表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に抗う者達の天地開闢物語  作者: ゼツボウ君
35/63

新たな異能力者

午前7時40分

朝食を食べ終え、学校の支度をしに部屋に戻って来た俺は時間を確認しようとケータイに電源を入れた。

すると1件のメッセージが届いていたことに気づく。

送信者はノゾムでその内容はどうしても俺に相談したいことがあるので今日は学校を休んでノゾム家に来て欲しいというものだった。

ノゾムは基本的に真面目な良い子ちゃんだ。

理由もなしに学校を休むような奴でも人にそれを頼むような奴でもない。

きっと何かやばいことに巻き込まれているに違いない。

俺はメッセージを見た瞬間に速攻で「今から行く。」と返信した。

すると5分程でノゾムから着信があり、「早く来て欲しいけど急ぐ必要はないよ。」とのことだった。

とりあえずノゾムに命の危機が迫っている、というわけではないらしい。


「先生、シュウヤです。実は今日…」

俺はまず担任の先生に今日は体調不良のために学校を休むという連絡をいれた。

すると、普段の授業態度が良いからか先生には体調不良を全く伺われなかった。

それどころか

「あなたが学校を休むなんてただ事じゃないわ!今日は病院行ってゆっくりしてなさい。」

「はい、そうします。それじゃ失礼します。」

親友のためとはいえ、流石に罪悪感を覚える。

(先生ごめん、本当は仮病なんです。)

しかしこうなればスピード勝負だ。

ノゾムの家に向かってるところを誰かに見られたら大変だからな。

俺は急いで支度して家を飛び出した。


「…それで、何でレミアがついてくるんだよ。」

「だってシュウヤのお友達でしょ?私もあってみたいもん。」

レミアはまるで授業見学に向かうお母さんのようなノリで俺についてきた。

こいつをノゾムと会わせるのは余計な心配事が増えるから出来れば今すぐ家に帰って欲しいのだが、こういう時レミアが俺の話を聞かない女だということも知っている。

(はぁ…しゃーねーな。)

「絶対楽しい事にはならないぞ、無神経なことだけは言わないようにな?」

一応注意を促しておく。

「了解!」

「よし。」

レミアが悪ふさげ無しの良い返事をしてくれたので信用することにした。


どうこうしている間に俺達はノゾムの家の前までやって来ていた。

俺はドアの前に立ってインターホンを押す、前に一旦レミアの方に振り返る。

「レミア、今から会う友人は前に1度魔物に襲われたことがあるんだ。くれぐれもレミアが魔物だってことは秘密にしておいてくれ。」

「了解、命に誓うわ。」

俺は再度ドアに振り返りインターホンを押した。

家の中から誰かが階段を降りてくる音がして玄関の扉が開いた。

「よ、ようノゾム。来たぞ?」

家の中から出てきたノゾムの表情は暗く、目は真っ赤に充血していた。

そんなノゾムの姿を一目見ただけでもことの深刻さが伝わってくる。

「ごめんな、学校あるのに呼び出したりして…それと後ろの方は?」

「問題ない。こいつは…」

「レミアです、現在シュウヤ君のご家庭にホームステイしている留学生です。今日はノゾム君に会いに行くとお聞きしたのでご無理を承知でお供させていただきました。」

レミアの考えたキャラ設定は中々良い物だった。

あの言い方なら同居していることを知られたところで面倒ごとはおこらない。


「初めまして、ノゾムです。…んー、でも女性に見せるものじゃ…」

「私は帰った方がよろしいですかね。」

「いえ、ここまで来ていただいて、そんな…ど、どうぞ。」

こうして俺達はノゾムの家の中へと招き入れられた。


「「お邪魔します。」」

ノゾム家に入ると俺達はある違和感に気がつく。

「シュウヤ、このお家の中で異能力のエネルギーが放出されたようよ。」

「みたいだな、だがここに住んでいる人達はみんな一般人のはずだが…」

異能力者が能力を使用する際多くの場合体内エネルギーを下界に放出する。

その際、放出されたエネルギーの全てを完全にコントロールすることは難しい。

知らず知らずのうちにエネルギーの一部が辺りに拡散してしまい、近くの物に付着したり空気中に浮遊していることが殆どだ。

故に室内のように密閉された空間では拡散エネルギーがその場に停滞するので異能力を使用するとすぐに分かる。

問題は誰がいつどのような能力を使ったか、ということだが話の流れから言って…

考えたくもないが、ノゾムが異能力に目覚めた、という可能性が1番有力だろう。

これはあくまでノゾム家に入った瞬間の予想でしかないので外れている可能性は十分にある。

いや、むしろ外れていて欲しい。  


「くっ…」

「ん?」

一瞬ノゾムが苦痛に悶えるような声が聞こえたような気がした。

「どうかしたか?」

「い、いやなんでもないよ。さ、上って。」

そう言ってノゾムは階段を上がっていった。

「よし行こうぜレミア。」

「え、えぇ。」


階段を登って2階へたどり着くとノゾムはリビングの前で立ち止まる。

「えーと、レミアさんはここまでにしておいた方が良いかと…」

「何故?」

ノゾムはとても悲しそうな顔で考え込んだ。

(…察し)

「なぁノゾム、レミアは多分大丈夫だと思うぞ?なんにでも態勢あっから。」

「そ、そうなの?まぁシュウヤがそう言うなら…」

そうしてノゾツはゆっくりとリビングの扉を開いた。

中に入るとノゾムの母親らしき人物が床に倒れて亡くなっていた。

ご遺体の状態は綺麗とは言えず、一瞬誰か亡くなっているのか分からなかった。

「ノゾム、これは…」

ノゾムは俯いたまましばらく黙っていたが、一呼吸おいてからゆっくりとことの真相を話し出す。

「これから俺の言うことを信じてくれるか?」

「おう。」

「ちょっと待って。」

ノゾムの話を中断させたレミアはノゾムの元へ歩み寄る。

「どうした?レミア?」

「まずは手当てが先よ。」

レミアは後方に隠していたノゾムの左腕を引っ張り出す。

そこには真っ赤な包帯が何重に巻き付けられていた。

「お前、それどうしたんだ!?」

「こ、これは…」

「友達に心配をかけたくないって気持ちは分かるけど自分の身体は大切にしなさい。」

レミアは包帯を取り外し、掌で傷口を優しく撫でた。

回復の能力を使ってくれたらしく、気づけば左腕の傷口は完全に元どおりに治っていた。

「これでよしっと。」

「い、痛くない…」

(そんなバカな…)

ノゾムは「そんなバカな。」といった表情で自分の左腕を観察していた。

「レミアさん、あなたは一体…」

「秘密よ秘密、教えられないわ。A secret makes a wowan woman」


「「…」」ポカーン


(この状況でそれは…っていうかなんで知ってんだよ。)

けど

「ありがとな、レミア」

ウィンク の後「それじゃあ話を聞かせてもらえるかしら。」

「う、うん実は今朝……」

ノゾムは今朝起床した時から現在に至るまでの経緯を事細かに話してくれた。


「そんなことが…」

「ミヤちゃんは無事なのか?」

「うん、ミヤは大丈夫問題ないよ、今は部屋で寝てる。」

「そっか。」

俺は再びご遺体を注意深く観察する。

ご遺体はまるで時が止まっているかのように手に包丁を持ったまま亡くなっていた。

「束縛性の能力みたいね、それもかなり高度な。」

「束縛性能力…」

「レミアさん、それは一体…」

ノゾムが質問しかけたその時だった。

背後からリビングの扉が開いく音が聞こえてきた。

「お、お兄ちゃん?」

振り返るとそこにはリビングの扉を半分だけ開けてこちらを覗き込むミヤちゃんの姿があった。

ノゾムの言う通り身体の所々が赤く晴れてはいるが、元気はあるようだ。


「あ、シュウヤお兄ちゃん…とそっちのお姉ちゃんは誰?」

「私は2人のお友達でレミアっていうの。」

レミアがそう返すとミヤちゃんは扉の方からこちらに向かって歩いて来た。

まずい…

まだ6歳の子供にこの状況は見せられない。

「お兄ちゃん。お母さんは?」

「「…」」

俺達が返答に困っているとまたしてもレミアが俺達のフォローをしてくれる。

「お、お母さんはさっき出かけて行ったわよ?結構遠くの場所に用事がみたいでしばらく戻れないんだって。」

お母さんの遺体を目撃する前にレミアがミヤちゃんの進行をくい止めてくれた。

「お母さん、私のこと嫌いになったのかなぁ…」

「…」

「…」

中々に話に入れない男達


「…ミヤちゃん、お人形遊び、好きかな?」

「うん!イカちゃん人形たくさん持ってるよ!」

レミアはミヤちゃんと同じ目線の高さでフレンドリーに会話していた。

自然とアレができるとは驚きである。

もはや俺なんかよりもよほどミヤちゃんとの接し方を心得ておる。

「なんかね、ノゾムお兄ちゃんはシュウヤと大事な話があるみたいなの。だから邪魔しないように部屋に戻って一緒にお人形遊びしましょうか。」

「うん分かった!じゃあお姉ちゃん行こ!」

ミヤちゃんはレミアの手を掴んでリビングを後にしようとする。

途中レミアは俺の方に振り返り、「後は頼んだわ。」と言い残して扉の向こうへ姿を消した。


「グッジョブ、レミア

。」

(なんか、あいつに助けられっぱなしだな…さて)

俺は再び今回の事件の概要に意識を向ける。

先ほどレミアは「束縛性の能力」と言っていた。

(もしレミアの言う通りなら…)

俺はご遺体に軽く触れてみる。

しかし何も起こらなかった。

「んん…」


レミアの言っていた束縛性の能力は俺も目にしたことがある。

以前NEOのメンバーの中に束縛性能力の使い手が1人いた。

そいつの能力は下界に放出したエネルギーを対象者にぶつけることでその動きを束縛するといモノ。

故に束縛された者の身体に外直接触れると触れた者のも束縛が伝播する。

しかし今回それはなかった。

それにご遺体から感じられるエネルギーは体表よりももっと…

(いや、待てよ。)

「ノゾム、お母さんの様子が変わった時のこともう少し詳しく教えてもらえるか?」

「えーと母さんの動きが止まる前のことなんだけど、俺の腕から変な光が出てきたんだ。それが母さんの体内に入っていってそれで…」

「なるほどそういうことか。」

レミア最後に かなり高度な と付け加えていた。

ノゾムはお母さんの身体の動きを束縛したんじゃない、お母さんの体内の組織や器官、血液の流れ、筋肉類の動きなどを束縛したんだ。

急激に血流が停止したために酸素不足となって死に至った。

肌が少し黒ばんでいるのも血液の束縛によって不備が滋養されず、そこに束縛性エネルギーの予備効果でも働いて皮膚が急激に腐敗したのだろう。


「なぁシュウヤ。やっぱり母さん死んでるんだよな?」

「あぁ。」

「俺が殺したってこと、だよな?」

「形上はそういうことになる。」

「あぁ、あ、うぁああ!!!」

ノゾムは目から涙を溢し、両膝を床について頭を抱えた。

おそらくノゾムは既に手遅れであること、自分の異能力が引き金であることは分かっていた。

だから警察や救急車は呼ばず真っ先に俺に連絡してきたのだ。

不思議な力を持ち、人間達を守り続けてきた俺なら異能力でなんとかしてくれるかもしれない と薄い希にかけていたんだろう。

(すまないノゾム、俺は何かを破壊することはできても誰かを蘇生させるすることはできないんだ。)

そして話しておかなければならないことはもう1つある。


俺はノゾムに少しでも落ち着いてもらおうと勝手にキッチンを借りてノゾムの好きな抹茶ミルクを用意した。

「わりー、勝手にキッチン借りたぞ。ひとまずコレ飲んで一旦落ち着こう。」

「ありがとう…」

俺がコップを手渡すとノゾムはその中の抹茶ミルクを少しだけ飲んだ。

まだまだ頭の中がぐっちゃぐっちゃな様子…

おそらく飲んだ物が抹茶ミルクだとも気付いてはいない。

俺は話を切り出すまで少し時間を置くことにした。


〜数十分後〜

「ふぅ。」

「少しは落ち着いたか?」

「うん。」

「そかそか。」

(まぁ無理だわな。)

それから俺はさらに時間を待った。


(そろそろか。)

「ノゾム、少し聞いておきたいことがあるんだが、いいか?」

「え?う、うん。」

俺はノゾムの方へ手を伸ばし、掌を天井に向ける。

「さっき話していた奴が纏っていた闇ってのは…」

俺は体内の闇エネルギーを掌に宿し、下界に放出させる。

そうして誕生した球形のダークエネルギーをノゾムは光の宿っていない真っ黒の瞳でマジマジと見つめた。

「こんな見た目のヤツじゃなかったか?」

「…似てはいるけど、少し違うかな。あの人のは、なんていうか中心は真っ黒で外側は青かったよ。」

ノゾムが見た奴の闇エネルギーは現在の俺のモノとは違っていたらしい。

「じゃあ、1年前ノゾムが見たって言う暴走した俺が纏っていた闇ならどうだ?」

「同じ、かも。」


ノゾムの証言と過去の記憶、1年前治療部隊の人達から聞いた話が次々に結びついていく。

因果関係など突き止めても何の意味も持たないが、ノゾムには話しておかなければならない。

「ノゾム、この事件お前は悪くない、俺の責任だ。」

「どうゆうこと?」

俺は今回の事件が1年前の事件が原因であることやそれが如何にして今回の事件に発展したのかということを説明した。


ことの発端は1年前魔物の攻撃がノゾムを切り裂いた時まで遡る。

あの時ノゾムは本来手の施しようがないほど大さきい且深い傷を負った。

即死とまではいかずとま数分で死に至るほどの重傷だったらしい。

では何故ノゾムは助かったのか…

それは俺の中に眠る闇の創造主が自身のエネルギーをノゾムに与えたからだ。

NEOの治療部隊の人によれば体内には生命エネルギーの生産及び放出機能を担うエネルギーの塊が存在していたそうだ。

おそらくノゾムの身体が回復していくにつれてエネルギー塊は活動を停止していったが、今日ノゾムの心が強い憎しみに囚われたことで活動を再開した。

1年前、魔物に傷つけられたノゾムを目の当たりにした時の俺と同じだ。


「けど、それなら俺は闇の力を有していたんじゃない?」

「いや、体内で発見されたエネルギー塊に闇の力は宿っていなかったらしい。あくまで束縛性能力はノゾム本来の力でエネルギー塊はそれを解放するためのきっかけに過ぎない。」

話を終えると俺はノゾムの前で深々と頭を下げる。

「今回の事件も元はといえば俺の不甲斐なさが原因だ。本当に、申し訳ございませんでした。」

「…」

ノゾムは何も言わなかった。


俺は頭を下げ続けていたが、正直この沈黙は辛かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ