左腕に闇のエネルギーを纏い、闇刀も作り出す。
と同時に怪物の方もエネルギー魂の中から姿を現した。
奴にはツノと翼が生えて、大蛇と言うよりも竜といった感じの容姿となった。
俺は最高速度で移動し、怪物の背後へと回り込み、闇刀を振り下ろして怪物の8つある尻尾の中の1つを切り落とした。
怪物は残り7つの尻尾を振り回して俺を突き飛ばそうするが、俺は2つの刀でやつの尻尾を9回切り落とした。
(おかしいこれで何度目だ。)
何度切り落としても尻尾の数が減らない。
気づくと怪物の右から3番目の頭が淡い桃色に輝いていた。
「くっ!あの頭は再生能力か。」
俺は一旦怪物から距離を置こうとするが怪物に回り込まれてしまう。
怪物はそのまま片腕で俺を剥ぎ払った。
「ぐはっ!」
叩き飛ばされた俺は岩の塊に激突し、頭から血を流した。
「はぁはぁ、やべーな。」
どんなに切り刻んでも奴は直ぐに再生してしまう。その再生にもエネルギーは使うのだろうが、レミアの分を吸収しているので余力はたっぷりとあると思われる。
「これならどうだ。ダークネスレーザー」
俺は闇刀の形態を変化させてエネルギー波として怪物に発射した。
ギシャーー!!!
怪物はエネルギーシールドを作り出し身を守守ろうとした。
「そのバリアごと闇に沈めー!」
闇の波動はバリアを飲み込み、そのまま怪物をも飲み込むかと思ったが、怪物は再生能力を使用してバリアを持続させた。
「くっ!能力の併用もできるようになったのかよ。」
怪物はダークネスレーザーさえも凌ぎ切った。今度はこっちの番だと言わんばかりに炎と毒の融合技を俺にぶつけようとしてくる。
感じ取れるエネルギー量からして先ほどの炎や毒単体での威力を遥かに凌駕している。
「ちっ」
怪物の攻撃は目にも止まらぬ速さで俺に直撃した。まぁ直撃したとは言えないのだが。
「ダークテリトリー」
怪物の放ったエネルギー弾は俺の纏う闇のオーラに飲み込まれて消え去った。
「ちくしょう。このままだと拉致があかねぇ、かけてみるか。」
俺は光刀も体内に戻して両腕を怪物に向けてありったけのエネルギーを込める。
「これが最後の一発だ。喰らえ!カオスチェックメイト!」
俺は怪物めがけて両腕からエネルギー波を放出した。
怪物は当然エネルギーシールドを展開する。
「そんなもんで防げるかぁー!!」
先程のように再生能力でバリアを持続させているが俺の攻撃はそれをもろともせずに進行する。
そうしてカオスチェックメイトは怪物を飲み込んだ。
「はぁはぁはぁ、1度の戦闘で、ここまで力を使ったのは、始めだ。」
俺はエネルギーを使いすぎて頭がくらくらとしていた。
そんな時、
ブルブルブルブル!
「!?」
同然何かが動き出す気配を感じた。
「まさか...」
俺はその気配のする方向に目をやると、怪物の頭が1つだけ地面に転がっていた。
その頭は急激に細胞分裂して、みるみるうちに再生していく。
その頭は身体の損傷を回復させる能力を持つ頭だった。
「ヤロー、攻撃を受ける瞬間に自分の頭を引きちぎりやがったのか。」
ギシャー!
怪物は頭1つ分のエネルギーしか残存していなかったために以前より小さい状態ではあったが損傷部などは完全に再生した。
そして再生した右から3番目の頭の能力によりエネルギーも回復していった。
やがて怪物の身体は少しずつ大きさを増し、全身を覆うオーラも復活した。
「くっ、ここまで来て振り出しかよ。もう戦えるだけの力は残ってねーぞおらー。」
怪物は俺の存在を再認識すると、瞬く間に距離を詰めてきた。
そしてそのまま鋭いツメで俺を切り裂く。
当然、フラフラ状態の俺ではかわすことなどできない。
ブシャー!
その空間の至るところに俺の解離血が飛び散る。
何度も何度も切り裂かれ、その度に意識が遠のいていった。
「ここ、、まで、か。」
俺は力なく地面に倒れた。
薄れゆく意識の中で俺が最後に目にしたものは石化したレミアの姿だった。
怪物はとどめだと言わんばかりに足を振り下ろし、俺を潰しにかかる。
(わりーなレミア。お前の仇を打てなくて。)
そうして俺は完全に意識を手放した。
ズシャーン




