事件
〜数日後〜
今日は待ちに待った祭の日。
まだまだ上手くいかないことだらけだけど徐々に家事というモノに慣れていった。
「うん、これは中々美味しい。」
今はお昼の13時、この日僕は自家製のコーンスープを作り、フランスパンと一緒に昼ごはんとして食べていた。
(うん、これは2人にも飲んでほしい味だな。)
以前作ったミネストローネよりも簡単に作れたし、味もそこそこ良かったので満足のいく昼食だった。
(さて、余りはまた冷蔵庫にしまってっと。)
僕はスープ系の物は1回でどっさり作って数日に分けて食べるようにしている。
こうすれば後々作らなければいけないおかずが1品減るからね。
「はて、やるぞー!」
こうして僕は食器洗いに洗濯、リビングの掃除などを次から次へとこなしていった。
するとある時不意に我が家の呼び出しベルが鳴った。
(こんな時間に珍しいな…誰だろう?)
「はーい!」
僕は玄関まで行ってドアを開いた。
「こ、こんにちわ。」
「ど、どうも。」
そこにいたのはご近所のおばさん達だった。
覚えているかな?以前僕の姿を見て何やらコソコソと話していた人達のことだ。
「こんにちわ!どうかされましたか?」
(敬語かぁ、社会の常識って書いてあったから勉強してみたけど、やっぱり違和感あるなぁ〜)
僕がそれなりの態度で対人しているとおばさん達は何やら申し訳なさそうな顔をして俯いていた。
「えーと…」
何がなんだかよく分からないがこっちが悪い事をしているような感じになってしまう。
すると
「「ごめんなさい!」」
突然2人同時に頭を下げて謝罪してきた。うち1人は涙目にすらなっている。
「え?ぼ、僕謝られるようなことされましたっけ?」
「お話を聞きました。お1人で生計を立てて、家事等も1人でこなしていると。」
「私は影でシュウヤ君の悪口を言ってました。」
「あっ」
(そんなことか…)
裏でとんでもない事をされているのではないかと無駄に心配してしまったが、大したことのない理由すぎてなんだか拍子抜けした。
「いや、いんですよ。自分の趣味や行動が周りの方々と少し違っていることは自覚してますから。」
そのおばさん2人はフランクフルトのおじさんから僕の話を聞いて日頃僕に対する陰口を言っていた事を悔いて僕のところに謝罪しに来たらしい。
「それにお2人の陰口を僕は全然気にしてませんよ。」
事実この2人は陰口と言えるほど酷いことは言っていない。
この前少し聞こえてきた話ではむしろごもっともな事をしていたと思ったし、なんならもっと酷い事を言っている人間を僕は知っている。
しかし僕がそう言うとお2人は手に持っていたカゴをこちらに見せてきた。
「コレ、お詫びと言ったらなんだけど今日収穫したフルーツを持ってきたの。」
「本当にごめんなさい、私からもどうぞ。」
そう言って2人はカゴに盛り付けられたフルーツを手渡してくれた。
「これはいや、すみません。ありがとうございます。」
カゴを受取るとなんとも美味しそうなフルーツ達の香りが漂ってきた。
「早速食後のデザートとしていただきます。」
「さすがにもうお昼は済ませたわよね。今日のお昼は何作ったの?」
「今日はコーンスープとフレンチトーストを。」
「まぉ美味しそう。」
この他にも僕達は最近大変なことや今度おばさんたちのお子さんと遊んで欲しいということ、一緒にパーティーをしようという話題の話をした。
「あら、もうこんな時間。ごめんなさいね長々と。」
「いえ、こちらこそ立ち話をさせてしまい申し訳ありません。」
「良かったら今度またゆっくりお話しましょう。」
おばさん達は最後にもう一度頭を下げてそれぞれの実家に戻って行った。
(山ん中駆けずり回るのも楽しいけど、こうして近所の人と仲良く会話するのもいいなぁ。)
お2人に手を振りながらそう思った。
こうして僕は今日ご近所のおばさん達とも仲良くなれたのであった。
〜30分後〜
僕はテレビアニメを見ながら先程いただいたフルーツを試食していた。
(美味しいなぁ、このぶどう。)
祭の開催まであと1時間、今見ている30分アニメが終了したら準備を始めるとしよう。
(アニメの中)
俺の護るもんは今も昔も何1つ変わっちゃいねぇぇぇ!!
「おぉう!やっぱり主人公はカッコいいな!」
(別のアニメのネタ引っ張ってくるところとかも面白いよなぁ。)
僕はテレビアニメが全般的に好きで、いわゆるアニオタ予備軍のような子供なのだ。
スケベ大王のもとに魔法使いの女の子が降ってくるアニメや化け物に遭遇しやすいリンゴヘッド君のアニメ、生徒会役員の人達のアニメなど、好きなアニメについて語り始めたらキリがない。
「いやー、やっぱりアニメは素晴らしいね。」
僕がぶどうを食べてアニメ鑑賞しながら色々なアニメのことを考えていると シルバーソウル はあっという間に終わりを迎えた。
「さて、準備するか。」
アニメ終了後、僕は祭に出かける準備を整える。
〜30分間後〜
「うぉ〜これはすごい。」
左を向く 人間だらけ
右を向く 人間だらけ
祭は始まったばかりだというのに、村の中には沢山の人間で溢れかえっていた。
僕は真っ先にフランクフルトを購入するためにおじさんが経営している屋台へと向かった。
さすがにあれほど美味しい物が人気でないはずもなく、既に15人ほどの人々が行列をなしていた。
僕は列の最後尾に並び、順番が来るのを気長に待つ。
と言っても人の進み具合は意外とスムーズで予想より早く順番が回ってきた。
「おじさん。フランクフルトを1本ください。」
「おー、シュウヤ君いらっしゃい!フランクフルト1本ね…100円になります。」
「どうぞ。」
僕は財布の中から千円札を取り出し、おじさんに手渡した。
「どうも。900円の…」
「いえ、お釣りは大丈夫です。」
僕がそういうと、おじさんは何故?といった表情をして見つめてきたので「この前のお礼です。」と説明を入れる。
お礼の気持ちがお金というのはどうかとも思ったが、下手な物をプレゼントするよりかは良かろうと思ったのだ。
僕の気持ちが伝わったのかおじさんは笑顔で「ありがとう。」と言って受け取ってくれた。
「ごめんね、今新しいの焼いてるからそのまま少し待っててね。」
「はい。」
おじさんはまるでサウナのようにあったまった空間で1人黙々と作業を続けていた。
中々減ることのないお客さんのために細長い鉄板の上で次々とフランクフルトを焼いていく。
「結構大変そうですね。」
「まぁね、でも今のシュウヤ君ほどじゃないよ。」
そう言っておじさんは他の物より少し大きなフランクフルトを紙袋に詰めて僕に手渡した。
「まいど!いつもありごとね。」
「いえ、こちらこそ。」
こうしてフランクフルトを入手した僕はその後焼きそばと飲み物を買って誰もいない静かな場所へとやってきた。
人混みは苦手なのでこれらの料理を美味しくいただくためには人気のない場所に移動する必要があるのだ。
家に帰ってからいただいてもよかったのだが、家の周りの人混みがすごかったのであそこを突破するのは正直だるい。
僕はすっかり暗くなって誰もやってこない山の入り口付近に腰掛けた。
「ここなら誰も来ないだろ。さぁて」
料理を入れた袋を開けるとなんとも美味しそうな香りがした。
「うーん、いい匂い。いただきまーす!」
まずはフランクフルトを一口頬張る。
「美味しい!やっぱりおじさんの作るフランクフルトは絶品だな。明日また食べられるように帰りにまた寄って行こう。」
僕は黙々と祭で手に入れた料理を口に運んでいった。
数十分後僕は夕食を食べ終え、ゴミを持って会場に戻ろうとした。
すると突然僕の目の前に黒いマントを羽織った何者かが現れた。
「やっと見つけた。」
変声期でも使っているのだろうか、とても普通ではないおかしな声をしている。そのせいでヤツが男なのか女なのかも分からない。
「誰?ていうか何か用?」
その人物は僕の問いかけに答えることはなく、何も言わずに近づいてきて懐から何かの鍵のような物を取り出した。
「あのー…」
(なんかめっちゃ怪しい人だな。逃げようかな。)
僕はとっさにマントの人物から逃げようと村に向かって走り出した。
「なっ!?」
しかし相手の動きが早すぎてすぐに追いつかれてしまう。
山登りに慣れていて足が速いと評判の僕にあっさり追いつくのだから、かなり身のこなしの軽い人間だったのであろう。
「くそっ。なんでついてくるんだ、お前は何者だ!」
その人物は僕が威嚇するように質問しても黙秘を続けた。そして先程取り出した鍵のような物を僕に突き刺そうしてくる。
「うわ!」
僕は必死にそれをかわし続ける。
(いいよね、ここまで来たらもう合法だよね。)
僕は「これは正当防衛だ!」と言わんばかりにその人物の腹を殴りつけた。
「ぐは…」
「よし、行けるぞ。」
僕の一撃でマントの人物は怯んだように見えたので保幕は追撃しようと拳を振りかぶって突撃する。
しかしそいつは僕の攻撃を軽くいなし鍵のようなモノを僕の腹部に差し込んできた。
「ウガッ!」
まるで包丁で刺されているかのような痛みが生じた。
そしてその痛みとは別に何か違和感のある感覚が生じてくる。
(なんだ!何かが僕の中から漏れ出てくる。体が言うことを聞かない)
身体中からは黄色い煙のような物が溢れてきて、皮膚に近い血管が浮き出るほど身体に力が入る。
(なんだ!これは…)
力が込み上がるほどに意識が遠のく、もう目も開けていられない。
「グアァァァァ!!」
次の瞬間僕は完全に意識を手放した。
一体どのくらいの時間が経ったのかは分からないが、ある時ポタッという水の落ちるような音が耳に入ってきて僕はふと目を覚ました。
「ん、んうぅ、ここは…」
まだ意識がはっきりしないが、どうやら村の中で倒れているようだ。
(僕は…どうしたんだ。)
今は祭の最中で僕が倒れているのは間違いなく村の中のはずなのに誰の気配も感じなかった。まるで村の中にいるのが僕1人だけであるかのような、そんな感覚だ。
「よっ。」
少しして意識もはっきりしてきたので僕はゆっくり身体を起き上がらせて辺りを窺う。
するとそこにはどんでもない光景が広がっていた。
「!!!!!!」
僕は自分の目を疑った。
目の前に広がるのは赤一色、住宅やテント、広間などそこら中に人間の血液が散在していた。
「な、なんだコレ…」
その異様な光景に心を取り乱し、怯えるように後退りして数歩さがった。
「っ!?」
すると何かが僕の足にぶつかった。
僕は恐る恐る後ろを振り返ってみるとそこには人間の物であろう肉の塊が転がっていた。
しかもそれは1つや2つではなかった。
「うっ!なんでこんな…」
俺はその場から急いで立ち去り誰か生き残っている人は居ないか村中を探し回った。
「なんで、なんでなんでなんで僕が眠っている間に何があったって言うんだ。」
僕は決死の思いで生存者を探し回る。
すると村の中央にある岩のベンチに見覚えのある2人組が腰掛けているのを発見した。
「あの服装、やっぱり昼間のおばさん達だ。おーい!」
僕は微かな希望を胸に2人に駆け寄る。
しかし2人が僕の声に反応しなかったことにもっと早く気づくべきだった。
僕は2人の元へ辿り付き様子を伺ってみる。
「はっ!!」
そこには頭と呼ぶべき体の部位が存在していなかった。そして2人の胴体の近くには球形の形をした塊が2つ。
僕はそれが何であるか確認することなく、その場から走り去った。
「誰か!誰か〜!」
僕がそう叫んで走っていると、近くから微かな人の気配と物音がした。
「誰かいるんですか!?」
そちらの方に走って行くと、あのフランクフルト屋さんのテントが荒れる。
「おじさん!」
テントは崩されていて中の様子も酷い有様だったがおじさんはかろうじて生きているようだ。
「ん、んんんぐっ」
僕は無我夢中でおじさんに覆いかぶさってる食器棚や鉄板などをどけて行き、おじさんをテントの中から救出した。
「お、おじさん。しっかりして!おじさん!」
「シュ、シュウヤ…君?」
まだかろうじて意識は残っているようだ。
「僕だよ。ちょっと待ってて!すぐに手当てするから!」
俺はおじさんを背負って急いで家に戻る。
僕の家は壊されてはおらず、綺麗なままだった。きっと村の中央から少し離れた位置に建てられていたことが功を通したのであろう。
僕は家に入るとおじさんをベッドに寝かせ、止血剤や包帯などで応急処置を済ませた。
「おじさん。僕が作ったコーンスープだよ、飲んで。」
そう言っておじさんの口元にスプーンを近づけるとおじさんは微かに笑ってそれを飲んでくれた。
30分程かけてお皿によそったスープは全部飲んでくれた。
「シュウヤ君…」
スープを飲み終え、少し落ち着いたのかおじさんが力のない声で話しかけてきた。
「君は…何も覚えて無いのか?」
「え?何のこと?」
それからおじさんはあの時何が起きたのかを全て話してくれた。
あの時おじさんはフランクフルトを全て売り切り、鉄板など道具の後片付けをしていたと言う。
しかしある時突然遠くの方から悲鳴が聞こえてきたらしい。しかもそれは1度や2度ではなかった。
何かあったのかと様子を見に行ってみると村の至るところが血の海になっており、祭に参加していたであろう人達も見るも無残な姿になっていた。
村中の人間が肉塊になって倒れていく中に1人、体中から黄色いオーラを放って手に同じ色の刀を持った少年が居たと言う。
「ま、まさか…それって。」
「あー、髪や瞳の色は変色していたが、あれは間違いなくシュウヤ君だった。」
「そ、そんな…」
事件の犯人は僕だった。正気を失っているような目をしていて人間を殺す度に悪魔のような笑みを浮かべていたのだという。
おじさんは急いでその場から立ち去り自分のテントの中に隠れた。
しかし僕はおじさんの存在に気付き、おじさん目掛けて刀を降った。するとその刀からエネルギーの波動が飛んできてテントが崩壊したらしい。
おじさんはエネルギー波に直撃する事はなかったが、崩れたテントや調理道具の下敷きになってしまい、そこで意識を失ってしまったのだと言う。
「じゃ、じゃあ皆んな僕が!?」
「あー、今言った事は全て本当だ。ゲホッゲホッゲホッ」
「だ、大丈夫!?」
おじさんの怪我は僕が考えている以上に深刻なモノだった。
止血剤をかけたというのにおじさんに巻いた包帯は真っ赤に染まっている。
「シュウヤ君。今回の事件、犯人は君じゃない。君の中に居る別の何かだ。」
「僕の中に居る別の何か…?」
「そうだ。だ、から今日の、事は、、忘れ、なさい。」
おじさんの声がどんどん弱々しくなっていき、身体から力も抜けていく。
「スープ、美味しかったよ。ありがとうね。ごち、、そうさ、ま。」
そう言い残しておじさんは目を瞑って息を引き取った。
「おじさん?おじさん!……うぉー!!!!」
俺はベッドで眠るおじさんの横で何時間も泣き続け、知らない内に気が動転してしまい気を失った。
〜1時間後〜
「ここか。例の子供の家は。」
「はい、報告によると唯一の生存者とのことです。」
僕が気を失っている間に数人の大人達が僕の家に侵入してきた。
「よし今は眠っているようだ。連れて行け。」
「リーダー、この方や村の人々は…?」
「さっき別部隊の応援を呼んだ。埋葬はそいつらに任せよう。」
「「はっ!」」敬礼




