〈幕間 勝利の先に……〉
この世界は、五つの大陸に分かれている。
東に位置し、竜人族が治める〈蒼の大陸〉
西に位置する、我ら獣人族が治める〈翠の大陸〉
南に位置する、人族が治める〈朱の大陸〉
そして、北に位置する鬼人が治める〈黒の大陸〉
最後に、東西南北の大陸の中央に位置し、神海と呼ばれる巨大湖の上空に浮かんでいる大陸、〈白の大陸〉を治める翼人族だ。
五つの大陸には、それぞれ聖獣が一柱ずつ棲み守護している。
聖獣は王を定め、啓示し、選ばれた王は聖獣の恩恵、加護をもって統治し、その大陸に棲む全ての盾にならなけれざならない。それが、主な役割であった。
つまり、彼らが一番に求められているのは、王都での内政力ではなかったのだ。
故に、この世界で王と名乗る者は、比較的行動が自由だった。
そんな中で、今五大陸の全ての王が頭を悩ませている件が、黒の大陸の問題だ。
直接対処しているのが、黒の大陸と国境を接している、蒼の大陸と翠の大陸だった。
竜王と獣王は国境に赴き、宮廷魔術師と共に結界の保持と、警護の任に当たっている。
ーー黒の大陸の住人、鬼人を自分たちが住む、この大陸に入れないためだ。
彼らは今や、呪われた流民であった。
〈穢れ〉を一歩たりとも入れないために、彼らは結界を張っているのだ。
遠く離れたその場所からも、天に昇る翠の光りの柱が見えた。
その瞬間、疲労困憊だった騎士や兵士、魔術師たちは、その光りを見て歓喜に沸いた。当然、獣王もロイも同じだった。
翠の柱が意味すること、それは、今まで眠っていた聖獣様が目を覚ましたことに他ならない。
それは同時にーー聖獣ビャッコ様の力により、今以上に翠の大陸が活性化することを意味していた。
「陛下!!!! ロイ殿下!!!! 今すぐ、国境までお戻り下さい!!」
軍馬が嘶く声と共に、感動を打ち消す兵士の声が、獣王とロイを現実に戻した。
獣王とロイは慌てて手綱を握ると、国境まで軍馬を走らせた。
そこで見たものは、薄い緑色の壁だった。微かに色が付いているかと分かる程の薄さだ。
それは、黒の大陸と翠の大陸の国境線に沿っていた。
「……これは?」
軍馬から飛び降り駆け寄ったロイは、緑の壁に恐る恐るだが手を伸ばす。後ろから咎める声がしたが、構わず、ロイはそっとだが触れてみた。
「温かい……」
「ビャッコ様の加護だ」
聖獣ビャッコの加護を受けている獣王は、緑の壁の正体を瞬時に理解する。
現に、鬼人がその壁に近付いただけで、衝撃で弾き飛ばされていた。
「もう、ここは大丈夫だ。我々は護りきったぞ!!!!」
獣王の勝利宣言に、そこにいる全員が「おーーーーーー!!!!!!」と、拳を天に掲げ雄叫びを上げた。
それからの行動は早かった。
獣王、ロイ、第一部隊が先頭に立って、宴の準備に取り掛かる。宴といっても、馬鹿騒ぎをするだけだが。
火を取り囲み、騒いでいる彼らは気付かない。第一部隊の数人と獣王、ロイがその場に居ないことに。
彼らは、少し離れたテントの中にいた。
「……これからが大変だな」
獣王が心痛の面持ちで呟く。
「蒼の大陸ですか?」
第一部隊の一人が尋ねる。
「それは大丈夫だろう。ここにいる鬼人が、蒼の大陸の国境沿いに向かうことは、まず不可能だ」
第一部隊の問いにロイが答える。
距離もだが、その道中、確実に魔物に襲われるだろう。それに、食料自体まずもたない。
国境沿いにいる鬼人たちが、国境を越えられないにも関わらず、その場に残っているのは、魔物に襲われるのを回避するためでもあったことを、獣王たちは知っていた。
「黒の大陸の夏は短く、秋はほとんどない」
ロイがヒントを出す。
「魔物の増加とゲンブ様の置かれている状況ですね……」
部隊団長であるギースが答える。
「そうだ。とりあえず、夏が終わるまでに魔物の減少。そして、ゲンブ様の御身の確認しなければ……」
そう言うと、獣王は机に向かい手紙を書き始めた。ものの五分程で書き終えると、それをギースに渡す。
「至急、それをミカと宰相に届けろ! 俺とロイは今しばらく、この場に残らねーといけないからな」
やるべきことは山ほど残っている。
「畏まりました」
ギースは獣王から手紙を受け取ると、副団長であるライザに渡した。
「同行者を至急二人選び、今から早馬で王都に向かえ!!」
「はっ!!」
テントを退出しようとするライザに向かって、ロイは声を掛けた。
「すまない、ライザ。無理をさせる」と。
ロイの労いの言葉に、一瞬、ライザは驚くが、表情を変えることなくその場を後にした。
お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ
第四章に続く話になっております。
時間列なら、前話と逆になりますが、物語上、あえてこの順序で更新しましたm(__)m
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




