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神に抗う者達の天地開闢物語  作者: ゼツボウ君
19/63

家族との再会 〜新しい生活へ〜

「おぉ来たか。お疲れ様シュウヤ君。」

僕は実践終了後、博士の待つモニタールームへとやってきた。

魔物との戦闘が終わったら話があるからと呼び出されていたのだ。

「それでお話というのは?」

「その事なんだがもうそろそろ君を自宅に帰しても良いかと思ってね。」

博士は僕はある程度自分の力をコントロールできるようになってきたし、両親が帰宅する前に家に戻った方が良いと判断したらしい。

「そうです…ね。」

「大丈夫だ。あの時の事件は全て熊の仕業という事になっている。君の両親にはそう伝えておいた。」

「…」

(村のみんな…)

博士の話を聞いて僕はまたあの時の事を、自分の暴走によって起きた忌まわしい事件の事を思い出す。

僕のせいで失われた多くの人々の命

どれだけの時間が経とうと消えることのない罪悪感を僕は一生感じながら生きていかなくてはならないのだ。

本来であれば僕のようなヤツは2度とあの村に入るべきじゃない。

多くの村人の命を奪い、村を滅茶苦茶にしておきながらどんな顔をして皆んなに会えばいいというんだ。

ただそれでも僕には部隊の人達がたててくれたというお墓の前で心の底から謝罪をしなければいけない。

自分が望んだわけでもない、こんなわけもわからない力で皆んなを殺してしまったことを謝らなくてはいけないのだ。

「分かりました。一度家に戻ります。」

「そうか、また何か魔物に関する情報が入ったら本部から連絡があると思うから。」

魔物…

そうだ、これからの僕は自分の力を魔物との戦闘のために酷使する。多くの人々を殺してしまった力だからこそこれからは人を守るために使うんだ。

それが村の人々へのせめてもの償いだ。

「今までお世話になりました。」

「また、いつでも顔を店にきておくれ。元気でな。」

僕はお世話になった博士やその助手の人達にお礼と別れの挨拶をしてその施設を後にした。

その施設は人口空間の中に浮かんでいるので博士に教えてもらったように次元に穴を開けて元の世界に戻る。

それから山道を3時間程歩いて僕は故郷の村へと帰ってきた。

「…」

僕は村の有様を見て言葉を失った。

村の中にあったはずの住居などの建物は綺麗さっぱり姿を消しており、代りに村の至る所に多数のお墓が建てられていた。

建物があっては村の中に収まらなかったのであろう。僕はそれだけの数の人間を殺したんだ。

「みんな…」

自分が殺してしまった人達のお墓を前に罪悪感がより一層強まる。改めて自分の犯した罪の重さを実感する。


僕は村に帰るなり頬を濡らしながら全てのお墓の前で手を合わせて回った。そしてその間心の中で繰り返された言葉はたった1つ

(ごめんなさい。)

僕はその数日間は家で俯いているか、お墓の前で謝罪するかの生活を送っていた。

その間ほとんど何も食べていなかったので体はやせ細っていき、顔色もどんどん悪くなっていく。

食欲は愚か何をやる気にもなれなかった。


そんな生活が続いていたある日、僕の家の入り口の扉が開く音がした。

(誰だ…2人が帰ってくるまではまだ早いはず…)

家に入ってきた人物は家の中を見て回っているようで時期に僕の部屋もノックされた。

「お邪魔しまーす…」

「ん、あれ?」

扉の向こうには以前熊に襲われていたところを助けたジャーナリストのおじさんがいた。

「シュウヤ君大丈夫…ではないね。」

「ははは…」

まぁ今の僕はやせ細った体をしていて顔に表情はなく、死んだ魚のような目をしているので一眼見れば普通でないことが分かる。

この時のおじさんから見れば、初めて会った時とはまるで別人といったところだろう。

そんな普通ではない僕を見ておじさんはスポーツバックのような大きさの入れ物を手渡してきた。

「ほら隣町で人気の食べ物を色々と持ってきたから一緒に食べよう。」

中にはこれでもかというほど大量の食べ物がぎっしりと詰められていた。そのどれもがこの村では中々目にしない料理ばかりだった。

しかし

「おじさん…ありがとう。でも僕は、、」

食欲が無いと言いかけた瞬間にお腹が大きな音をたてる。

「お兄さんな! ってそれはともかく早くこれを食べなさい。ずっと何も食べてなかったんだろ?ホレホレ」

おじさんは手に取った食べ物を無理矢理手渡そうとしてくる。

僕はほとんど入っていない力でそれを阻止しようとした。

「ほぅ…」

頑なに食事をしようとしない僕を見ておじさんは雰囲気を変えて食べ物を包んでいた袋を破く。

そしてそれを僕の口に力ずくで押し込んできた。

「ぶふ、むぐ、むぐぐ!」

「さぁ、食え!噛んで飲み込め!」

僕はそれを吐き出すこともできず、口一杯に含んだ食べ物を何回か咀嚼した後にゆっくりとそれを嚥下した。

それは未知の味をした未知の食べ物だったが、とても上品な味付けだった。

「…けど殺す気ですか。」

「いやー、すまない。あのまま何も食べなかったら今日中に死ぬと思ったんね。」

「でも、まぁとても美味しかったです。」

おじ、お兄さんは「そうかそうか。」と喜んで次々に料理を手渡して来た。僕はそれを1つ残さず綺麗に完食した。

結果的にどの料理も非常に美味しかった。

「…あれ?」

俺は食事を終えるとなんだか眠たくなってしまい、お兄さんが居るというのにテーブルの上で眠りについてしまった。

「おやすみ。」


〜13時間後〜

次に僕が目を覚ました時には既に日が変わっていてあたりは明るくなっていた。

「…ってあれ?」

気がつくと僕は自室のベッドの上で寝かされていた。

(おじさんが運んでくれたのか…そういえばおじさんは?)

家中探してもお兄さんの姿はどこにもなく、代わりにテーブルの上に手紙が置いてあった。


“シュウヤ君へ 突然居なくなったりしてごめんなさい。俺は仕事の関係で急遽隣町に戻らなければいけなくなりました。おそらくまたどこか遠くの街に派遣されるのでしょう。もう会いに行けないかもしれないので手紙を残す事にしました。シュウヤ君、君にはまだこれから先長い人生があります。君の村で本当は何が起きたのか、昨日の君の様子を見て何となく理解しました。俺がこんな事を言うべきでは無いとは思うのですが、子供は社会の事は考えずに元気に好きな事をして遊んでいるものです。過去を忘れろとは言いませんが過去に囚われないでください。これからの自分の人生を楽しんで欲しい。これが君に命を救われた男の願いです。”


「ありがとう、おじさん…」

僕が手紙を読み終えるとちょうどそこに玄関の扉が開く音がして誰かが家の中に入ってくるのを感じた。

その足音は次第に大きくなり僕の部屋の前までやって来て勢いよく扉が開かれた。

「「シュウヤ!」」

お母さんとお父さんだ。

予定よりもかなり早い。きっと村の事(偽装)を聞いて急いで帰ってきたのであろう。

二人は僕を見つけると涙をこぼしながら強く抱きしめた。

「シュウヤ〜。」

「ごめん、ごめんな…」

二人とも本当に僕の事を心配してくれていた。僕が無事であったことが嬉しくて泣いているのだろう。

「お父さん、お母さん…」

今まで以上に2人の愛を感じられて気づけば僕も2人に抱きしめられながら泣いていた。


それから何日かして僕たち家族は遠くの街に引っ越すことを決意した。

とてもではないがこのまま村の中で生活をしていくのは難しい。この際両親がよく派遣される街に住もうと言う話になった。

僕は村を出る前に最後にもう一度それぞれのお墓の前で手を合わせる。

(とても僕の言うべきセリフではありませんが、安らかにお眠りください。)

その後僕たちは村を出て隣町にて普段利用しているお肉屋さんや散髪屋さんなどお世話になった方々に挨拶をした。

しかしあのジャーナリストのお兄さんだけはどこを探しても見当たらなかった。

「ではそろそろ出発しようか。」

「そうね。」

「う、うん。」

できる事なら最後にあのお世話になった時言いそびれたお礼をきちんと言っておきたかった。


こうして僕達家族は今住んでいる街に引っ越してきた。

「ここが新しいお家よ。」

「おぉぅ。」

都会の中に建てられた新しい家は木材では無くコンクリートで作られており、前の家よりかは頑丈そうだった。そして何よりもデカイ。

「明日からは学校も始まるからね。新しい生活に慣れていきましょう。」

(学校か。同じ年代の子供が集まって勉強をする場所だっけ?僕の力の事がバレないように気をつきなきゃ。)

当時の僕には勉強よりもこっちの方が大切なことだった…今もそうだけど。

ぶっちゃけ言うと勉強なんてしたくもない。昼間の間だけは趣味に没頭したい。

まぉ僕がこんなことを思っているなんてお母さんにバレたら殺されてしまうので心の内に止めておくとしよう。

「村からだいぶ離れた都会だから難しいかも知れないけど、いつかまたあのおじさんに会ってきちんとお礼を言いたいな。」

「そうね。私もお会いしてみたいわ。」

そんな話をしながら新しい家に入ろうとしたその時、お母さんハッと何かを思いついたような声を出して足を止めた。

「あ、こうだ。お隣さんにご挨拶しなくちゃ。」

「え?」

(それも社会の常識なのだろうか…)

そう言ってお母さんは僕の手を引いて隣の家のインターホンを鳴らした。

「はーい。」

どうやら在宅中だったようですぐに中の人からの音声がインターホンを通して聞こえてきた。

「あの、今日からお隣に引っ越してきた者です。」

「あ、これはどうも少しお待ちください。」

少しして家の入り口の扉が開かれ、中にいた人物が姿を現した。

「「あっ」」

僕が今1番会いたい人物の顔がそこにはあった。

何故か理由は分からなかったが、おじさんの方もこの街に引っ越していたようだ。

そしてその場所がなんと僕た達の引っ越してきた家のすぐ隣だった。

偶然とは不思議なものである。

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