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〈幕間 何度も直せと言ったのに……〉

 大変、お待たせしましたm(__)m


 暗い話になっています。

 ご注意を。



 第一部隊の中で一番若手の青年は、上司や先輩、同僚たちから、何度も同じ注意を受けていた。



「お前は考えなしに突っ走り過ぎる」と。



 そして、注意をした者たちはこうも思っていた。



 ーーいつかそれが、自分自身を苦しめることにならなければよいが、と。








「どうして、俺も前線に連れてってくれないんですか!!!!」



 上司に、それも獣王直属の騎士に対しての言葉使いとしては、確実に落第点の言葉使いで、青年は上司である副団長に詰め寄る。



 第一部隊の主な役割は、獣王の補佐であり、その警護だった。その強さは、セシリアが率いる隠密部隊と引けをとらないと言われ、翠の大陸外にも轟(トドロ)かせているほどだ。



 副団長に詰め寄っているのは、その部隊に所属し、三年働いてい(・)た(・)青年騎士だった。



「何故、連れて行かなくてはならない」



 副団長から放たれる声は、地を這うように低く、怒りを抑えているが、かなりの不機嫌さが滲み出ていた。



 当然だ。

 ミカ殿下と宰相に報告をし、今から、陛下とロイ殿下が待つ前線へと帰らなければならない。宮殿内だから、仕方なく早歩きで移動していたのだ。そうでなければ、走って移動していただろう。

 気が急いているのに、呼び止められたのだ。嘗ての部下でなかったら、立ち止まることもなかった。



「俺も、第一部隊の一員です。全員が前線に行っているのに、何故俺だけが待機ですか!?」



 副団長は、一瞬何を言っているのか理解出来なかった。



 まさか、まだ第一部隊に所属していると思っているのか!? ましてや、何故、お前はここにいる?



「第一部隊だと? お前がか」

「謹慎中なのは分かってます。ですが、皆が働いているのに、俺だけここにいるのは納得出来ません!!」



 謹慎? 何を言っている。



 眉間に深い皺を寄せた副団長を見て、勘違いした青年は、尚も食い下がった。



 こいつは何も分かっていない。

 自分が何を仕出かしたのかをーー。



 そう認識した瞬間、副団長の行動は早かった。抜刀こそしなかったが、鞘に収めたまま青年の腹に強烈な一撃を加えた。倒れ込む背中に、続けざまに一撃を加える。

 直談判していた青年の体は、地面に勢いよく叩き付けられた。



 青年は声を出せない。だが、意識は辛うじてあるようだ。苦し気な声が聞こえる。



 騒ぎを聞き付けた王宮騎士と、副団長に置いて行かれた第一部隊の二人が駆け付ける。

 第一部隊の二人は、瞬時に何が起こったのか理解した。

 王宮騎士に、倒れている青年を捕らえるよう、指示する。しかし、王宮騎士は戸惑う。



「何を突っ立っている。狼藉者を捕らえるのが、お前たちの役目ではないか」



 底冷えするような声だった。その声に震えながらも、王宮騎士は声を出す。



「……しかし、ライザ副団長、この者は第一部隊に所属しているのでは」



 その台詞に、連絡が行き届いていないことをライザは知る。そうでなければ、この場に嘗ての部下が、姿を現すことはなかったはずだ。

 とするなら、その責任と咎は自分にもあるなと、ライザは思い、深い溜め息をついた。



「……何を勘違いしている。その男はもう、第一部隊でもなければ、騎士でもないぞ。当に、その職を解かれ追放となった身だ。これ以上居座ると言うのなら、直ちにその身柄を拘束する、よいーー」

「それは甘くはありませんか? ライザ」



 ライザの声に被せるように、若い女性の声が割り込んできた。

 王宮内で、ライザ副団長を呼び捨てに出来る女性は一人しかいない。



「ミカ殿下!!」



 慌てて、騎士たちはミカに頭を垂れる。

 


 ライザは身に沁みて知っていた。ミカがこのような話し方をする時の心理状況をーー。



「その者は、恐れ多くも、ビャッコ様の聖域内で、護りて様とスザク様に手を上げた者だと聞くが、違いないか。ライザ」

「間違いありません」



「手を上げた際、ビャッコ様の巫女長様に取り押さえられたと聞くが、違いないか。ライザ」

「その通りです」



「つまり、護りて様とスザク様に手を上げたことを、ビャッコ様はご存知だと認識して、間違いないか。ライザ」

「間違いありません」



 感情を押し殺した声で続く、ミカの問い掛けに、ライザは頭をさげたまま答え続けるしかない。

 まさに、針のむしろに身を晒されている状態だった。だがそれは、受けなければならない罰であり、部下を甘やかせてしまった自分の責でもあった。



「その時、父上は獣王として、護りて様とスザク様に膝を付き、頭を垂れ謝罪したと聞く。間違いないか、ライザ」



 ミカの台詞に、駆け付けた王宮騎士は言葉を失う。



「はい。陛下は膝を付き、頭を垂れ謝罪なさいました。間違いありません。そうしなければ、この王都はビャッコ様の加護を失うことになりましょう」



 今の黒の大陸のようにーー。

 そして、



「森の民と同じ様にな。あの族長は、自分こそが護りてに相応しいと思い込み、護りて様を殺害しようと企てた。その瞬間、ビャッコ様の加護を失い、緑の民は魔物に襲われ、一人を除き死に絶えた。

 唯一生き残った者は、今はS級犯罪奴隷に落とされ、どこぞの穴ぐらにいると聞くが、間違いないか」



 告げられた事実に、王宮騎士は恐怖で体を強張らせる。



「はい。一生、そこから出ることは出来ないでしょう」



 ミカとライザの台詞で、唯一生き残ったとされる者が何処に送り込まれたのか、王宮騎士と地に這いつくばっている男は知った。



 何処の大陸にも属さない孤島に存在する、犯罪奴隷が送り込まれる鉱山。

 罪の深さによって、それぞれ違う階層で仕事をさせられる。一度入ったら、五体満足で出られないと噂されている場所だった。

 S級犯罪奴隷ならば、言うまでもなく、最下位層に放り込まれるだろう。



「護りて様やスザク様が許して下さらなければ、森の民の二の舞になっていたのは我々だったでしょう。

 それだけの罪を犯しながら、騎士だと名乗るのか。

 己の無知を恥じることなく、王都を危機に陥れ、まだここに居座る気か。

 本来ならば、一族もろとも、奴隷に落とされても仕方ないところを、慈悲により、騎士の剥奪、王都の永久追放で済ませたものを、それを仇で返そうとはーー。

 この件は、父上に報告する。よいな、ライザ」



 それがどういう意味をさすか、ライザも第一部隊の二人も十分理解していた。



「はい。申し訳ありませんでした」



 ライザは潔く自分の非を認める。



 深々と頭を下げたライザと部下の二人を、ミカは一瞥すると、王宮騎士に視線を移す。

 ミカが口を開くより早く、王宮騎士たちは青年を無理矢理立たすと、そのまま地下牢へと連行した。





 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 新たなミカの一面をお楽しみ頂けましたか?

 今回は、追放された騎士を通して、森の民の生き残りレオンのその後をお届けしました。

 

 次回は、前線(黒の大陸、国境沿い)にいる獣王とロイのお話の予定です。


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

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